第17条 |
事前に身元開示に同意しているクライアントについては、「他の」クライアントの身元開示禁止条項は、それらのクライアントが事前に身元開示に同意しているときは適用されない。(例:数社が共同のスポンサーとなっている「業界」調査)。
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第18条 |
二次契約者を利用することで、その業者に個人データが開示されることとなる場合、リサーチャーは二次契約者が第4条の注釈に要約されたデータ保護に関する要求事項を完全に遵守するよう確認しなくてはならない。
利用する二次契約者は事前にわかっているのが普通だが、通知に猶予がない状態で、二次契約者を使ったり、変更する必要が生じることもある。そのような場合、クライアントへの連絡のせいでプロジェクトが遅れるよりも、二次契約者の利用や変更の決定後にできるだけ早くクライアントにその旨を連絡するほうが通常賢明であり、受け入れられる。
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第20条 |
この規程は、調査プロジェクトの目的に必要である限り、リサーチャーが実際に利用する、または利用予定の二次契約者と、外注される部分に関するクライアントからの調査ブリーフについて話し合うことを妨げるものではない。このような場合、リサーチャーは当然、二次契約者が綱領の諸規程を完全に遵守することを確認する責任がある。
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第21条 |
以下の場合、ベルン条約により調査企画書、調査設計、調査票はそれを最初に設計したリサーチャーの所有物とする:
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マテリアルがオリジナルの創作物であることを示すことができる場合 |
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考案者(リサーチャー)が適切な方法で(書面で)著作権を明示的に主張し、著作権について必要な証拠を要求されたとき、それを提示できる場合 |
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当事者間での同意書によって、著作権が他の当事者(例:クライアント)に譲渡されていない場合
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実際に所有権がどの程度保護されるかは、マテリアルの性質や各国における法律の解釈の相違である程度決まってしまう。しかし、盗作が実際に法律違反であるかどうかはともかく、盗作行為そのものが非倫理的であることに疑いはなく、深刻な例は明らかに職業道徳に背くと考えられるであろう。
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第22条 |
リサーチャーが調査記録を保管すべき期間は、データの性質(個人に関するものかそうでないか)、プロジェクトの性質(アドホック、パネル、リピート)、およびフォローアップ調査や追加分析の依頼の可能性等によって変わってくる。
同意された保管期間中は、リサーチャーは情報が偶発的に消失しないよう、物理的あるいは電子的に保存されているかどうかにかかわらず、適切な予防措置を講じるべきである。
リサーチャーは、特定の調査の目的に必要とされる期間よりも長い間、個人データを保管してはならない。個人データの保管については、リサーチャーは関連のデータ保護法およびこの注釈で詳述されているICC/ESOMAR国際綱領の要求事項、特に第4条を確実に遵守しなければならない。
個人に関するものでないデータの場合、主な実査記録(完了票のオリジナルやそれに準ずる基本的な記録)より、調査結果のデータ(集計、ディスク、テープ等)の方を通常より長い期間保管する。記録が保管されているフォーマットそのものは、元々収集されたすべての情報の「復元」を可能にすべきであるという基本的な要求事項よりも通常重要ではない(それとは異なった同意が事前になされていない限り、また情報の復元によって行われる記録の個人化には限界があることを除けば)。保管期間はクライアントに開示し、クライアントからその旨同意を得なければならない。
異なった同意がない場合、アドホック調査の場合、正規の保管期間は実査の原記録については実査完了後1年間とし、調査データについては、追加分析の可能性を考慮し、少なくとも2年間とする。
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第24条 |
要請により、クライアント、あるいは相互に受け入れたクライアントの代理人がこの目的のために、限定された数のインタビューを観察することもできる。その場合、リサーチャーはまず当該調査対象者の同意を得なければならない。また、オブザーバーはこの注釈で詳述されているICC/ESOMAR国際綱領の要求事項、特に第4条を遵守することに事前に同意しなくてはならない。オブザーバーがこれをまだ済ませていない場合は、必ずリサーチャーは書面による同意を入手しなければならない。
リサーチャーは、クライアントがインタビューの観察を要請することによって生じる遅延や実査費用の増加を補償される権利をもつ。技法的に比較が不可能なため、観察されたインタビューの結果を全体の調査分析から除外する必要が生じる可能性があることを、リサーチャーはクライアントに知らせなくてはならない。
マルチクライアントの調査の場合、リサーチャーはオブザーバーがどのクライアントにも所属しない独立した存在であることを要求することができる。
実査の品質についての独立したチェックを別の調査会社が実施する場合、その調査会社はこの注釈で詳述されているICC/ESOMAR国際綱領の要求事項を遵守しなくてはならない。この件に関する同意がまだなされていない場合、当該調査会社から同意書を入手しなければならない。第三者である業者がリサーチャーではなくクライアントから指示を受けている場合も、リサーチャーはクライアントが第三者である業者と同様の契約を交わしていることを確認しなければならない。特に、元々の調査対象者の匿名性は完全に保たれなくてはならず、対象者の名前と住所はバックチェック(インスペクション、バリデーション)を目的にする場合にのみ使用し、クライアントには開示しない。クライアントがデータ作成業務の品質チェックを希望する場合にも、同様の配慮をする。
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第25条 |
クライアントは委託したマーケティング・リサーチ・プロジェクトについて、以下の情報を入手する権利がある。
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(1) |
バックグラウンド |
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調査が誰のために実施されたか |
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調査の目的 |
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業務の一部を委託した外部の業者やコンサルタントの名前 |
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主要な再委託業務
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(2) |
サンプル |
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目標とした/実際にカバーした母集団の詳細 |
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サンプルサイズ、性質、地理的な分布(予定/実際);サンプルの一部のみからデータが収集された場合はその範囲 |
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使用したサンプリング方法とウェイト付け方法の詳細 |
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技術的に関係がある場合は、回答率と無回答によって起こる可能性があるバイアスの検討
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(3) |
データ収集 |
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情報収集方法の詳細 |
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実査スタッフ、ブリーフィング、実査の品質管理方法の詳細 |
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調査対象者リクルート方法と、実査時に対象者獲得のために提供した謝礼の内容 |
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「デスクリサーチ」の場合、情報源とその信頼性に関する明確な記述
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(4) |
結果のプレゼンテーション |
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関連の事実に基づく結果 |
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パーセンテージのベース(ウェイト付きとウェイトなし) |
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主な結果に生じる統計上のエラーマージンや、主な数値間の統計的有意差レベルの一般的指標 |
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調査票および使用された関連書類とマテリアル(シンジケート・プロジェクトの場合、レポートされた件に関する部分)
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プロジェクトのレポートは通常上記のポイントをカバーするものとし、情報を含む付属の文書を参考書類として提供する。
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第27条 |
調査結果が公表された場合、それがどのように解釈あるいは適用されるかを、リサーチャーが完全に管理することは明らかに不可能である。しかし、リサーチャーは調査結果の解釈の誤解や誤用を避け、(それが実行可能であれば)解釈の誤解や誤用が実際に起こった場合、それを修正するための最大限の努力をしなくてはならない。
調査の技術的な局面や限界が完全に理解されていなかったり、調査結果が公にプレゼンテーション、説明、ディスカッション(例:メディア等)されるときに、配慮すべき点について明確にされないことがあるため、調査結果の公表によって誤解が生じることもある。これは、望ましくない理由からではなく、どちらかというと偶発的に起こったり、メディアにおける時間とスペース等のプレッシャーの結果として起こる場合が多い。
調査結果をどのような形で公表するかをクライアントと事前に相談したことを確認することによって(調査プロジェクトの契約書等で)、リサーチャーは解釈に誤解が生じる危険を抑えることができる。調査結果が公開されたときに、調査や調査結果の解釈について大きな誤解があり、それが調査結果を話し合う上で誤解を招くことが明らかな場合は、リサーチャーは利用できる適切な方法によってそのような誤解を解くための努力をしなくてはならない。
クライアントがリサーチャーと調査結果をどのように公表するか、事前に相談や同意をしなかった場合、リサーチャーは以下の権利を行使できる:
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(i) |
公表される調査結果に名前を載せることを拒否する |
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(ii) |
プロジェクトの適切な技術的詳細を公表する(第25条の注釈にも記載されているように)
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第29条 |
リサーチャーは調査企画書の中でICC/ESOMAR国際綱領の要求事項に従っている旨を明記し、クライアントがICC/ESOMAR国際綱領を保有していない場合は、そのコピーを提供することを勧める。 |