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主張“質”の低下は許されない

公明新聞:2009年2月16日

偏在解消へ地域ごとの上限も議論を

医師臨床研修見直し

 少子高齢化が急速に進むわが国にあって、国民の将来不安を取り除くには、医師不足問題の解決が欠かせない。着実に取り組みを進めていきたい。

 現在、政府は、医師の地域偏在などを引き起こしたと指摘される臨床研修制度の見直しを進めている。現行制度の課題としては、大学病院で臨床研修を受ける医師が減り、大学病院の医師派遣機能が低下したことや、研修医の都市部集中、病院の指導体制に格差があること、などが挙げられる。

 厚生労働省の説明によると、見直しの方向性は、キャリアプランに応じた研修など「プログラムの弾力化」や「受け入れ病院の募集定員や基準の見直し」、大学病院の医師派遣機能の再構築など「関連する制度の見直し」からなる。

 必修科目を減らすことなどが柱のプログラムの弾力化に関して、研修期間を短くして現場に携わる医師を増やすことに力点を置いてとらえる向きもあるが、拙速な議論は慎みたい。

 確かに、手厚いサポート態勢の下、研修医が医療の最前線で活躍する事例はある。特に、体力も必要とされる救急医療の現場では、若い力にニーズ(需要)があることも理解できる。ただし、医師の質は十分に担保される必要はある。また、全国どこでも、先輩医師らの手厚い支援が可能だとも考えにくく、何より、命を扱う医療の場合、万が一事故が起きれば「研修だから」との言い訳は通用しない。議論に際しては、このことを忘れてはならない。

 また、研修の定員について、都道府県別の上限設定が検討されていることは注目に値する。個々の研修医の進路希望は尊重されるべきものだが、一方で、医師の地域偏在も深刻であり、放ってはおけない。特に、1県に1医大が整備されていることから、国立大の卒業生には、一定の地域貢献を求める意見が少なからずある。地域医療の危機が叫ばれて久しく、こうした状況を改善するには、定員の上限設定は検討の価値がある。

 一方で、医師不足対策で求められるのは、臨床研修の見直しだけではない。医師の養成には時間がかかるので、当面の不足をどうするかも重要だ。

 さらに、不足しているのは主に病院勤務医であり、医師が増えても勤務医が増えなければ対策としては不十分だ。夜勤明けの32時間連続勤務など過酷な病院勤務医の待遇改善は急がなければならない。このほかにも、いまや若手の3人に1人を占める女性医師の復職支援も必要になる。

安心の医療は国の責任

 医師確保策に関して、政府の来年度予算案では、前年比69%増の272億円が計上されている。具体的には、勤務医の負担緩和や訴訟リスクの軽減などが図られることになる。

 医師不足は、一個人、一地域だけで解決できる問題ではない。医療には公共財の側面もあり、安心の医療は、やはり国の責任で整える必要がある。

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