朝日はピーク時には年間2000億円近い広告収入を誇っていた。ところが、「毎年100億円ぐらいずつの広告収入がドカン、ドカンと減っていった」(秋山耿太郎社長の年頭あいさつ)。今3月期9月中間決算では、わずか半年間で80億円を超える下げ幅を記録し、設立以来初めてという最終赤字を計上。通期では「200億円に手が届く大幅減収」(秋山社長)が予想されている。
こうした中、加速させているのが印刷・配送のアウトソーシング化。すでに06年6月から広島県西部地域向けの印刷を地方紙大手の中国新聞社に委ねていたが、07年4月からは茨城県向けを日経に委託。おととし10月の日経・読売との3社提携締結を契機に、昨年4月には読売とともに北海道東部地域向けの印刷・配送を十勝毎日新聞社に委託した。
そして10年4月からは新たに鹿児島県全域と宮崎県南部地域向け約5万4000部の印刷を南日本新聞社に委託。さらに12年には、四国4県向けをすべて読売・坂出工場に委託するという思い切った改革策に打って出る。
ただ若者の新聞離れなどもあって販売・広告収入の減少傾向には一段と拍車がかかりそうな情勢。それに、これら一連の外部委託化によるコスト削減だけではたして追いついていけるのか、社内関係者の間ですら懐疑的な見方が少なくない。秋山社長は年頭に2010年5000人、12年4500人へと思いきった人員圧縮を表明しているものの、一部では「高コスト構造の最大の元凶とされている給与削減にも切り込むべき」との声もくすぶる。
その点で注目されているのが、慢性的な赤字体質からの脱却を促す目的で昨年4月に分社化された出版子会社、朝日新聞出版で持ち上がった組合問題。およそ150人の社員のうち100人が待遇改善を求めて、新労組「朝日新聞出版労組」を立ち上げたもので、分社化以降に採用された社員と、分社化前から在籍する本体からの出向組との賃金格差解消を経営側に働きかけている。
しかし、経営側からすれば分社化以降に採用された社員の待遇改善よりも、出向組の労働条件を切り下げる形で格差を解消したいというのが本音。新労組結成をむしろ逆手にとって、それに踏み切れるか。「朝日の今後を占う試金石になる」(業界筋)というわけだが、結末やいかに――。
(週刊東洋経済)
週刊東洋経済 - 情報量と分析力で定評のある総合経済誌
(週刊・月曜発売)
- 丸井今井の経営破綻、北海道老舗百貨店再建へ伊勢丹の支援策が焦点 -09/02/13
- 沈むトヨタ自動車、販売減と円高で今期赤字幅拡大、来期も赤字脱却は至難 -09/02/13
- 伊勢丹発「百貨店SPA」、他人任せではもう売れない -09/02/12
- 日経新聞が2期連続大幅減益、部数増でも赤字転落の危機 -09/02/12
- 携帯電話春商戦を制するのはどこだ? 販売激減でも競争過熱 -09/02/10
- 「かんぽの宿」売却で混沌、日本郵政の躓き -09/02/16
- シリコンバレーの外国籍エンジニア受難、失業・国外退去の圧力、日系企業には人材確保のチャンス?! -09/02/16
- 派遣切りが浮き彫りにした労働者使い捨ての企業論理《特集・雇用壊滅》 -09/02/16
- 解体されるシティ、国有化の次を襲う米銀行危機“第2章” -09/02/16
- 救急医療の崩壊は医療費抑制が原因、基本法制定で再生を――島崎修次・日本救急医療財団理事長 -09/02/14
記事検索
マーケット情報
投資家の新バイブル
最新業績予想、銘柄の値動き、四季報先取り情報など、投資家必見の情報満載!
推奨銘柄がヒット連発
株式投資専門誌『株式ウイークリー』は、
毎週厳選した銘柄情報をお届けします。