危機が刻々と深まる中で、原則論の域を出ずに終わった先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)だった。
共同声明の文言はどれも正しい。「政策を総動員し、各国が協調して経済成長と雇用の増加、金融の強化を目指す」「保護主義政策を採用したり新しい貿易障壁を築いたりしない」。しかし問題は実際の行動である。
昨年11月にG7を含む主要国がワシントンで開いた金融サミットでは、「反保護主義」で結束したはずだったが、約束はあっという間に破られた。今回まとまった米国の景気刺激策に、公共事業で米国製品を使用するよう義務付けた「バイアメリカン」条項が盛り込まれたのはその一例だ。保護主義がこれ以上広がらないよう、G7は世界に範を示さねばならない。
何より重要なのは、保護主義を勢いづかせない土壌そのものを早く作ることである。雇用情勢が悪化し、先行きへの不安が高まるときに増殖する保護主義だ。
では何をするのか。G7各国がこれまで異例の対策を打ってきたのは間違いない。今回の共同声明で、財政出動を前倒しし、迅速に実施するとの意思が表明されたことも評価できる。
しかし、最も困難な課題が残ったままだ。危機の元になった米欧金融機関の不良資産問題である。ここが解決しない限り、何十兆円という景気刺激策も決定打にはならない。G7参加者は認識しているはずだが、具体的な施策となると難問が横たわる。どの金融機関を救済するのか。救済先への国家の関与をどこまで強めるのか。公的資金はあといくら必要か--。
米国に加え欧州でも経営不安を抱えた大手金融機関をどう処理するのかが差し迫った問題だ。巨額の公的資金追加投入や国有化となれば、世論の猛反発は必至である。とはいえ、問題に正面から取り組まなければ、株価急落など市場からの手痛い仕打ちを受けるだろう。
昨年秋、米政府が公的資金による金融機関への資本注入に踏み切った際、欧州勢の先行が結果的に米国へのよい圧力となった。根本からの金融安定化と危機克服に向け、G7各国が再びよい意味で刺激し合い成果を競う事態が生まれてほしいと願う。
一方G7では、日本は果たして大丈夫かと思わせる場面があった。会議終了後に白川方明日銀総裁と行った記者会見で、中川昭一財務相が不明瞭(ふめいりょう)な返答をしたり、長く沈黙するなど、危機下のG7後に開かれた会見とは思えない、緊張感を欠いた様子が報じられた。
経済・金融危機への国内対応で陣頭指揮に立ち、G7のような国際会議では、世界第2の経済大国代表として貢献しなければいけない日本の財務相の姿とは言い難いものだった。
毎日新聞 2009年2月16日 東京朝刊