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内田麻理香さん
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大学院時代、「極限計測」の研究に携わった。ものすごく薄い溶液、その中にごくわずかにある物質の量を調べる、といった分野である。
結婚して母親になったら、別の“極限状態”に出くわした。家事と育児だ。本書あとがきにもあるように「これがとにかく大変で」。気晴らしに我が子自慢の「親バカホームページ」を作ってみたが、飽きたらない。そこで内田麻理香(うちだまりか)さん、専門の化学を中心とした自然科学の知識を生かして、家庭内で出あう様々な出来事を解説し考えるサイト「家庭科学総合研究所」(略称=カソウケン)を発足させた。やがて、コンタクトを取った糸井重里氏のサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」にも連載をするように。
本書はこの「カソウケン」の成果をまとめたものである。
シミ抜きの方法や、肉の鮮度と色合いの関係、ケーキや魚が焼ける時のおいしい香りの元となる「メイラード反応」、議論の多い「マイナスイオン」など、扱う話題は幅広い。冷蔵庫を「試薬庫」と言い換えるなどの理系ギャグも満載だ。特に、思い切りの良いくだけた言い換えは評判が高い。体内で他の物質と活発に反応する不安定な「活性酸素」の仲間を、「ワタシの本来あるべき姿はこんなじゃないの〜」と「ジタバタ」「イライラ」している分子だと表現するあたりは、イメージがわいて楽しい。
「底が浅い、なんて怒られもしますが、親しみを持たれる表現でないと、こうした本はそもそもの意味がないですよね」
中学生のころ、アニメの「ガンダム」にはまった。「宇宙コロニーが作りたくて」理系に進んだ内田さん、ひと味違った「日常」に軸足を置く科学ライターとして、早くも次回作が進行中だという。