岡山、広島、香川三県の二〇〇九年度当初予算案がまとまった。一般会計は三県とも八年連続のマイナス編成で、「緊縮型」の厳しい財政運営を強いられている。
岡山県の一般会計は六千六百十八億円で〇八年度当初比3・2%減。四年連続で七千億円を下回った。広島県は九千三百七十九億円で同0・5%減、香川県は四千百九十億円で同2・1%減となった。
未曾有の経済危機による景気後退の波は県財政にも如実に影を落としている。歳入の柱である県税収入は、法人関係税が大きく落ち込む影響で岡山県は〇八年度当初比15・0%減、広島県は同13・0%減、香川県は同16・6%減と見込んだ。
財政危機からの脱却を目指す岡山県にとっては、昨夏の財政危機宣言を受けて新たに策定した行財政構造改革大綱に基づく初年度の編成となった。
石井正弘知事は「改革元年」と位置づけ、税収減を国の地方財政対策で補いながら、職員の給与カットなど歳出削減を断行して対応した。それでもなお財源不足は八十六億円に上り、特定目的基金や企業会計からの借り入れという“禁じ手”を断ち切ることはできなかった。景気動向や国からの財源に左右される脆弱(ぜいじゃく)な財政基盤に変わりはなく、“綱渡り”状況が解消されるのはまだ先になりそうだ。
歳出では地域の景況が急速に悪化しているのに対応して、各県とも緊急の経済・雇用対策に重点配分しているのが特色だ。きめ細かな支援策で景気を下支えするとともに、雇用創出にも迅速に対応する必要があろう。
岡山県の場合、投資的経費は17・8%の大幅減となり、平成に入って初めて一千億円を割り込んだ。教育や子育て関連の「人づくり」や、防災や医療関連の「安全・安心」、「産業育成」といった生活に身近な分野に選択と集中を図ったという。
ただ、財政再建と景気対策の両立という難題を突きつけられたこともあり、ややインパクトに欠けるきらいは否定できない。当面の景気、雇用対策を優先させるのはやむを得ないが、縮こまっていては展望は開けないだろう。
交通の拠点性や地域資源を生かしながら、危機をチャンスととらえる攻めの施策が求められる。停滞感を打ち破り、将来展望を開く戦略が見えてこないのは残念だ。予算審議を通して知事は何を優先し、地域の将来像をどう描こうとしているのか丁寧に説明すべきではないか。
入札経緯の不透明さなどから混乱していた日本郵政の宿泊保養施設「かんぽの宿」などの売却問題が白紙に戻った。
入札で「かんぽの宿」など七十九施設の一括売却先に決まったオリックス不動産(東京)に対し、日本郵政が契約の白紙撤回を申し入れ、了解を得たという。日本郵政は十六日に正式発表する。
当初、鳩山邦夫総務相が入札のあり方を疑問視した際、日本郵政の西川善文社長は「公明正大な手続きに乗っ取っている」と自信たっぷりだった。それがどうして入札を白紙に戻すことになったのか。正式発表の場では、西川社長は自らの責任問題も含め国民に納得がいく説明をきちんとしてもらいたい。
この問題で主として問われているのは、入札手続きの公正さと売却価格の妥当性だ。
売却先の選定は、雇用の維持や事業継続などを条件に競争入札で行われた。参加した企業のうち最終選考には二社が残った。ところが、この段階で売却対象になっていた一カ所のスポーツ施設を外し、条件を変更していたことが分かった。
この結果、残った二社のうち一社が入札を辞退した。入札の条件を途中で変えるなら、あらためて一から入札業者を募ってやり直すのが筋である。
売却価格については、七十九施設をオリックス不動産に約百九億円で一括売却することになっていた。しかし、土地や建物の総取得額は約二千四百億円と巨額で、売却価格の妥当性が疑問視されている。
日本郵政は社内に第三者的な検討委員会を設け、入札や売却価格のあり方などを協議する方針だ。これまでの経緯の検証と情報公開を徹底する必要がある。それができなければ、国民の理解は得られまい。
(2009年2月15日掲載)