【萬物相】投票権を得た海外在住者たち
米国時間の5日、ロサンゼルスの飲食店に「万歳」の声が響いた。ソウルの国会で海外在住者に投票権を与える法案が通過したためだ。韓国系住民のための新聞報道によると、飲食店に集まった韓国系約100人は「大韓民国の国民として正式に認められた」と言いながら杯を交わした。米国在住者らは参政権回復委員会を設立し、運動を展開してきた。民主韓人会総連合会のキム・スンリ総会長は「同胞社会の分裂が心配だが、わたしたちが手にすべき権利よりも弊害が大きいということはないだろう」と語った。
憲法裁判所は1999年3月、「選挙期間やコストを考えると不可能で、公正さの確保も難しい」として、海外在住者の投票に反対した。その憲法裁判所が2006年6月には見解を変えた。「インターネットや通信技術の発達で、どこでも候補者の情報を知ることができる」「数百億ウォン(数十億円)程度のコストは負担可能」「公正さに対する懸念から投票への道を閉ざしてはならない」という理由を挙げた。中央選挙管理委員会は「経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国中、海外在住者の参政権を認めていない国はスロバキアだけ」としている。
にもかかわらず、「代表なくして課税なし」という考え方の反論は後を絶たない。裏を返せば「納税なくして代表なし」になる。海外在住者の大多数は税金を支払っておらず、国防の義務もない。税金をきちんと支払い、国を守る国内の韓国人と同じ権利を与えるのは公平さを欠くということだ。必要に応じて韓国籍と外国籍を使い分ける二重国籍者に至っては、憎らしささえ感じる。この問題について、憲法裁判所は「参政権は義務履行に対する反対給付ではない」としている。
海外在住者の投票は、4月8日の京畿道教育監(教育長に相当)選挙時から可能だ。帰国し、住所地を京畿道内に届け出れば投票できる。まだ在外公館の準備が整っていないため、現地投票はできない。では、海外在住者のうち、実際に何人が投票するのだろうか。選管が昨年行った世論調査では、計240万人のうち134万人が「投票の意志あり」と答えたという。第15代大統領選挙の時は39万票、第16代大統領選挙では57万票の差で勝負が決まった。
法案は通過したが、補うべき部分も多い。外国での違法な選挙運動を防げないのは大きな問題だ。出身地域・支持政党による海外在住者社会の分裂も懸念される。投票期間中、船で働いている船員約1万人の船上投票も技術的に困難だ。準備不足で問題が起きれば、海外在住者に投票権を与えた意味が損なわれる可能性もある。
崔秉黙(チェ・ビョンムク)論説委員
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