コウフ狂想曲
■偏愛・理系■ ヴァンフォーレ甲府を中心に諸々を綴るブログ
 
岐路に立つ甲府
第23節 6/29(日) 甲府 0-4 湘南 小瀬:7,267人 雨 21.3℃ 85%
湘(6)阿部(32)田村(83)(85)リンコンx2

降り続く雨の中、試合開始前には少しだけ陽が差し込んで虹が掛かった小瀬。
しかし、それも束の間でした。
再び暗雲に覆われると落ち始めた雨は弱まらず、かえって強まったような。
そして、山形戦で連敗を止めた流れを活かし、この一戦に再起を懸けて臨んで欲しかった試合は惨敗という結果に。
チームの現状と空模様は重なり、気が滅入る夜になりました。

甲府ゴール裏

試合は立ち上がりから積極的な動きが見えず。
凡ミスから1点目を失うと2失点目は相手をまったくフリーにしてしまい、ミドルシュートが甲府ゴールのネットを揺らしました。
2点を先制して主導権を奪った湘南が守備を固めてくるのは至って当然。
それによってクローズになってしまったのか、それとも自らの選択だったのかは分かりませんが、狭いエリアでのボール回しからの攻撃は形にならず、ちぐはぐさだけが目立ちました。

後半になってからも、攻守ともに歯車が噛み合わない甲府。
日程的には甲府よりも不利だった湘南ですが、ここぞという時の選手の動きは体力的にも精神的にも甲府より遥かに切れがありました。
後半の2失点は自然の流れであり、甲府の反撃は期待薄。
それにしても、この試合は見所のないものに終始してしました。

アウエーゴール裏

クローズが顕著になればなるほど、停滞する攻撃。
昨シーズンみっちり体に仕込んできたものだけに、選手がやり易いプレイスタイルだとは思いますが、どうもそれが逃げ道のようになっている気がします。
クローズという戦術の幻想。
甲府が低迷している原因のひとつは、そんなところにある気がします。

2007年、J1・2年目の甲府に特殊とも言える戦術が生まれました。
技術、走力、肉体的強さなど個人能力で劣るチームがJ1で戦い抜く術はあるか。言い換えれば、バレー離脱後のビンボーな地方小クラブのJ1残留大作戦。
能力を要する長い距離や一対一での対人勝負を避け、短い距離(狭いエリア)のパスワークで数的有利な状況を作って攻める戦術。

大木武前監督の元に連動を磨いてきた素地があり、徹底した練習で練り上げることが可能なクラブチームの甲府だからこそ生まれた“クローズ”という戦術。
その考え方が季刊誌のサッカー批評(issue35・2007/7)に載っています。
読まれた方もいると思いますが、“甲府スタイルの設計図”と副題が付いたその記事をちょっと長いけど一部引用します。
・・・・・・
アキレス腱とふくらはぎの区別がつかないほど筋肉が発達した身長185cm超のアフリカ系黒人選手を見るとき、大木はいつも、
「走ったら勝てるかな。勝てないよ」
と思う。2005ワールドユース予選A組の日本対オランダを観たかと訊くと、大木は「観ていたよ。左サイドのやつ、めっちゃ速かったじゃん。ぶっちぎられてた」と、あらためてクインシー・オウス・アベイの快速に呆れた。いまは甲府に所属する増嶋竜也率いるU-20日本代表DF陣は、褐色の弾丸に引きずられ、まったく応対できていなかった。
「どういうサッカーをすればいいか、オレのなかでは答えが出てるんだけどね。10m、20mだったらそんなに負けないよ」
だったら、その10m20mで勝負すればいい?と訊ねると大木は同意した。
「そうそう。1対1でかなわなかったら1対1じゃなくて2対1にすればいい」
大木はパン!と手のひらを叩きながら、身長180cm台の大型選手にぶっつかられて吹っ飛ぶくらいなら、当てなければいい、と答えた。
「よく協会の話にコンタクトプレーが弱いって必ず出てくるけど、じゃあ当てなきゃいいじゃない。そういう発想にならないのかな。オレなんかそういう発想だけどな。もちろんドリブルもダメなわけじゃない。当たるぐらいだったら、じゃあパスで逃げろよと。逃げろっていうとみんなアレかな、あまり馴染まないかな。でもオレはそう思うよ。逃げてもう一回受けろよ。そうすると簡単に答えが出てきちゃうような気がするんだけどな」
大木は破顔一笑してこう付け加えた。
「オメー単純だな、って言われるかな」
昨年、降格候補最右翼と謳われた甲府をJ1に残留させ、さらにそのサッカーが持つ娯楽性で大いに注目を浴びた大木が「単純」であるはずはないのだが、しかし根が単純なのだとしても、小難しくひねりすぎて正解から目を逸らすよりは、シンプルに考えて正解を見つめられたほうがよいだろう。
「長い距離を走れなければスモールスペースでやればいいわけだ。背がそんなに大きいわけじゃないから、ロングボールを蹴られたらやられる。(ならば)前から(プレスに)行けばいいだろう。……簡単だと思うんだけどな(笑)。オレだけか、そんな単純なやつは」
・・・・・・
これは日本スタイルの道標ということで、Jリーグから始まる「日本化」をテーマにしたインタビュー。
世界のなかで日本はどう戦うかということでしょうが、この考えが甲府の“クローズ”の元にあるようです。

個人的にはこうした戦術に興味がありました。
同時に財政的背景からクラブとして挑戦することには意義があると思えました。
そして、J1に引き上げた大木さんだからこそ個人的に容認出来た“実験”でした。
しかし、実験は失敗。
思えば矛盾を含んでいました。

密集のなかで手数を多く必要とするプレイは判断力と精度といったそれなりの能力を求められ、遅攻になるためにいつも“クローズのその先”が課題になりました。
弱者が強者に挑むためのものが、弱者ではこなしきれない難しい戦術。
ならば“クローズ”から“オープン”と言っても、そもそも“オープン”の局面では数的に不利かイーブンな状況。
そこで有利に戦えるなら、ハナからこんなややこしいことをしなくてもいい訳です。
だからこそ大木さんは“オープン”なんぞ頭になかった(恐らく)。

そして、一番の問題は歪曲化された評価。
J1残留とこの戦術とは時間的にズレがあるのに、成功と失敗がない交ぜになってしまい、いつしか甲府のあるべきスタイルのように語られるようになってしまったこと。
安間監督や選手に拘りがあるとすれば、そういうところじゃないのかなと。
挑戦は意義があった(と思いたい)が戦術としては失敗だったと認識しない限り、チームを向上させる劇的な変化は起きないんじゃないのかな、と思えます。
何が戻るべき甲府のスタイルかは、いまさら言うまでもなく。

見え隠れする“クローズのその先”。
ただ、ここまでやって出来ないのであれば、もういいんじゃないかな。
解けぬ難題をいくら追いかけていても埒が明きません。
不明確な“継続”という大義名分のもと、マイナスからのスタートはJリーグ1年生監督には荷が重過ぎました。

ここまで来たからには、腹と腰をしっかり据えて付け焼刃ではない対策が必要。
フォーメーションを含む戦術的な拘りを一度捨てて、最初からすべてやり直す。
再構築していくには時間もかかるでしょう。
それでも、このままズルズルいくよりかは未来があるように思えます。

順位表
コメント
この記事へのコメント
辛かったようで・・・
ハイライトしか見ていませんが、雰囲気だけは伝わってきました。
まだ昇格を諦めた訳ではありませんが、これでは前途が見えてきません。

どうモチベーションを上げるか、これも監督の手腕である。
ホームでサポに見放されるような戦いだけはしてはならない。

頑張れ、ヴァンフォーレ甲府!
2008/07/03(木) 21:21:34 | URL | TKラプソディ [ 編集]
毎シーズン大変
>TKさん

甲府、元気がありません。
まったく歯車が狂ってしまいました。
昨シーズンは降格の憂き目に会ってしまったけど、存続危機以降は右肩上がり。
今はその勢いがなくなり、厳しい状況です。

こんな時は基本に戻るのがいいのかなと思います。
決して力がない訳じゃないんで。
100%力を出し切る方法を見つけて実践することが大切だと思います。
そうして自信を取り戻して行けば、状況は好転するんじゃないかなぁ。

ブラジルからの2選手はTMで助っ人の片鱗を見せたようです。
未知数とは言え、やっぱり期待しちゃいますね。
上手く機能するようにして欲しい。
そして、すべてにいい影響を与えてくれると有難いです。

まあ、こんな状況ですからコツコツやるしかありません。
面白いじゃないですか、どうやってこの苦境を打破するのかを見ていくのも。
望むところではないけれど、甲府らしいって言えば甲府らしい。
毎シーズン、テーマが大きいというか極端で大変だあ。
2008/07/03(木) 23:38:08 | URL | VFカプリッチオ [ 編集]
明日はニッパツへ
>100%力を出し切る方法を見つけて実践することが大切だと思います。
そうして自信を取り戻して行けば、状況は好転するんじゃないかなぁ。

その通りですね。現状それを観たくて通ってるといっても言い過ぎでは無いです。
明日は仕事を途中で放棄してのアウェイ参戦、100%力を出し切る姿を期待します。
2008/07/08(火) 23:56:43 | URL | 信玄魂 [ 編集]
応援お願いします!
>信玄魂さん

今日は残念ながら現地に行けず…。
近場ですし、横浜FCのJr.ユースに子供が通っている友人とも会う約束をしてたんですが…。
お互い仕事で都合が合わず、やっぱり平日は厳しいですね。

何とか勝利を!
連勝で小瀬に戻って来ることが出来れば、今季初めての「勢い」が生まれるかも。
僕の魂を預けますので、応援よろしくお願いします。
2008/07/09(水) 12:39:05 | URL | VFカプリッチオ [ 編集]
勝てませんでした
魂預かったのに・・・
どちらかというと押されぎみでしたがあちらの決定的な場面も桜井のセーブでしのぎなんとなく終了を迎えた試合でした。
しかし横浜FCと対戦する時は不思議と負ける感じもしないのが不思議です。

明日は久々にワクワクする試合ですね
是非現状を打開する「勢い」の原動力となる戦力でありますように!
2008/07/12(土) 18:59:41 | URL | 信玄魂 [ 編集]
お疲れ様でした
>信玄魂さん

桜井が好セーブ連発でしたね。
負けても仕方ない内容でしたが、引き分けになってラッキーでした。
応援の声はよく聞こえていましたよ。

さてさて、明日はいよいよサーレスとマラニョンのお披露目です。
どんな布陣を敷いてくるか注目ですね。
前線を活かせる中盤の選手起用が鍵を握りそうです。
今日の甲府はめちゃくちゃ暑かったけど、そんな暑さを吹っ飛ばすような爽快なゲームになって欲しい!!
2008/07/12(土) 19:40:57 | URL | VFカプリッチオ [ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2008/12/07(日) 23:56:37 | | [ 編集]
あけおめ!
新年明けましておめでとうございます!

最終更新からはや半年が過ぎてしまいました。
お仕事が第一だとは承知しておりますが、去年の総括を済ませて、
新春から再スタートでお願い申し上げます。
2009/01/01(木) 10:10:38 | URL | TKラプソディ [ 編集]
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