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win-win > 第1回 井上 英明 さん
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個人消費は伸び悩んでいない
- 佐々木
井上さんのところは、法人のお客さんはほとんどいないじゃないですか。昔の花屋さんだと企業にどんどん納品して行ってという考え方だったんでしょうけど。 井上さんの考えは、そういったものではなくて、ひとりひとりのお客さまを大切にしよう。何かびっくりするような、大儲けのための仕掛けがあるわけでもなく、日々の積み重ねでうまく行ってるそういうふうに思えますね。その一方で会社の成長は倍々ゲームで推移していますよね。「積み重ね」とひとことで言うのは簡単だけれども。
- 井上
重田さん(光通信株式会社 重田康光社長)とも話していたんだけど、努力をしてても業界自体が縮小してるんだったら、百の努力したってパイはどんどん小さくなると。でも同じ努力でもパイ自体が大きくなっていればそれだけ大きくなってくるじゃないですか。 花卉(かき)業界全体的にはマイナス成長なんです。法人需要とか仏様需要も当然マイナス成長なんですよ。でも、僕らみたいにプライベートで、かつデイリーなお花のパイは多分大きくなっています。 ちょうど、ワインブームと似てるような気がしますね。ワインもほら、昔、デートする時、たとえば、結婚記念日とか彼女の誕生日に、レストランで5,000円とか1万円のワインを飲んでたじゃないですか。
その頃は花もそうだった。5,000円くらい財布に入れて、花屋行って、彼女の誕生日だから花束つくってって。そんなことしていたのに、今じゃ1,000円くらいのワインが出てる。家でも普段から飲むし。昔はワインって知らなかったじゃないですか。赤と白くらいしか。でも今では、エリアの名前を言うとか、シャトーがどうしたとか、年代はとか、そんなこと言ってますよね。
花もこれと同じで、特別な時に買っていたものが、今は1,000円くらいの予算で買える。家でも普段から飾るようになった。今、うちで一番売れているのは、オリジナルの花バサミとか花瓶。もう飛ぶように売れるんですよ。本当追いつかないくらい売れてるし、花瓶なんかはね、7万個ぐらい売りました。今までいかに花を飾る習慣がなかった人が多かったか、そういうことだと思います。
家でワイン飲まなかった人というのは、まずワイングラスを買っただろうし、ワインオープナーを買ったと思うんですよ。それと同じようにまず花瓶を買って、はさみを買うっていう人がすごく多いんですよ。
- 佐々木
「花って、手にする人みんなが幸せになれて、必ず消えてなくなる商品。こんなにいい目のつけ所はない」とビジネス的視点での分析を聞いたことがありますが、本当だなと思いました。さすがですね。
- 井上
枯れますからね。
- 佐々木
永遠に生きちゃうと、次が売れないし(笑)。
- 井上
花のよさはね、人間の本能に即したものだと思ってるんですよ。ブームじゃないんですよね。イギリスのガーデニングがそうですよ。ガーデニングが根付いちゃうと、景気が悪くなってもガーデニングはやめないですよ。
「花」とか「緑」というのは、何かぜいたく品みたいな気がしますよね。でも人間の本来の姿を考えてみれば、原始時代とか写真を撮ったら絶対緑ばっかりですよ。山とか川の近くに棲家(すみか)があって、樹がいっぱいあって、花が咲いている、そんなところに人間は生きていたはずだから、花とか緑のある空間は、ぜいたくじゃなくて、なければけないものなんですよね。 花や緑はブームでは終わんないじゃないかなと思っている。根付いちゃうと、ないとすごい寂しくなるし、一週間に一回は買える値段だし。ビジネスとしてもいいかな、と思っていますね。
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