08年に運転免許証を自主的に返納した人は過去最高の2万9150人で、07年(1万9457人)の1・5倍に急増したことが12日、警察庁のまとめで分かった。このうち96%が65歳以上で、返納者にバスやタクシーの運賃を割り引くなどの優遇制度を導入した都道府県での増加が目立つ。
高齢ドライバー事故の増加を受け、警察庁は98年、免許自主返納制度を始めた。08年の返納者の内訳は、65~74歳が前年より減る一方、75~79歳が9326人(07年比4169人増)、80~84歳が7609人(同4852人増)と増えた。返納者への優遇制度は年々広がり、26都道県で導入。宮崎では1019人で07年の11・3倍に急増した。兵庫は1279人で7・0倍、東京も5827人で4・5倍になった。
一方、免許返納した人には希望すれば「運転経歴証明書」が交付されるが、有効期限がないため、銀行口座開設などで交付から半年間しか本人確認書類として使えず、「返納すると身分証明がなくなる」との声も根強い。このため警察庁は11年1月をめどに、10年程度の有効期間を設け、住所変更もできる証明書を発行する方針だ。
高齢ドライバー問題に詳しい溝端光雄・東京都老人総合研究所研究副部長は「返納支援が広がったことに加え、高齢ドライバーによる事故がよく話題にされるようになったからだろう。高齢者講習などの際に、他の移動手段に関する情報を提供することも必要」と話している。【長野宏美、板垣博之】
毎日新聞 2009年2月13日 東京朝刊