【ワシントン草野和彦】クリントン米国務長官はアジア歴訪前の13日の演説で、中国との協調関係が「世界全体の平和と繁栄にとって極めて重要」と語り、対中外交の重要性を強調した。東アジアの重要課題である北朝鮮の核問題だけでなく、金融危機や気候変動など国際社会が抱える問題も中国の協力無しに解決できないためだ。今回の訪中で「包括的対話」の足掛かりをどう築くか注目される。
「米中は互いの成功のために貢献できると思う」。長官は北朝鮮核問題を巡る6カ国協議議長国としての役割に加え、平和維持活動など国際社会への中国の関与を称賛した。発言の裏側には、米国発の金融危機が欧州やロシアにも飛び火するなか、米国債保有残高世界一の中国に対し、米国経済を下支えしてほしいとの思惑もある。
長官はまた、演説後の会見で「米国は積極的に動いている。他国、とりわけ中国は(国際的金融危機の打開などで)行動すべきだ」とも述べた。この数時間後、上下両院本会議は総額7872億ドル(約72兆円)の景気対策法案の修正案を可決。長官発言は説得力を増すことになった。
一方、気候変動対策で長官は「米国は歴史的に最大の(温室効果ガス)排出国だったが、中国が抜いた」と指摘。両国の取り組みが肝要だとして、溝の深い排出規制ではなく、「クリーンエネルギーの促進に向けた協調」からスタートする意向だ。
今年は天安門事件20年、チベット動乱制圧50年という節目。人権や信教の自由など相いれない問題の克服も、両国の包括的対話構築への課題となる。
毎日新聞 2009年2月15日 東京朝刊