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【放送芸能】

『セーラームーン』上回る6作目 テレ朝アニメ『プリキュア』 ブランド+新キャラが強み

2009年2月13日 朝刊

 女児に絶大な人気を誇るテレビ朝日のアニメ「プリキュア」の第六弾「フレッシュプリキュア!」(日曜午前8時30分)が今月一日に始まった。シリーズ六作目突入は、国内外で一大ブームになった「美少女戦士セーラームーン」(1992−97年)の五作を上回る記録。「女の子は成長が早く、すぐ飽きられる」といわれヒットが出にくい女児向けアニメで、プリキュアが支持される理由は−。製作した東映アニメーションの梅沢淳稔(あつとし)プロデューサーに聞いた。 (石原真樹)

 プリキュアは、普通の中学生の女の子が戦士に変身し、悪を倒す物語。取り立てて珍しい話ではないが、シリーズを通して幼児向け番組としては高視聴率を維持。第五弾の平均視聴率は5・6%だった。

 なぜヒットしたのか。梅沢さんは「結論からいうと、不思議なんですよ」と苦笑。「あえて言うなら、チェンジしてきたことでしょうか」と分析した。

 第一弾「ふたりはプリキュア」が二〇〇四年に始まり、翌年は新キャラクターを加えて「ふたりはプリキュア マックスハート」に。三年目の「ふたりはプリキュア スプラッシュスター」ではキャラも設定も総入れ替えした。

 度重なるリニューアルは、実は偶然の産物だという。「前作『明日のナージャ』が一年で終わったので、『ふたりはプリキュア』もどうせ短命だろうと思って、一年目でやりたいことを全部やり尽くしてしまった」と梅沢さん。想定外の二年目突入に、ひねり出したアイデアが「新キャラ登場」だった。

 それが結果として息の長いヒットにつながった。梅沢さんは「子供たちに『プリキュアだから』という安心感があり、かつ『(次は)どんなプリキュアなんだろう』という期待を持たせられたのが良かった」と推測する。「仮面ライダー」「ウルトラマン」など長寿の男児向け番組に通じる仕掛けが奏功、女の子たちをひきつけたようだ。

 梅沢さんがその「プリキュア」ブランドの強さを見たのが、第六弾の初回放送前日、一月三十一日に開かれた新キャラお披露目イベント。雨にもかかわらず東京・池袋の会場に親子連れ約一万人が来場、キャラクターグッズはほぼ完売した。

 女の子たちはまだ新番組を見ていないのに、着ぐるみショーを見終わって「(新キャラの)キュアピーチがかわいい」などとグッズを買い求めた。その姿に「プリキュアなら大丈夫、と思ってもらえている」と実感したという。

    ◇

 一方で、「セーラームーン」のように世代や性別を超えた大ヒットに至っていないのも事実だ。

 プリキュアの主な視聴者層は四−六歳。梅沢さんによると「今の小学生は『アニメなんて恥ずかしい』という感覚がある」らしく、かつてセーラームーンを見ていた七−九歳すら枠外だ。女の子は保育園や幼稚園の卒園と同時にプリキュアも卒業、次に見るのは、高校生や社会人の恋愛模様を描くフジテレビの「月9」ドラマだとか。

 そこで、第六弾はおませな小学生にも見てもらえるよう、ストーリー性を重視。「四人目のプリキュアは誰か」「インフィニティって何?」などの謎をちりばめ、年間を通して少しずつ秘密に迫る仕掛けだ。

 「子供が好きだから」と、ダンスにも凝った。タレントの前田健による振り付けは、飽きられないよう「簡単すぎず、ちょっと練習するとできる」レベルに設定。エンディングテーマの映像は、踊っている人間の動きをコンピューターに取り込む「モーションキャプチャー」を使い、リアルさを追求した力作だ。

 ブランドで安心感を与えつつ新しい風を吹き込み、女児をひきつけることに成功したプリキュア。第六弾では視聴者層を広げ、月9に走る女の子を食い止められるだろうか。

 

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