【ワシントン及川正也】オバマ米政権で厚生長官に指名されたダシュル前民主党上院院内総務らが指名を相次ぎ辞退したことは、政権の人選プロセスの甘さを露呈、オバマ流の「変革」が早くも問われている。政治倫理の厳格化を求めるオバマ大統領の政権運営に大きな痛手となりそうだ。
3日のギブス大統領報道官の記者会見では、「(指名高官で)税金未納者はまだいるのか」「ダシュル氏の指名辞退で大統領の『変革』は修復されると思うか」など厳しい質問が相次ぎ、ギブス氏は防戦に追われた。
税金未納問題を問われたのはガイトナー財務長官、ダシュル氏、業績評価官に指名されたキルファー氏の3人。また、高官ポストの指名を辞退したのは、商務長官に指名されたリチャードソン・ニューメキシコ州知事が先月、州政府事業を受注した企業が捜査対象となり辞退して以来、計3人となる。
同じ税金未納問題を抱えるガイトナー氏が承認され、ダシュル氏らが辞退に追い込まれたのは、ガイトナー氏承認後の先月末、オバマ大統領が金融機関の巨額ボーナスを「恥ずべき行為」だと批判したのが大きい。この発言を機に、足元の高官の税金未納問題に関しても世論は厳しくなり、大統領は「けじめ」を迫られた格好となった。
指名辞退した3ポストは、いずれもオバマ政権の「目玉」だ。商務長官は深刻な失業問題、厚生長官は無保険者が約4600万人に上る医療保険改革にあたる。また、業績評価官は今年1・2兆ドルに達するとみられる財政赤字を背景に歳出監視と予算合理化を担当し、オバマ大統領が鳴り物入りで新設した。
3日は商務長官に共和党のグレッグ上院議員を指名し、オバマ政権との対決姿勢を強める同党に秋波を送った。しかし、ロビイスト排除を改革の柱に据えながら、国防副長官に大手軍事企業のロビイストだったリン氏を指名したことに共和党内に異論があり、オバマ大統領への逆風はなお続きそうだ。
毎日新聞 2009年2月4日 東京夕刊