【健康】女性とうつ病(上) ワーキングウーマン 成果、気配り…悩み多く2009年2月6日 ストレス社会の中で「国民病」といわれるほど増えてきたうつ病。専門家の実態調査によると、女性は生涯罹患(りかん)率が男性の二倍といわれる。今月は、女性のうつ病を考える。 (野村由美子) 二十代後半の会社員A子さんは、とてもまじめな性格。書類づくりなどを頼まれると資料の作成法まで勉強し、完ぺきに仕上げる。しかし時間がかかりすぎるため上司に評価されない。「こんなに頑張っているのに」とストレスを抱えたA子さんはある朝、ベッドから起き上がれず、食べることもできなくなった。 「仕事熱心でまじめな人が、うつ病になるんです」と名古屋工業大保健センター長の粥川裕平医師は話す。 うつ病は「もともとの活動レベルやエネルギーが低下して、本来の力が出せない状態が二週間以上続くこと」。 脳の過労で、睡眠をとっても疲れが取れない。仕事の能率が少し悪くなり、うまくいかないなと感じると軽症。中程度になると、無理に出勤してもミスばかり。着替えやお化粧も面倒に感じる。重症になると「自分は生きていてもしょうがない」「会社に必要がない存在」と思ってしまう。家族と話すこともできなくなる。軽症なら自然に治る人も多い。何よりも予防や早期発見が大切だ。 働く女性のうつ病について、名古屋市に本社がある機械・自動車部品メーカーのジェイテクトの保健師杉本日出子さんは「女性はすべて完ぺきにこなそうとする傾向があるうえ、職場では明るく振る舞おうと頑張るため、周囲につらさを気づかれにくいんです」と指摘する。 まだまだ「男社会」の職場も多く、仕事での成果に加え、女性らしい気配りや存在感も求められる。家事も育児も女性が担うのが当然という社会通念もある。一般職、総合職など女性のみの職制もあり「男性と同じように働いているのに評価されない」といったストレスも抱えやすい。 ジェイテクトは、前身の一つ、豊田工機時代の一九九〇年代後半以降、心の病による休業者が増えたことから、保健師を中心にメンタルヘルス向上に力を入れてきた。管理職対象と社員対象の教育を実施。昨春までにすべての管理職が研修を受けた。 職場では、チェック表をもとに、定期的に上司が部下の様子を見て、元気がなかったり休んだりする場合に、上司は杉本さんに相談。杉本さんは本人から話を聞き、了解を得た上で、上司に対処法などをアドバイスする。 「早めにかかわりを持つことで発病や重症化を防げます。頑張りすぎなくてもいいよう、サポート体制があることが大事」と杉本さん。こうした取り組みで、本年度は休業者が前年度比三割減という成果を挙げた。 治療は、十分に休養しながら精神科、心療内科にかかり、抗うつ剤などを飲む。症状によっては婦人科のホルモン治療なども。早くて三カ月ほどで調子が戻るが、抗うつ剤はその後も医師の指導を受けて飲んでいく必要がある。勝手にやめるのは禁物だ。 仕事を休まずに治療する際も、上司と相談して仕事量、やり方を変えること。同僚の支えも大切だ。「どんな職種の女性も同じ職場の仲間という見方をすることが大前提」と杉本さん。「やっぱり女は」「甘えてる」という陰口は治療の大きな妨げになる。粥川医師も「弱いからなるのではない。抱え込まず、一人では無理と言える職場づくりも大切」と指摘する。 月経前のホルモン変化で不安定な時期と重なると、さらに落ち込みやすいことから、ジェイテクトでは月経の話にも重点を置いた女性セミナーも始めている。
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