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【埼玉】

『希望持っていたのに…』 比人一家・在留かなわず

2009年2月14日

 強制退去処分を受け、一時滞在の仮放免期限を十三日に迎えた日本生まれのフィリピン人カルデロン・のり子さん(13)=蕨市立第一中学一年=と両親の三人は入国管理局で、「一家全員での特別在留許可は認められない」と通告を受けた。東京都内で会見したのり子さんは「希望を持っていたのに…」とか細い声で語った。 (望月衣塑子)

 制服姿で会見場に現れたのり子さんは、目に涙を浮かべながら「将来のため、勉強のため、特別在留許可を認めてくれるだろうと思っていた」とショックを隠しきれない様子だった。

 同席した父親のアランさん(36)は「一万八千人もの署名を集めて提出したが、入管の人には『こういうものを出しても意味がない、判断は変わらない』と言われた。一体、では自分たちはどうすればいいのか。のり子だけ置いて日本を出て行くことは絶対にできない」と悔しそうに語った。

 日本に残る夢を絶たれたのり子さんは会見後、両親に「学校の授業を受けたい。友達に早く会いたい」と早退した学校に戻っていったという。市立第一中学の阿部正一校長は「結果は聞きました。のり子さんの心のケアに努めてあげるしかないです」と声を落とす。

 特別在留許可の取得などの活動を支援する市民団体「APFS」には、日本で生まれ育った子どもがいる不法滞在者などの十七家族が登録し、強制退去命令の取り消し訴訟を起こしている。APFS事務局次長の吉田真由美さんは「のり子さん家族が救われれば、日本でまじめに働き、生活しているほかの家族にも大きな光が差したはず。今回の結果は残念でならない」と声を落とした。

 今後は、のり子さんだけの特別在留許可が認められる可能性が大きいが、カルデロンさん一家を支える渡辺彰悟弁護士は「教育を受けるという子の利益を認めるなら、両親を帰すというのはその選択を狭めること。やりきれません。最後まで署名を集め闘っていく」と語気を強めていた。

 

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