◎北陸の景気悪化 「失われた10年」繰り返せぬ
北陸の景気後退に歯止めがかからない。日銀金沢支店の景気判断が、これまでの「悪化
」から「大幅に悪化」の表現に改められた。景気判断の引き下げは二カ月ぶりで、生産、雇用・所得、個人消費の主要項目すべてが下方修正という惨状である。
ITバブルが崩壊した二〇〇二年二月の「広範に悪化」以来の厳しさだが、今回の不況
の深刻さはおそらく当時とは比べものになるまい。景気は世界規模で今なお右肩下がりの気配であり、底が見えぬ怖さもある。「先行きについては、当面、悪化を続ける可能性が高い」という日銀金沢支店の見通しは妥当だろう。
景気が悪いという悲観的な話が広がれば広がるほど、人は身をすくめ、財布のヒモを締
めようとする。食料品など当面必要なもの以外の出費を切り詰め、守りを固めようとしがちだ。だが、それは個人としては正しい行動であっても、社会全体を考えると、理に反した行動になってしまう。過度な消費や投資の抑制は、不況を加速させるからである。
経営に余力のある企業は必要な投資を、生活に余裕のある人は適度な消費をして、景気
を下支えしていかないと、困るのは本当に苦しい企業や社会的弱者である。持てる者がお金を使って、経済を活性化させないと、バブル崩壊後の「失われた十年」を繰り返すことになりかねない。
メディアの責任も大きいが、日本人は現状を悲観的に考えがちだ。米大手会計事務所の
調査では、今後一年の収益成長に「非常に自信がある」と答えた日本人経営者は、世界平均の約三分の一の11%だったという。
客観的に見て、日本の金融システムや経済基盤の安定度は世界トップクラスである。千
五百兆円の個人金融資産を持ち、社会保障もしっかりしている。円高で輸出は大打撃を受けたが、そもそも日本の外需依存度は主要国の中では米国に次いで低い。外需に頼らなくても、内需を拡大していけば、景気は回復するのである。
外需主導と違って、内需主導の景気回復は安定的で、実感が伴う回復になる。まん延す
る悲観論に萎縮する必要はない。
◎フードピアランド 「食の挑戦」後押ししたい
金沢市の県中央公園で始まった「フードピアランド」は、出店した多彩な顔ぶれや地域
の広がりをみれば、まさに食の「オールスター戦」と言ってよいだろう。
能登丼や高岡大仏コロッケ、氷見はとむぎ茶、ドジョウのかば焼きなど、それぞれ地元
で人気を得た料理やB級グルメが勢ぞろいし、食のジャンルを超えて味やアイデア、行列の長さを競い合う場として定着してきたことは、その熱気が新たな食文化を生み出すエネルギーにもつながる点で大きな意味がある。
急速な景気後退でモノが売れないと言われるなかで、食は素材の良さに加え、販売方法
などに工夫を凝らせば、好不況の波に関係なく、消費者の心をつかめる分野である。食を売り出すことはその土地の魅力を発信することでもあり、積極果敢な取り組みは地域に元気をもたらすだろう。地元の人たちも消費を通じて、ふるさとの「食の挑戦」を後押ししたい。
今年のフードピアランドには過去最多の八十七店が出店した。カニやカキ、ブリなど日
本海の冬の味覚のブランド化とともに、ここ数年の間に北陸で増えたご当地グルメには目を見張るものがある。地元の素材に徹底的にこだわり、いずれも地産地消や地域おこしを強く意識している。フードピアランドへの出店は、金沢という北陸最大の消費市場で認知度を高め、販路を拡大する好機となる。金沢で人気を得てこそ全国区の道も開けてくるだろう。
今回は米心石川(金沢市)直営店の県産コシヒカリのおにぎりや、JA氷見市の特産白
ネギを使った鍋なども登場した。新たに開発した食がどこまで受け入れられるか、市民や観光客、幅広い世代が集まるフードピアランドは消費動向を探る格好の場である。全国の有名ラーメン店や富士宮やきそばなどの人気B級グルメがテントを連ねるなかで、地元勢がどこまで対抗できるのか、主役の座争いも楽しみである。
ふるさとの豊かな食文化を再認識するとともに、北陸から新たな名物料理を育てる舞台
として大いに活用していきたい。