■調理設備について(語句の説明)
かまど(竈)
かまど(竃) 鍋や釜をのせて食物の煮炊きに使用する施設で、クド、ヘッツイなどともよばれる。「かまど」とは釜をかける所、という意味。
屋内、屋外の調理場に設置される

囲炉裏
囲炉裏(いろり:居炉裏とも表記)とは、伝統的な日本家屋において床を四角く切って開け灰を敷き詰め、薪や炭火などを熾すために設けられた一角のこと。主に暖房・調理目的に用いる。数える際には「基」を用いる。

日本の炊飯器具の歴史と紹介
かまどと囲炉裏
南国と北国の違い
南国では、暑さをさけるため、かまどは屋外や別棟にもうけ、3つ石の上に鍋をおいて粘土などでかこい、火が直接鍋にあたるように工夫した。
北国では、かまどの火は調理だけではなく、暗くて寒い冬の間の室内照明や暖房をかねる必要があった。
鍋を自在鉤(じざいかぎ)でつって火からはなして調理した。煮炊きと同時に暖房が出来るかまど形式である。
日常の食べ物
東日本では囲炉裏の鍋で雑穀米を煮る。
西日本ではかまどに甑(こしき)をおいて、雑穀米や米を蒸す。
米消費向上と共に「炊飯専用鍋」が、全国に普及
その後、米の生産量向上に伴い、庶民の米消費の割合が多くなる。
米飯の炊き方が、現在の方法「炊き干し法」になると、西日本では「鍔(つば)付きの飯炊専用釜=羽釜」が普及した。
また、この釜にあったかまどが開発された。
羽釜は平安時代から存在したようだ。
海上交通の発達にともなって、西日本のかまどがしだいに東日本にも流入し、囲炉裏とかまどを併用する台所も登場する。

しかし、東日本では米飯が一般化しても、1960年代に電気炊飯器が普及するまで囲炉裏の鍋で飯を炊いていた地域もあった。
1950年代から60年代にかけて、農村の生活改善運動の一環として、従来の原始的な土のかまどにかわって煉瓦や鉄板の熱効率のよい「改良かまど」が急速に全国に普及する。

従来のかまどは、煙突もなく、眼病の原因になることもあったからだ。
都市部では、公団住宅の建設にともなってガスレンジとステンレス(→ ステンレス鋼)の流し台をそなえたダイニングキッチンが導入され、高度経済成長を機にかまどを使わなくなった。
■電気炊飯器について
なお、現在のような電気炊飯器は、日本人の発明。
1955年、東芝が実用性の高い電気炊飯器を完成。発売して全国に普及した。
それまではかまどに薪をくべてお米を炊いていたのが、タイマーで寝ている間に炊けるようになった。
スイッチを入れるだけで自動的に炊き上げる電気炊飯器。
この発明は主婦の睡眠時間を1時間増やした。
発売当初は高額であったが、便利な道具であったため、売り上げは伸びた。
1960年には日本の家庭の約半数が、炊飯器を所持している。
これにより家庭の主婦に時間の余裕ができ、自己啓発に励んだり女性解放への動きが加速したりと台所以外へも影響が波及した。
1972 年に保温機器機能のついた電子ジャー炊飯器が発売され、1979 年から洗米後の浸漬や火加減も管理してくれる、マイコン搭載の電子ジャー炊飯器が登場する。
1988 年には高い加熱の得られる電磁誘導加熱のIH ジャー炊飯器が発売された。
外国にも普及して、東南アジアや中国、韓国など、米を頻繁に食べる国で愛用されている。
なお、韓国には1980年代ごろに普及したようです。
昔の日本の調理器具紹介
羽釜(はがま)・飯炊釜(めしたきがま)
胴の周囲に鍔(つば)がある炊飯用の鉄製釜で、竃(かまど)の口に鍔をかけ、据え置いて使用しました。他用途の釜に比べ、鍔から上部が大きく吹きこぼれしにくい構造になっており、さらにこれに分厚い木蓋(きぶた)を乗せ、ご飯を蒸らす仕組みになっています。平安時代にはすでに鉄製釜は作られており、熱効率を高め、すすを防ぐための鍔が付いたのは、製鉄技術が向上した江戸時代になってからのことです。昭和30年代の電気釜の普及とともに、次第に使用されなくなりました。
炊飯器の無い時代の飯炊きは、水加減・火加減が非常に重要で、少しの誤差でお粥(かゆ)やオコゲになってしまいました。
飯櫃(めしびつ・いいびつ)
一般的にお櫃(ひつ)と呼ばれ、炊き上がったご飯を釜から移し、保温したまま食膳に運ぶための円形の蓋付木箱で、直径1尺(約30cm)前後のものが多く、残りご飯を保存するのにも使用されました。香りの薄いヒノキ材が一般的で、水気を吸収させるために白木のまま使われました。冠婚葬祭用には漆塗りのものもあります。
夏場はご飯が腐りやすいため保存には飯櫃を使わず、竹製の飯籠(めしかご)に移し、軒下などに吊るしました。
飯籠(めしかご)
夏場の暑い時期に、炊いたご飯を腐らせないように保存しておく竹製の籠で、飯櫃(めしびつ)と同じ直径1尺(約30cm)前後の大きさで、通気性をよくするために笊目(ざるめ)に編まれたものが一般的でした。
食べ残しをこの籠に入れ、軒下の風通しのよい所へ吊るしたり置いたりして使用しました。吊り手が無く、置く専用のものや、蓋の無いものもあります。
イズメ・イズミ・ねこぼこ

ご飯を保温するための藁(わら)で編んだ蓋付の籠で、炊き上がったご飯を釜から飯櫃(めしびつ)に移し、それをそのままこれに入れて保温しました。電気炊飯器の無い時代にご飯を保温し、少しでも温かくおいしく食べるために考えられました。
http://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/kannabe-rekishiminzoku/gaiyo/mingu-shoku.html
福山市神辺歴史民俗資料館