■遊山箱（yusanbako）とは？

遊山箱とは、小さな引き出しが三つ入った取っ手付きの木箱のことです。
丁寧に漆を塗り蒔絵（まきえ）を施した小ぶりな重箱です。

■新品の遊山箱

徳島県（地名）の小さい子供たちは、旧暦の3月4日に、春になると「遊山箱yusanbako」に弁当を詰めてもらい、子供達だけで、近くの山や川に遊びに行く習慣がありました。
小さくてこぎれいな子供用の弁当箱に、巻きずしや、煮物、ゆで卵やういろう、ようかんなどを入れます。

■古い時代の遊山箱

中身は豪華ではありません。

普通の家の家庭で作られるおかずです。
しかし、ただのお弁当箱ではなく、綺麗な箱に入っていると、美味しそうに見えますね

一応、中身の順序は決まっているようです。

しかし、厳格な決まりではありません。

下の段はご飯（主食）

いなり寿司と巻きずし

中段はおかず（副菜）
写真はお煮しめ（煮物）

上段はデザート
写真は、寒天やういろう

「桃の節句（３月４日）は一年で一番うれしい日。親も『手伝いしろ』とか言わず、遊びに行かせてくれた」
７２才の、お年寄りの感想。

■昔の写真です

“遊山箱”の起源は江戸時代、木工業が盛んな徳島で、器用な人が小遣い稼ぎに作ったのがきっかけではないかと言われています。

■遊山箱を使用した年代の方と、お弁当箱

（上の写真の子供ではありません）

当初は、大人も使用していましたが、時代が下るにつれて、子供専用の弁当箱になりました。
江戸末期には、多くの子供達が、友達と一緒に春のピクニックに出かけたようです。

戦争の影響で、戦中戦後しばらく、その風習が途絶えておりましたが、７０代～６０代の人たちが幼い頃には復活しました。戦後しばらく、この習慣は復活しました。

その後、戦後の高度成長期あたりから減少し、途絶えかけていました。

しかし、近年、遊山箱の文化、伝統、が絶えることを惜しんだ人々が活動、宣伝を行いました。
その結果、雑誌などで再び注目され始め、製造が増えています。

遊山箱yusanbakoを製造している会社には、全国から注文が入っているようです。

一度、衰退していた、一部地域の風習が、全国に伝播していることになりますね。

もちろん、一時の流行かもしれません。

しかし、それでも、価値があることだと思います。

文化は生き物です。
人々の、需要が無くなれば消滅します。
しかし、望む人がいる限り、衰退していてもこのように復活することがあります。
とても不思議で面白いことだと思いませんか？