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社説:小泉発言 もはや政権末期の症状だ

 小泉純一郎元首相が郵政民営化に関する麻生太郎首相の発言を公然と批判し、2兆円に上る定額給付金の財源を確保する08年度第2次補正予算関連法案の再可決にも異議を唱えた。「麻生首相では次期衆院選は戦えない」と言っているのに等しい発言で、今後、同調者が増える可能性がある。麻生政権はいよいよ末期症状を呈し始めたといえるだろう。

 小泉氏が麻生首相の発言を「怒るというよりも笑っちゃう」などとあからさまに批判したのは、麻生首相をはじめとする最近の郵政民営化見直しの動きが、小泉政治を真っ向から否定するものと映ったからだと思われる。

 今期で引退を表明している元首相の発言が、これまでの政権批判の中で最も大きな衝撃として報じられていること自体が今の自民党の活力のなさや実力者不在を物語る事態だ。それでも小泉氏の批判には一定の説得力があると受け止められているのはなぜか。

 「私は民営化に賛成ではなかった」に始まる首相の発言があまりにお粗末であり、自民党議員のみならず、国民の多くも「この経済危機の中、麻生首相で大丈夫か」と大きな不安を感じているからだろう。

 小泉発言のもう一つの大きなポイントは補正予算関連法案が参院で否決された後の衆院での再可決に強い疑問を呈したことだ。

 小泉発言の場となった12日の会合には18人が出席。衆院本会議で与党から何人が造反するかは速断できないが、再可決できず、目玉政策の定額給付金が実現不能となれば、たちまち麻生政権は窮地に陥る。今回の会合での発言で自民党内の倒閣運動は初めて具体的に顕在化したとも言える。首相の苦しさはここにある。

 首相はどうするのか。

 再三指摘している通り、衆院の3分の2を占める今の与党勢力は、郵政民営化を争点にした05年の衆院選で得たものであり、民営化を根本から見直し、自らの政策を遂行したいと思うなら、衆院解散で信を問い直すのが筋だ。

 だが、麻生首相自らの言動が批判を招き、支持率は上向く気配がない。このため、解散は、ただひたすら先送りされる状況になっている。一方、自民党内では仮に補正予算関連法案を成立させても、今後、総裁選を前倒しし、衆院選前に首相を交代させようとの動きが強まるだろう。

 国民が一番迷惑なのは、こうした党内抗争だけが、ぐずぐずと続くことだ。政治空白とは、まさにそれを指すのだ。

 経済状況が日に日に深刻になる中、国民の信任を得た首相にしか思い切った経済政策は断行できない。首相が交代するにせよ、しないにせよ、当面必要な経済対策を実行したうえで、早期に衆院解散・総選挙を行うことだ。改めてそれを指摘しておく。

毎日新聞 2009年2月14日 東京朝刊

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