景気の急激な落ち込みが続いている。
その主因は、世界同時不況の影響を受けた輸出の減少だ。02年〜07年の経済成長の実に6割が、輸出によって支えられていたのだから、輸出減少が日本経済を直撃したのも無理からぬ話だ。
一方で、内需が低迷し、輸出減少を埋め合わせることができなかったことも事実だ。英エコノミスト誌は、輸出急落で厳しい不況に陥っている国々(特にアジア各国)にとって、社会保障制度の拡充などを通じた内需回復が喫緊の課題だと指摘している。雇用や賃金を抑制して競争力を高め、輸出拡大によって経済を支えてきたモデルが行き詰まっているのだから、内需振興を目指すのは正しい。
では、日本はいかにして内需を再生させるのか。人口減少時代を迎え、社会保障は受益抑制・負担増大が避けられない中で、内需の活性化は容易ではない。
しかし一方で、いまだ満たされない内需が、そこかしこにあることも疑いない。不要な機能をそぎ落とした軽量・低価格パソコン、エネルギー効率に優れた自動車や家電製品、観光より食事に力を入れた国内旅行など、不況下でも好調な製品・サービスは少なくない。それらは、これまで企業が消費者ニーズをつかむと言いながら、実際は自らにとって都合がよいものを消費者に押し付けてきたことに対する反省から、生まれているように思われる。また、街づくりにおいても、郊外消費型からコンパクトシティー型への転換が、増え続ける高齢者の安心を高め消費機会を増やすことは、間違いなかろう。
ポスト金融危機時代においては、豊かな内需に目を向ける企業が増え、成長してゆくことだろう。(山人)