一刻も早く病院に行きたいのだが、ショックで発熱した息子を同行することも出来ず、置いて行くわけにも行かず。
ズキズキ痛む左目を冷やしながら息子の落ち着くのを待っている。
先刻の、尚美先生との会話を思い出す。
「早野さん、本当にごめんなさい。私どうしたら良いか、こんなこと初めてなの。近しい方でどなたかが殴られたなんてお話、聞いたことが無かったから、こんな時どうしたら良いのか本当に解らないの。出来ることは何でもしたいからおっしゃって欲しいの」
尚美先生が、あまりにもショックを受けてしまったことがヒシヒシと伝わり、何とかフォローしたいと思い、
「ああ‥、良くあることですから、腫れさえ引けば何とか‥」
「ええっ、良くあるの！？そんなことってあるの？！私は無いけど？どうして？」
「あーっと、ええ。良くあ‥‥、いえ、良くは無いです。何度かあったぐらいかな」
「ええっ、何度かあったの？！そんなに大変なことがあったの？ずっと我慢なさってたのね。何も知らなくてごめんなさい。昨日も、もう喧嘩もしなくなったとおっしゃってたのに、そうだったの、、、ずっと我慢なさって、、、早野さん、可哀相に、、、」
「ええ、我慢しないこととかもあ‥、いや、だから、たまには喧嘩買いま‥‥、せん。」
「え？なあに？ごめんなさいちょっと聞こえなかった」
「あ、いや、もう喧嘩しませんよ。道端ではもう10年くらいやってないですね、」
「えええ道端で！！！一体どんな目に遭っちゃったの？！道端！！！」
「あーっと、、、道端っていうのは、ストリートファイティン‥、じゃなくて、あのう。まあ、もう、やんないです。もう、体力も衰えて来ましたもので、、、」
「？？？」
「ああ何言ってんだ私。ええと何でも無いです。独り言。‥‥‥‥うん、喧嘩は、嫌ですよね。人を殴るなんて。いけませんよね！良くないスよね！」
「そうよね、殴るなんていけないと思うの。絶対にやっちゃいけない。岸本さんには私の方からも厳重注意致しますし、、、岸本さんはね、以前も挙動不審なところがあったの、、、これからも早野さんや、他の人に付いて歩くことの無いように私達で全力で守りますから。今回のことは本当に申し訳無く思っているんです。辛い思いをさせてしまって本当にごめんなさい、私、本当に反省しているの‥」
何だか大変申し訳無い。
何だか自分が悪いことをした気分になって来て恐縮。
フォローしようとすればするほどドツボで、あああああ私は馬鹿だあ。
しかし、尚美先生って純粋な深窓の御令嬢なんだなあ。世の中そういう方々も実在するんだなあ。映画と絵本の中だけかと思ってたよ。
腫れた顔で陰欝でしたが、尚美先生に救われました。