コア・カリ、共用試験受けた研修医は「優秀」―邉見公雄氏
文部科学省は2月13日、「医学教育カリキュラム検討会」(座長=荒川正昭新潟県健康づくり・スポーツ医科学センター長)の第2回会合を開き、地域や診療科に必要な医師を養成し、確保するための方策についてのヒアリングを実施した。発表者の邉見公雄・全国自治体病院協議会長は、医学教育モデル・コア・カリキュラムや共用試験を受けた初年度の学生が、現在の1年目の研修医になっていることについて、「今年度の研修医は優秀」との見解を示した。
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現在の医学生が受けている医学教育モデル・コア・カリキュラムや共用試験は、2002年から各医学部や医科大で整備が始まった。これを受けた卒業生は、現在は研修医1年目になる。 この日の会合で田中雄二郎委員(東京医科歯科大附属病院総合診療部長)は、「2、3年前に入ってきた研修医と比べて、今年の研修医はどうか」と発表者に質問した。これに対し、邉見氏は「他の人にも聞かないと分からないが、わたしの病院に限って言えば、今年の研修医はいいと思う。ひょっとしたらその成果かもしれない」と述べた。また、発表者の高橋勝貞・佐久総合病院介護老人保健施設長は、「かつての佐久総合病院は地域・農村医療をしたいという人が多かったが、ここ2、3年で研修病院がブランド化し、『ここで2年やったら出て行こう』という意識の人がいる。臨床能力については、1年目と5年目で差は感じない」と述べた。
寺尾俊彦委員(浜松医科大学長)は、卒後の医師が診療科を選択する際の動向を尋ねた。高橋氏は「かつて佐久総合病院は外科が優勢だったが、今は数年に一人ぐらいしかいない」と答えた。発表者の木村清志・島根県健康福祉部医師確保対策室長は、自身が卒業した自治医科大の傾向として、外科志望が少なくなったと述べた。加えて、内科の中でも志向が変わってきたとし、「わたしが卒業した20数年前は、消化器や循環器の志望が多かった。それが、今の卒業生は糖尿病や内分泌に変わってきている。消化器は内視鏡、循環器はカテーテル治療と、“技術屋”で外科に近い。夜間の呼び出しも多く、訴訟リスクも高い」と指摘した。
このほか、北村聖委員(東大医学教育国際協力研究センター教授)は、入試についてジレンマを抱えている大学があるとの見方を示した。「大学としての評価は、県の医療を支えるということではなくて、研究をどれだけやったか、科研費をどれだけ取ったかで評価されるので、高校で学力が高い人が欲しい。あえて県の人を取っても、文科省など外の評価につながらない」。これに対して木村氏は、大学がこうした考えで人材を集めても、県外に散らばってしまう傾向があったと述べた上で、「大学も地域の医療を守るという方向に変わってきていると思う」と主張した。
■大学病院の危機は「医療と教育の危機」
邉見氏は発表の中で、大学病院が独立行政法人化したために、資金や人材の不足に陥っていると指摘。加えて、DPCの導入により、平均在院日数が短縮して職員の時間的余裕がなくなり、教育に割ける時間がないとした。また、若手医師の専門医志向が大学離れを引き起こしていると述べた上で、「大学病院は医療と教育の2本柱だから、その大学病院が大変というのは両方が大変ということ。医学部定員が増加したらますます忙しくなる」と訴えた。
地域に必要な専門医の数については、二次医療圏ごとに必要な診療科の医師数を出し、その合計で全国に必要な医師数を算出するのがよいとし、「上からトップダウンで決めるのでなく、ボトムアップで決めていくべき。強制力をどこまで持たせるかについては、学会や団体の意見が必要」と述べた。
更新:2009/02/13 19:44 キャリアブレイン
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