小椋冬美 『6月の風にゆれて』 (集英社りぼんマスコットコミックス)


 さっきも書いたけど,13日の金曜日というのは嫌なことばっかりだ.まだ,肺炎が治りきってなくて,カルピスの「ほっとレモン」をちびちび飲みながらこの記事を書いていたりします.(こんなムチャをするから,明日には起きれなくなってたりして(笑))

 んで,今日もしっかりおんなのこモードです(自爆) ここ数年,白泉社の「別冊・花とゆめ」で『オトメン (乙男)』(げっ) という「少女マンガ」が流行っていて,来月3月には7巻が出るそうだ.確かにあたしは剣道3段だし,少女マンガは大好きである.だけど,料理は下手くそだし (昔付き合ってた女性の好きなオムライスと離乳食しか作れない),裁縫も下手である (いまは目が悪いから,針仕事自体,業者任せだけど).一緒にすな!と思ったりもする(笑)


 冗談はさておき,小椋冬美さんの初めてのコミックスの『6月の風にゆれて』(1978) を紹介することにします.(と言っても,この頃の私は「りぼん」だと 清原なつの さんや 佐藤真樹 さんや 陸奥A子 さんや 太刀掛秀子 さんや 高橋由佳里 さんや 田渕由美子 さんや 萩岩睦美 さんに狂っていた)

 「6月の風にゆれて」 は「りぼん」本誌 77年6月号に掲載された,本誌2番目の掲載作品です.


 「六月の花嫁」というとやっぱり谷山浩子さんでしょう.(゚_。)☆\ばき!(--;)

 冗談が多すぎるな.まだ肺炎の熱が残っているのかな(笑) 主人公の 桜井京美 は高2の女の子.30数年前は皆んなが憬れていた,私服の高校です.密やかに高3の 笹見淳一 を慕っていて,他の男の子には目もくれない.ところが放課後に掃除をしていると,笹見の同級生だった同じ3年の 植田 悟 がラジコン飛行機を飛ばして来る.京美は植田を何とも変わった人間だと思うばかり.笹見と比べたら,あんな人と思うのだけど,反対に植田は積極的に京美へアプローチして来る.同級生は男嫌いの京美を心配して,どうせなら植田とくっつけとはやしたてるのですが…….


 その後,田舎の祖母が病気で倒れて,京美はひとりぼっちで留守番をするはめとなる.しかし,精神的に幼い京美はさみしくて怖くて泣いてしまうであった(笑) そこへ,なぜか植田が優しく愛の電話をかけてくる.すると,京美は植田と何と2時間半も電話で話し続けるのであった.


 電話の中で,植田は自分の飛行機で飛ぶという夢を語ります.植田は夢の実現のために勉強しているんだと,京美に語りかけ,京美もまた植田のそんな理想に憬れて行くのでした.

 ところが,ある日,笹見が京美をデートに誘います.でも,笹見の話すことは「目先の大学に受かること」だけ.目の前の現実の話ばかりで,つきあってみるとつまらない人だということが京美にも分かってしまったのです.そして,いきなり笹見は京美にキスをしようとするのですけど,そこへなぜか植田のラジコン飛行機が飛んできて,笹見の邪魔をします.2年の時に同級生だった植田は笹見がただのつまらない点取り虫だということに気付いていたのです.

 笹見は逃げ出し,そして植え込みに突っ込んだラジコン飛行機を京美は植え込みから出てきた植田に差し出すのでした.京美は笹見のうわべだけを見てあこがれていたと植田に告白して,植田の愛のささやきに答えるのでした.そして次の日曜,植田と京美はラジコン飛行機を持って野原へデートに行く約束をしたのでした.ちゃんちゃん(笑)


 次は小椋冬美さんのデビュー作.76年「りぼんお正月大増刊号」に掲載された 「うれしい昼下り」です.

 主人公の 中里むつみ はキリスト教の私立大学までエスカレータで上がれる高2の女の子.夕方遅くに図書館へ大量の本を返しに行く途中,「銀ぶちメガネ」の大学生とぶつかってしまった! 「銀ぶちメガネ」というと,当時の女の子たちの憧れの存在で,流行していた さだまさし もしっかり「銀ぶちメガネ」をかけていました(笑) その「銀ぶちメガネ」の大学生は,同じキャンパスの大学部2年の 内田裕樹

「むつみちゃん」と言うと,個人的には週刊マーガレットの「桂むつみ」を思い出してしまうのですが,彼女の話はまた後日にするとして(笑)


 むつみの親友の 今日子 と,その彼氏のやはり大学部2年の 健次郎 は親友だったのです.オクテのむつみを,今日子と健次郎は内田がバイトしてる喫茶店へと無理矢理連れて行くのです.すると,何と内田が銀ぶちメガネなしでキッチンにいるではないか(笑) まことに偶然というのは恐ろしいものでぇ〜♪

 内田の銀ぶちメガネは実はダテで (女の子にもてようとしたんだろうな),今日子は大学部の校舎へむつみを連れて行き,むつみを内田とくっつけようと画策します.今日子は「これが運命でなくて なんなのよ!!」と言って,もっと積極的に内田に近づけと.そして,たまたまむつみが一人でキャンパスを歩いている所へ,内田が登場.内田がむつみの名前を覚えていたことだけで,むつみは胸がいっぱいになるのでした(笑) そして内田は無理矢理,ベンチでのデートに誘います.内田は下宿生活だなどのプライベートを話し出して,むつみは彼の下宿で昼ごはんを作ってあげようと……(笑)


 ところが,材料を買い込んできたものの,お焦げの連続(笑) しかもそこへ エミ という美人が登場! むつみはてっきり,エミを内田の「恋人」だと誤解してしまったのです.むつみは段々,内田を避け始めて,内田が心配して電話を3回もかけたのに出なくなり,心を閉ざしてしまったのです.

 ついに怒って,内田はむつみを捕まえて痴話喧嘩.しかし,そこへ現われたエミは実は新聞部の部員で,学園新聞に内田の紹介記事を載せるために「取材をしに来た」だけだったのでした(笑) エミはむつみのことも記事に書いてしまい,あとで読んでねと言い残して,内田とむつみの痴話喧嘩の場所から去るのでした.むつみは内田に謝って,二人で午後の授業をエスケープするのでした.ほとんど「いちご白書」の真似ですね.(^^;)


 次の ウェンディの小さな家 は 77年「りぼんお正月大増刊号」に掲載された作品で,イギリスの片田舎を舞台とした物語です.

 ある田舎の森の中で ベンジャミン という老人が畑を耕しながら,つつましく暮していました.そこへ一年前,旅の若者の ロビン がやって来て,二人は仲良く暮らし始めました.彼らの家は質素で,玄関のカギさえ壊れていました.泥棒など入ってこないような森の中だったのです.

 ところが,ある日,農作業の帰り道に牧師の説教を聴いて帰りが遅くなると,何とロビンのベッドで女の子が眠っているではありませんか! しかも貴重な保存食のサラミもチーズもピクルスもなくなっている(笑) 実はおなかがすいた ウェンディ が食い散らかしてしまったのでした.


 ロビンのベッドをウェンディが占拠したので,ロビンは床で寝るはめとなりました(笑) そして,ウェンディはしっかり居候を決め込んだのです.ベンジャミンもウェンディの事情を察してか,一緒に住もうと言い出したのでした.ベンジャミンとロビンが荷馬車に乗って農作業をしに行ってる間,ウェンディはニワトリと格闘して,見事に「産み立て」の卵をゲット.彼女にとって,それは初めての体験で,農作業から帰ってきた二人に卵料理をプレゼントしたのでした.

 しかし,ロビンはウェンディがどうしてこんな森の中へ来たのかを尋ねようとしました.ただ,ベンジャミンは「人にはそれぞれ事情というものがある」と言い,ウェンディの居候を許したのです.勿論,ロビンのベッドは新しく作り直されました.ウェンディはウェンディで,ロビンの着替えのオーバーオールを着て,木登り.ところがウェンディが木からすべり落ちてしまった瞬間,ロビンは彼女を枯れ草の上で受け止めたのです.この時に,二人の淡い恋が始まったのでした.

 ところが,高級車に乗った女性がウェンディの写真を持って,ベンジャミンに人尋ねをします.ベンジャミンは何もかも察して,そんな女の子はいないとウソをつくのでした.不審に思ったロビンはウェンディに尋ねます.すると,ウェンディはロビンに身の上話をし始めます.彼女の両親は彼女が幼いときに事故で亡くなり,おじ夫婦に引き取られたのだけど,金持ちの息子が嫁に欲しいと言い出し,お金の魔力でおじ夫婦は狂ってしまったのでした.先ほどの女性は金持ちの母親だったのです.


 ベンジャミンは一大決心をしました.この土地を棄てて,三人で新しい土地へ逃げようと…….三人とニワトリたちの乗った荷馬車は,どこかへと旅立っていくのでした.


 その次の 「冬色の絵本」 は 76年「りぼんデラックス冬の号」に掲載された作品で,マザーグースが基調となった物語です.


 絵の得意な高1の 西島裕明 は女の子にもてて困っている.そして,マザーグースを口ずさみながら,いつも逃げ込むのが喫茶店「ゲンゾー」なのだ.


 実は裕明の想い人は,マスターの店で働いている,孫で年下の 菜穂 という女の子なのだ.「ゲンゾー」のマスターは無名画家が好きで,いつも無名画家の絵を喫茶店に飾っている.この日,「ゲンゾー」に新しく飾られた絵は ヒロユキ・トダ という署名がしてある絵だった.マスターは自信作を持って来たら飾ってあげると裕明に言っている.

 そこで菜穂が見た裕明のスケッチブックに描かれた女性は,裕明の叔母で 多島美冴 という,彼のちょうど2倍の年齢で,二十歳ごろの写真を見て描いた若い女性だった.菜穂は美冴に,完全に嫉妬してしまった.

 美冴はとても身体の弱い人で,結婚もせずにひっそりと暮しているのでした.美冴は身体が弱いせいで裕明は滅多に会えません.裕明は医者になって美冴の身体を治す薬を発明しようと思ったけど,成績が振るわず,ひそかに画家を目指していたのだった.そして,マザーグースの歌を教えてくれたのも,実は美冴だったのです.

 菜穂は菜穂で,裕明がいつもホットミルクを注文するので「ガキ」扱いします.まぁ,女の子の精神年齢というのは小学高学年から急に男の子を抜くので,仕方がないと言えば仕方がない.ところが,菜穂がマザーグースの歌を歌っていたので,裕明は驚いてしまう.また,菜穂も「高校生のくせに」裕明がこの歌をマザーグースだと知らなかったのに呆れてしまうのだ.菜穂は母親が子守唄として教えてくれたというけれど,裕明の母親はマザーグースなど知らなかったのである.そして裕明が菜穂のことをほめると「そうやっていつも女の子の気をひくわけ?」と侮蔑するのだ(笑) しかも「例のおばさん? 若くてきれいで そんなのただの憧れじゃない 現実に目をむけなさいよ ばかね」と言い残すのだ.実は菜穂も裕明が好きだったのだけど,菜穂はそういう憎まれ口でしか言い返せないのである.

 その晩,裕明は菜穂のことを思いながら,菜穂のスケッチを描いていると,母を通じて,美冴が裕明に自画像を描いて欲しいという報せを受けました.雪の中,裕明は美冴の家へ急ぎました.5年ぶりの叔母は16になったのね,と泣いて迎えるのです.お友だちは,と言われ,菜穂の名前を出さずに一人いると言うけど,「むこうはぼくのこと敵視してる」と美冴に告げてしまうのでした.そうして話すうちに,友だちが菜穂だということがばれて,美冴は裕明が思春期に入ったことに気が付くのでした.

 美冴が真っ青になって気分が悪くなり,台所へ行っている間,美冴の本棚と絵を裕明は見渡しました.すると「ヒロユキ・トダ」の絵が…….


 しかも,本棚のマザーグースの本には,裕明の幼い頃の写真がたくさん挟んであったのです.美冴の頼みで裕明は美冴の絵をカンバスに描き出し始めました.すると,美冴は昔の思い出話をし始めたのです.


 17で恋に陥ったけど,相手は若くて貧しい画家で,結婚も許してもらえなかった.そのうち,彼はパリへ画学生として旅立ったけど,パリで死んだという.もしかすると,その恋の相手というのは「ヒロユキ・トダ」ではないかと,裕明は考え始めたのです.ただひとりの画家を愛しつづけ,裕明にマザーグースの歌を歌ってくれたのは美冴ではないかと…….

 うっかりマザーグースの本を画材と一緒に持って帰ってしまった裕明は,マザーグースの本の補修をしようとして,家の中を探し回ります.すると,美冴が昔,母親へ宛てた古い手紙が出てきました.その手紙には「あの人が裕行さんが生きていれば いまごろは親子三人で……」と.そう,戸田裕行と多島美冴は裕明の実の両親だったのです.裕明を産んで病弱になった美冴は,子供のいなかった姉夫婦に裕明を托したのでした.

 すると,いきなり部屋へ入ってきた,喪服を着た母親が美冴の死を告げました.ずっと裕明のことを言っていたと…….裕明に肖像画を描かせたのは,美冴の死が近かったためだったのです.皮肉なことに,裕明が美冴の絵をデッサンした直後に,美冴は倒れた…….雪の中,裕明は実の母が死んだショックで泣いていた.ちょうどそこへ菜穂がやって来て,裕明を抱き締めてしまうのでした.

 父も母も真相はその後も言わなかったし,裕明も聴かずにいた.そして,ついに裕明は「ゲンゾー」へ行き,父親の絵を見つめながら,菜穂をルノアール展のデートに誘ったのです.祖父のマスターには完成した美冴の肖像画を渡して,飾ってくれと…….マスターは裕明が「ヒロユキ・トダ」の忘れ形見であることに,何と無く気付いてしまうのでした.


 それでは最後の 「たんぽぽのメロディ」 です.この作品は 76年「りぼん」本誌4月大増刊号に掲載された作品です.


 たんぽぽと言うと,やっぱり谷山浩子さんの「たんぽぽサラダ」でしょう!


 この話の主人公は高3の 藤菜みのり.やっぱり,当時の憧れの「私服高校生」なんですね(笑) 彼女は高校のアイドルの 乾 修詩 に,ほのかに憬れています.みのりは「たんぽぽ」の花が大好きで,この花のように「風に吹かれて」修詩のもとへ飛んでいきたいのだけど,所詮ビボーのかけらのない自分には無理よね,と諦めているのです.修詩は校舎の裏庭の沈丁花の花の所が好きなことを,みのりは秘かに知っている.でも,それを修詩の親友の 野間 に知らせるがいなや,クラスメートの女の子たちは「抜け駆け禁止」とぎゃーぎゃーうるさい(笑)

 ところが,ある放課後,みのりがぽつねんと教室に残っていると,修詩が忘れ物を取りに来た.


それが,ノーベル文学賞作家の ヘルマン・ヘッセ の本だったのだ.(最近の若い人は,こういうのは読まないだろーな.私は高校時代,原書で読んでたぞ.自慢じゃないけれど……)


 ところが,このヘッセの本というのは,実は修詩の本ではなかったのです.修詩の兄の ひさゆき の婚約者の 瑞香 のものだったのだ.しかも,この本は瑞香の香水と同じ沈丁花の花の香りが…….実は修詩は瑞香に憬れていたのでした.だから,彼女の香水の匂いがする沈丁花の花の所が好き.敏感なみのりはそれに気付いていたのです.でも,兄の嫁さんとなると知って,修詩は見事に失恋.だけど,親友の野間が取り持って,たんぽぽの好きなみのりの事を紹介したのでした.

 それ以来,修詩はみのりと出会うことが多くなり,クラスメートにいじめられる日も…….そんなある日,修詩は失恋を癒すために雨の中でびしょ濡れ.おかげで風邪をひき,兄にも「おまえこれから休むたびに花屋に感謝状もらえるぞ」と嫌味を言われる始末.ところが,家の門の前でうろついていたみのりを,ひさゆきが捕まえると,みのりは授業のノートをひさゆきに渡して逃げていってしまったのです.

 すると翌日,修詩はノートのお礼に,瑞香のヘッセの本をみのりに貸そうとするのです.みのりはその晩,修詩が自分の気持ちにウソをついて瑞香の事を忘れようとしていることで泣きはらしたのでした.そして,兄夫婦の結婚式の前々日の金曜,みのりは相変わらず笑っている修詩がかわいそうになり,泣きながら教室を飛びだしていってしまうのです.でも,修詩は最初は憬れていたけど,今では素敵な姉ができることがうれしいと素直にみのりへ告げるのです.修詩の心の広さにみのりは驚き,自分はたんぽぽでいいんだと変に納得してしまうのでした.

 そして日曜,森の中の教会で結婚式が行われました.でも,みのりは隅っこで見つめているだけ.修詩はそんなみのりに愛の告白をしてしまいます.しかし,ドジなみのりは,修詩を行きずりにして,4月の池の中へドボン.二人とも大風邪をひいてしまい,まる一週間学校を休むはめとなりました(笑)

 今日のおまけは,最后の頁 (というと,さだまさしか) の,小椋冬美さんの自己紹介です.


P.S. この記事は以前に書きためていたのを,前書きにくっつけたものです.
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今日は風邪引いてダウンです(泣)


 「にゃ〜」の画像は何の関係もありません.(゚_。)☆\ばき!(--;)

 下でエサくれって鳴いてるけど…….

 昨日のデモのせいか,昨晩からのどがガラガラ,さらに歯を磨こうとしたら治療したはずの上あごの奥歯から血が噴き出した! てな訳で,今日の午前中は風邪で熱があるのにも関わらず,近所の歯医者さんへ.もし風邪をうつしてしまったら,ごめんなさい.m(__)m まぁ,白血球が普通の人より少ないから,仕方ないかな.もう街頭活動も無理だろーなぁ…….しくしく.

 糖尿病が悪化すると,歯や歯ぐきへ繋がっている毛細血管が腐って,歯まで腐ってしまうのだな.数年前に下あごを人工骨に交換してるから,今度は上あごとなると末期症状ですかねぇ,なんて歯医者に言ったら,君ぃそれが分かってるなら,どうしてもっと早く来ないんだと怒られてしまいました.

 死期が近いことが分かっていると,何と無くユーウツになる.食欲もなし.ところが風邪 (というか気管支炎へ移行しつつある) で血糖値がやたら高いから,インスリン注射だけして,糖分はグルコースのドロップ (明治製菓のMRからもらったもの) を1個齧っただけで,寝る準備をしてたりします.ということで,今日はブログはお休みです.Guten Nacht!

今日のふりかけ 谷山浩子さんの「不思議なアリス」 と,「意味なしアリス」です.



 悪魔の13日の金曜日(笑)の早朝,病院へ出掛ける前にちょっと一言.

 なぜだか「視覚障害者の等級」をキーワードにして検索を掛けてくるバカがいるみたいである(笑) 「長野県立総合リハビリテーションセンター」 のWebページが割と良くまとまっているので,勉強されると良い.例えば私の場合だと,「視覚障害 視力」がほとんど見えない「2級」であり,緑内障による「視覚障害 視野」が真ん中しか見えない (両眼の視野2分の1以上欠損.だからテレビなどの動画は認識できなくて,一時停止させないと薄らぼんやりとしか見えない) ので「5級」,合計して「視覚障害2級」ということになっている.詳しくは上記の Webページの計算方法を読むべし.さて,病院へ行って採血しに行きますか.

ついしん 病院へ行こうとしたら,コンビニの前で頭がぐらっと来て倒れた(笑) コンビニの店長がすぐにタクシー呼んでくれて,救急病棟に入ると「肺炎」とのこと.という訳で,さっきまで点滴受けていました(自爆) 帰りはインスリンやら抗生物質やらのおみやげを持たされて,タクシーを呼んでくれたコンビニに立ち寄って晩飯を買って帰りました.(^^;)まさに13日の金曜日だ!
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「護憲」っていったい,何だろうか?


 今日は「紀元節」の日なので,護憲集会とデモに行ってきました.日本国憲法をまじめに読んだことがない人は,上の写真の文庫本を買って読まれて下さい.英文のもと原稿も載っています.

 ところで,この英文のもと原稿は,明治時代に土佐の 植木枝盛が書いた憲法草案 を一度英文に訳したものを米軍法務部が採用し,これを基にして法学博士を取ったばかりの女性憲法学者が書いたものなのだそうです.当然,女性が書いた草案ですから,人権に関する条項が多く盛り込まれています.

 しかし,私たちはこの国の根幹に関わる法律群のことをどうして「憲法」と言うのでしょうか. 実は,大学の教養で受けた憲法の講義で,教授 (既に故人) が言われた,以下の発言が30年ほどたった今でも疑問として心の中に残っているのです.

「日本の法律は六法と呼ばれる大きなグループと,他のもろもろの法律によって成り立っている.六法全書を開くと分かるのだけど,最初に「日本国憲法」が載っている.なぜだか君たち,分かるか?」

 この質問には唖然としました.高校の政経で六法と日本国憲法についてはざっと習っていたものの,その関連性に関してはいまいちピンと来ていなかったからである (私は社会は世界史と地理で受験した.理科系というと暗記量の少ない政経でというやつが結構多いけど).教授は続けて答えた.

「なぜなら,日本国憲法は「基本法」であり,全ての法律はこの「基本法」に基づいて記述されているからである.但し,例外として一部の法律は前の「大日本帝国憲法」時代に作られたものがそのまま残っているが,中々見直しが進んでいない」と.

 つまり,憲法というのはあくまで「基本法」であって,六法の他の法律はすべて「基本法」の支配下にあるというのである.だから,憲法が改正されたり,アメリカの憲法のように修正条文が付け加わったりすれば,その他の法律は全て見直されることになる,という論理なのだ.さらに教授は続け,

「例えば天皇制の問題にしても自衛隊の問題にしても,憲法を改正するかどうかという議論の前に,目の前の憲法と矛盾した事柄や法律を見直すことの方が大切なのではないだろうか.例えば宗教団体は政治団体を作ってはならない,しかし「公明党」という政党が現に存在する」

と,教授は結んだ.その講義のあと,私は教授に質問した.「「基本法」というのは西ドイツのあれですか」と.教授はニヤリとして,「君はあのドイツ語で入試を受けたというやつか? それなら「憲法」という言い方と「基本法」という言い方の違いは分かっていると思うがね」 と言って,岩波新書の『西ドイツの社会民主主義』という本を読めという宿題をくれた.やれやれ,私は入学時から問題児扱いされていたようだ(笑)

 護憲集会で「憲法を守ろう」というスローガンの元に講演会を聴き,デモ行進をしながら,私は心の中で,いやそれはちょっと違うんじゃないか,と考えていたのは事実である.最近,社民党の土井たか子氏が「転向」とも受け取れる,「天皇制容認」発言をしていたからだ.彼女の論理では,憲法1〜8条に象徴天皇制についてきちんと規定しているし,また現在の明仁氏も教育勅語の強制に反対するなど,憲法の枠からはみ出さない言動をしていることから,天皇制を廃止するなどとんでもないというのである.

 未だにしぶとく,一部のネットゴキが 喪に服するのはいつ? なんて記事を検索してたりするからだ.私のアクセス解析は強力なんだぞ.経由したサーバや IP もばらしちゃうぞ(笑) バカはあんまり相手にしたくないけどさ.

 プロイセンは結果として「第三帝国」の亡霊を産み,ヨーロッパを破滅へと導いた.日本もまたプロイセンの真似をして明治天皇を「帝王」に仕立て,「華族制度」をでっちあげ,軍の暴走を停めることができなかった.やはり裕仁氏の戦争責任は死刑をもって償われるべきものだったのではないだろうか.

 他のブログでも同じことを書きましたけど,華族制度についてまとめ (憲法第14条).

 日本史の教科書には必ず載っているはずの「華族制度」.しかし,これが現在でも残っていることは意外と知られていません.典型例が熊本の殿様=侯爵の細川氏が連立内閣の総理大臣となったことが挙げられます.大学時代の悪友の旗本家の後継ぎは選挙のたびに使い走りをさせられてうんざりだと言っています(笑)

 日本の華族制度は明治の始めにヨーロッパのマネをして公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵が設けられて,公家や大名が明治維新の際の働きに応じてでっちあげられたもの.天皇家の旧皇族16家のうち7家が侯爵を名乗っていた.ちなみに公爵は公家の近衛家・九条家・二条家・一条家・鷹司家の計5家,そして徳川将軍家・三条家・岩倉家・島津家・毛利家・西園寺家・徳大寺家・水戸徳川家の計8家がこれにあたります.

 苗字を見れば分かる通り,これらの特権階級がGHQによる華族制度廃止にも拘わらず, 未だに生き延びていることがおかしいのではないかと思いますね.私は個人的に,彼らに関しては「流血革命もやむなし」と考えています.象徴天皇制も含めて,過去の華族制度の研究は格差社会の是正のために必要不可欠だと私は考えています.

今日のおまけ は,ほのぼのとあのねのね「赤とんぼの唄」


あのねのね「つくばねの唄」


 最近の学生はコンパで「猥歌」なんて歌わないだろうな.「黒の舟唄」も.
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これは「危険なイヤホン」だ!


 昨日の話の続き.最近,バスの中で見掛ける高校生に流行っている,密閉型のイヤホン を購入してみた.肺炎なんかで入院した時,隣のベッドの人からCDの音が漏れると言われたからだ.もっとも,CDプレーヤー自体が年期物なので,モーターから発する音も結構耳障りなので,枕の下に隠すようにしている.

 写真は松下製 (今はパナソニックだったか) の密閉型イヤホンである.まず,現在使っているソニー製のイヤホンと比べて,気が付いたことがある.

1) 耳に突っ込むと,耳垢が出てくる(笑) 耳のそうじをさぼってると,しばしばこうして「教えてくれる」のだろう.鼻くそと耳くそのついたうどんを目から食べたら目くそが付いてくるのだ(笑)

 最近の電化製品は何かと「教えてくれる」ものが多い.私の携帯電話は障害者用だから「充電を始めます」「充電が終わりました」「カメラを起動しています」「iモードに接続します」と,やたら親切に音声でしゃべってくれる.だから,目の悪い私も面倒な時は音声ボタンを押して,時刻を知ったりする(笑) 携帯電話用のイヤホンをつけておくと,他人に迷惑がかからないのも利点だ.そのかわり,冷蔵庫も炊飯器もお風呂も温風ヒーターもしゃべりだすとなると,考え物である(笑)

 友人によくからかわれるのだけど,私の温風ヒーターはコロナ製で,タイマーとか換気とか給油の際には「光の国から僕等のために〜♪」が鳴り響く(笑) 確かに目が悪い私には助かっている機能だけど,それが3時間おきにとなると,一日部屋で過ごす時には「心臓に悪い」(自爆)

2) この密閉型イヤホンは構造上,重低音が響きやすく,抵抗値も低い.つまり,ボリュームをかなり下げないと,耳に悪いということだ.若い連中はこれをつけたままで,親に買ってもらった mp3 端末で,大音量で聴きながら自転車を飛ばしてくるから,非常にアブナイ.もっともこれは条例で禁止になる自治体が増えているそうだから,携帯電話と同様に「相手のことを考える」機会をマナーとして考えさせる良い機会にはなると思う.しかし,こういう条例を作ったりすると,必ず「言論の自由」を持ち出して好き勝手なことを言う奴も出てくるから,難しい所だ.(年齢のせいか,だんだん保守的になってきたのかも知れない)

3) イヤホンの左右がわかりづらい.せめて「L」「R」には特殊印刷インクを入れて (オフセット印刷をして) 欲しかった.それなら 100円や 200円高くても買うぞ.いままで使って来たソニー製イヤホンだと,左のケーブルが短く,右のケーブルが長いので,簡単に左右が分かる仕組みになっている.もっとも,これは恐らくソニーの特許なんだろうなぁ……と,考えてしまうのだ.ちなみに片方のイヤホンに「点字らしき点」がついていることにも気付いたが,糖尿病で神経障害を起こした指では読み取れないほどの,テプラ並みの「点」である.子供の頃から盲学校に通った人ならともかく,中途失明者にはあの「点字」を読取るのはしんどい.

 とりあえず,思い付いたことを3つ.使い込んでいくと,さらに欠点が暴露されるかも知れないが(笑)

P.S. わたしもとむ丸さん同様,「白いか〜も〜め〜のはば〜たきに波が踊れ〜ば潮か〜ぜ〜歌う……」と歌えます(笑) 実は小学校の先輩だった…….

きょうのおまけ は,またKraftwerk (くらふと・う゛ぇるく) のオール・ドイツ語版です(笑) 彼らがシンセサイザの制御用に使っているノートパソコンはなぜか Vaio で,Mac じゃないのが不思議です(笑)

Kraftwerk "Radioaktivität"



Kraftwerk "Music Non Stop"



Kraftwerk "Trans Europa Express"

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安物買いの銭失い……(泣)


 とは良く言ったもので,見事にハズレを引いてしまった(泣)

 昨日の日曜日,上に掲げた 「Kingston DataTraveler 1GB USB Flash Drive」 なる1GBのUSBメモリが,たまたまイオンの文房具売場のワゴンセールで山積みになり,たった 500円 で投げ売りされていた.たまたまシャープペンシルの赤い芯とそれ用の赤いシャープペンシルを買いに来た私は,USBメモリの安さに釘付けとなり,2個合わせてイオン銀行の WAON 機能で買った.

 家に帰って,シャープペンシルの芯を赤い芯に入れ換えて,さてUSBメモリをフォーマットしましょうかね,とパソコンを起動してUSBジャックに差し込んだら…….片方のUSBメモリがなぜか認識されず,プロパティも0バイトと表示されていた.

 しっかりとアースしてある本体に手を触れてから操作したので,静電気で破壊されたってことはないだろうに…….というわけで,今日の午後,たまたまイオン銀行へ用事があったので,その不良のUSBメモリとレシートを持参.イオン銀行のカードの履歴でも一応購入歴を確認してもらい,携帯の電話番号を渡して交換してもらった.

 ……ところが,である.先ほど,念のために静電気除けの手袋をして,念には念を入れてアース線に触り,完全に身体から静電気を取ってから,交換してもらったUSBメモリは,悲惨にも昨日と同様,0バイトとしか認識してもらえなかった(泣)

 明日,また近所へ行く用事があるので,また交換だなぁ…….(^^;) 気分はほとんど,オフコースの「愛をとめないで」「さよなら」である(泣)

今日のふりかけ は当然,オフコースの1982年 武道館ライヴから「愛をとめないで」「さよなら」

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山形・新庄から,鹿児島・さつまへ「かまくら」のプレゼント


南国にかまくら登場 新庄から鹿児島・さつまに雪到着 (河北新報)について.

 今日は新聞休刊日なのかな? goo のニュース欄は昨年10月にインド首相との会談を小沢氏が健康上の理由でキャンセルしたことをわざわざ取り上げた時事通信 (ここははっきり言って右翼だから,話半分に聴いておいた方がよい) の記事を載せたり,小泉氏の本音が郵政民営化反対だったことで自民党内で内ゲバやってるなんていう読売や産経の下らない「洗脳記事」で埋っていて,非常にばかばかしい.みかかレゾナントは右翼からカネもらっているんじゃないかと思ったり(笑)

 そんな所に,河北新報から ほっと人情味を味合わせるようなニュース が入った.北国,特に日本海側の山形にとっては邪魔者扱いの新雪 12トン を,建設会社社長の矢作豊寿さん親子の運転する大型冷凍トラックで約1800kmを2日がかりで鹿児島へ運び,鹿児島の子供たちにかまくらで遊んでもらおうという企画が行なわれた.NPOの代表の斎藤氏らが飛行機で鹿児島入りし,小型重機で作られた「かまくら」で鹿児島の子供たちが喜んで遊んでいる写真が記事に添えられている.

 もともとは新庄市のNPO「AMP」とさつま町とがお互いの民芸品を 100円ショップで交換し始めたのが縁だという.雪国にとっては「廃棄物」である「雪のかたまり」が,南国にとっては「贈り物」になる.こういった地域どうしの交流は高速道路網ができたからこそ成立したもので,拠点どうしを結ぶ高速道路は人の交流も深めることができることが分かった.冬と夏の間に秋が置かれたから,春は少しだけ中途半端なのかも(笑) (゚_。)☆\ばき!(--;)

 要するに,どの拠点を新幹線や高速道路で結ぶかというだけの話で,いま騒いでいる中山道・リニア新幹線だって,わざわざ長野県へ停める必要があるのかという話にもなって来る.リニアモーターカーの場合,停車時ないし低速時ではゴム車輪を出す必要があるから,当然東北新幹線や山陽新幹線のように線形は直線に近い方がよい.一年半ほど前に書いた やっぱり東海道新幹線と山陽新幹線は切り離すべきだ (サイエンス1 カテゴリ) にしぶとく刃向ってくる 病的な「鉄っちゃん」 がいるが,こういう感情論でしか反抗できず,コメント欄に他の具体案を書けない連中は,現実というものを知らないのだから,政治つまり人と人との交流について論じる資格はないのではないだろうか.

 さつま町は雪のお返しに,特産の竹で作った竹灯籠「竹ホタル」を冷凍トラックに積み込んだとのこと.新庄の厚く積もった雪の中でロウソクの炎が揺れるさまは,とても幻想的な雰囲気を醸し出すであろう.もしかすると,札幌の雪まつり同様に,来年からは新庄の新しい観光スポットができて,山形新幹線でやって来る観光客が増えるかも知れない.当然,JR東日本は除雪車をフル稼働させ (詳細は「鉄道ピクトリアル」814号・2009年2月号「除雪車両」を参照のこと),架線の整備に予算を投入すること間違いなしである.

 ちなみに表題の,岩波文庫の『ロウソクの科学』ですけど,小学生の時に買って読んで以来,十冊近くちまちまと買い続けてるんだけども,なぜか 1956年に戦前の版が改版されて以来,ずっと戦後直後の古い活字が使われていて,目の悪い私には辛いです! 手元にこの本を持っている人も,恐らく老眼鏡をかけないと読みにくいのではないでしょうか.岩波書店には理科離れを防ぐ,化学の普及のため,いっそのこと新しい読みやすい大きな活字に組み替えてもらって,全国の中高一貫校の理科の先生に教材として買ってもらったらどうでしょうか.たかが 310円 (96年80版)の薄い本です.400円に値上げしても,みんな買いますよ,これ! 読書感想文のネタにも最適です.(^_^)/

今朝のおまけ ソ連時代にアーラ・プガチョーワが出した4枚目のアルバムの表題曲で,
Алла Пугачёва >>Как Тревожен Этот Путь<<


英語に訳すと,"How disturbing in this way" って所かな.>>Как Тревожен Этот Путь<< のLPレコードは港区狸穴町のソ連大使館内のモスクワ放送からもらった記憶があります (ちゃんとテープに入れてあるけど).大使館の中には職員の子供たち用の幼稚園や学校があって,たどたどしいロシア語で話し掛けるときゃあきゃあ喜んでた記憶もあります (おかげで同級生からはよく「KGB」とか「仔熊のミーシャ」と言われてた).

 ちなみに彼女の娘さんも「親の七光」で歌手をしていて,子宝にも恵まれているそうです.(ロシア人はフランス人と似て多産) 

 それからこれも加藤登紀子さんがヒットさせた「恋する夏の日」"A starry Summer" プガチョーワもすっかり「おばあちゃん」です.昨日取り上げた由紀さおりさん同様,年月が渋さを醸し出しています.(^^;)客席に娘さん夫婦や孫たちがいるんだけど分かるかな?
Алла Пугачёва >>Звездное лето<<


P.S. そういえば「国民新党」のオレンジのビラが郵便受けに入っていました.あれって一体,どこの組織が撒いたんでしょうかねぇ.どっかの新興宗教でも傘下に入れているのだろうか…….(^^;)
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谷川史子 『手紙』 (集英社 りぼんマスコットコミックス)


 と,いう訳で,今日も Cookie「おんなのこ」もーどバリバリです (森脇真末味さんの「おんなのこ物語」ではない).

 ある熱心な読者から,太刀掛秀子の『まりの きみの声が』(集英社文庫) のリクエストが来ます.しかし,半年前にこの文庫本,絶版になってしまったんだよねぇ.そもそも内容が教育学部の人形劇サークル.施設や幼稚園で子供たちと触れ合っていた (実はあたしも小4の時に大けがをして院内学級にいた頃,学芸学部の学生たちが土日に遊びに来てくれた思い出がある)「まりの」がNHKの子供ニュースに取り上げられ,一気にプロの人形使い兼声優になってしまったというお話なんですけど…….今の「ゆとり教育」以降の子供はこういう環境にいなくて,孤独なゲームやいじめに逃避してるから,まとめるのが難しい.今も実は原稿はハードディスクの中にぽつねんと置き去りにされてしまっています(泣)

 そういう訳で,今日も「手抜きうろん」(あのねのね,じゃない)で,谷川史子さんの『手紙』を取り上げることにします.ちなみに,「手紙」というと「由紀さおり」さんが浮かぶ人だけ読んで下さい(笑) ←オジン


 ちなみに TBSラジオ 「夜のバラード」の挿入歌はこっち(自爆) 予め言っておくと「夜のバラード」のLPには収録されず,この曲はドーナツ盤のシングルで出ていました (年齢が分かるな……).


 個人的にはニッポン放送の「土曜の夜は井上順」での彼女が好きでしたが.(^^;)



 あだしごとはさておきつ,まず表題作の 「手紙」 から.これは Cookie 2008年5月号に掲載されました.主人公は二十歳の大学生の 加瀬素子.前の下宿先から,新しい学生マンションに引っ越したばかり.山口県の母親からはひっきりなしに彼女の携帯電話へ連絡が入ってきて,引っ越しで疲れ切って昼前までぐったりなのに「うざい」.午前中だけで3回も着信履歴が入っていたので仕方なく実家へ電話すると,近所に洗剤を配れだのいちいちうるさい.田舎の人だから,引っ越し先の近所に洗剤やらタオルを配るものだと思っているらしい(笑) 「互酬性」を期待してそんなことをすると,かえって人間関係が面倒なことになるので,あたしは大学進学以来,一度もそんなことをしたことがない.

 素子は高校時代からの親友の 多美子 に恋人ができたため,素子が部屋を出て行き,多美子が彼氏と同棲することになったのです.引っ越しを手伝ってくれた多美子や彼氏は,素子の母からの電話の回数に爆笑.しかも,多美子までアリバイ作りに電話に出てしまう始末.

 素子が段ボール箱を片付けていると,ビニールひもがなくなった.そこで,素子は大学の購買部へ出掛けていく.すると,彼女が好みの背の高い男がバイトをしていた.友人の呼びかけでは,彼の名前は てっちゃん,会話の内容から上の学年で工学部らしく,恐らく彼女ナシと見受けられる.


 素子は「てっちゃん」に一目惚れ.話し掛けたくても,商売以外の会話ができないでいる.

 ある日,コンパの帰り,酔っぱらった素子が郵便受けを開けると,なぜか封筒が入っている.酔っぱらった素子は宛名も確かめずに,手紙を読んでしまった.それは大学生の 原田 徹 宛の,北海道の母親からの手紙だったのです.素子は酔いも手伝ってか,部屋でその手紙の返事を書き,ポストへ投函してしまったのです.

 数日後,素子が鍋を買うかカーテンを買うかと悩みながら帰宅すると,また郵便受けにハガキが入っていた.何と,例の大学生の母親からの返事だったのである.しかも,最後には母親の似顔絵まで! 素子は完全に「原田 徹」になりきって,またもや返事の手紙をしたためてしまうのでした.そして,文通は続き,冬から春へと季節が巡っていきます.素子はキャンパスライフやら学食のカレーに肉が入ってないなどの話を面白おかしく書いていくのでした.

 そして,レターセットが尽きてしまい,素子は購買部の「てっちゃん」の所へ.「てっちゃん」の顔も見れたし,素子はルンルン気分.すると,また山口の母親から電話.電話をぶっちぎった後,素子は「あなたのお気に入りムスメは お嬢さんを見捨てて 今 オトコと住んでますよ! おかげでお嬢さんは ひとりぼっちなんですよーだ」とキレてしまうのでした.学食で友人たちに母親の干渉の話を持ち出すと,皆んながぴーちくぱーちく揃って同じ不満を言い出して,素子は話題に入れなくていじけてしまうのでした.

 ところが,ある日,素子は「トオル母」をだましていることに気付きました.そして,郵便受けには彼女からの速達が! しかもそのすぐ後には上京してアパートに来るとの内容! 素子は慌ててアリバイを作ろうとするけど,その瞬間「トオル母」とのご対面〜(笑) 表札には「加瀬素子」と書いてあるものだから,「トオル母」はしっかり自分の息子の彼女だと誤解してしまったのです.しかも同じS大学だとのこと.「トオル母」はS大学を案内してと言いだし,肉なしカレーもしっかり体験するのでした.素子は文系だから午後の授業が早く終わり,こういう偶然が起こったのでしょう.

 そして「トオル母」がトイレへ行ってるうちに,またしつこく素子の母親から電話.素子はついにキレてしまい,携帯の電源を切るのですけど,その横を通ったのがゴミを持った「てっちゃん」.「すげー」と呆れられてしまったのです.素子の所に戻ってきた「トオル母」は母親なんてみんなそんなものよ,と言って「素子ちゃんはすごくいい子だわ」とほめるのです.そして,自分の息子の彼女が素子で良かったと言って,別れようとします.ところが素子は今までウソの文通をしていてごめんなさい,と言おうとしたのですが,♪まことに偶然というのは恐ろしいものでぇ〜♪


 実は「トオル母」は何もかも知っていたのです.筆無精な息子がこんなにまめに手紙を寄越して来るはずがない,しかも女の子の字で女もののレターセットだと.東京駅で東北新幹線に乗り込む時,素子は徹を宜しくね と言われて,とてもうれしくなるのでした.だって,片思いの人の母親に気に入られたのですから…….新幹線が出発したあと,徹は一緒に茶でも飲むかと誘ってくれました.新しい恋のはじまりなのかも知れません.



 次の作品は「ソラミミハミング」.2008年「クッキーボックス」初夏の号に掲載された作品です.主人公は大学3年の つぐみ.つぐみはスケッチサークルの部員で,春の日差しの中,木漏れ日から降り注ぐ春の光を浴びながらスケッチをしていました.すると,空耳が波のように,どーん!と彼女をなぎ倒しました.気が付くと,4年の 鷸田 のひざの上に倒れ込んで気絶していたのです.大好きな鷸田先輩の膝まくらに倒れ込んだことに気付いたつぐみは「波にさらわれそうなところでした」と言うと,鷸田は「じゃあ俺がつぐみちゃんを さらっちゃうかな」と言って,愛の告白をするのでした.


 それから3ヶ月後,彼らは同棲を始めて,鷸田が就職してからは三段重箱の「愛情弁当」をつぐみは作るようになっていたのでした.ところが,鷸田は携帯を忘れたりして,つぐみの愛情を疎ましく思い始めだした.鷸田は朝早く飛びだして,夜中に帰ってくる重労働.つぐみも3年のうちは就職戦線にあぶれていたのに,4年になってようやく内定が取れた.つぐみも内定が取れないうちは「いつまでたっても就職のしゅの字も決まんない女のゴハンなんて食べることないよ」と,しょっちゅう鷸田とケンカばかりしていた.しかし,今ではしっかりと「学生主婦」していたりする.

 ところが,鷸田とのすれ違いは続く.7月も半ばになるとつぐみは痩せ,鷸田との会話もかみ合わない日々が続く.そして,ある日,つぐみは街中で,鷸田と彼の教育係の 山田花鶴子 が荷物をどちらが持つのどうので言い争っているのを見掛けた.そう,鷸田は山田先輩=デキる女に心変わりしていたのだ


 つぐみが痩せた理由は,鷸田の「好きな人ができた」という告白が原因で,その「好きな人」が山田先輩だということに,つぐみは気付かされたのである.だけど,つぐみは往生際が悪くなって,あと一ヶ月一緒に暮らそう,学生の時のように,と鷸田に約束させるのです.

 そして,約束の日,鷸田はトラックと共に去って行きました.「あなたと恋をしてよかった」


 次の作品は 「河を渡る きみと歩く」 で,「クッキーボックス」2006年秋号に掲載されました.


 これは谷川さんによると「実話」だそうです.主人公は 吉田果夏 24歳,そして 29歳の 柴田シバト.民話に出てくる「ざしきわらじ」も出てきます.

 長野の高校を出たばかりの果夏は,母親の再婚と同時に家を出て上京し,ファミレスの店員をして生活していました.そこの常連が,マンガのネーム (要するに編集者と打ち合わせるための下書きで,レポート用紙やコピー用紙が使われることが多い) を描いている柴田氏だったのです.ある日,果夏は柴田がネームを切っていた (専門用語で「ネームを描く」≒「ネームを切る」という言い方がある) 所へ,持参したコーヒーをぶちまけてしまったのです.

 これって「過去形」じゃなくて,「現在完了形」のような気がする.


 それが縁となって,果夏は柴田のアパートに転がり込み,当時コミックスが『月あかり』など数冊しか出てなくて貧乏だった柴田を5年間「食べさせる」こととなる.果たして柴田は人気作家となりだし,徹夜で午前中死んでいることも…….

 そんな夏のある日,果夏は荷物をまとめて,柴田の部屋を出ていくのであった.



 ところが,果夏はとんでもないあわてんぼう.駅に着いて,財布を忘れたことに気が付く (無銭飲食で柴田が迎えに行ったことも(笑)).こういう時のために「2千円札」をバッグに隠していたことに気付き,果夏はとりあえず東京駅へ行って,郵便貯金のカードでお金を下ろすことにした.ところが,果夏は自動券売機からおつりを落としてしまう.そこに現われたのが ぽんたろう という5歳くらいの「ざしきわらじ」.ぽんたろうが拾い集めてくれた小銭のおかげで,果夏は無事に東京駅へと.すこしお腹を押さえながら…….

 果夏は東京駅からどこへ行こうかと考え始めます.北海道,青森,秋田,岩手,宮城…….でも,故郷の長野に帰るのはなぁ…….とロングシートの国電に揺られていると,またぽんたろうが現われます.ぽんたろうは「おばあちゃんち!」と言い始めます.果夏は,まぁいいっかと思いながら,郵便貯金を下ろして,長野新幹線の切符を買うのでした.

 果夏と柴田がつきあいだした頃はまだ冬でした.点けっぱなしのストーブのある部屋で,二人は裸でベッドにもぐって,お互いの故郷の話をしはじめます.柴田がメガネをかけてスケッチブックに長野の山々と小川の風景を描くと果夏は上手いねーと喜び,さらに果夏がセーラー服で小川に入って遊んでる絵を付け加えると,果夏は「柴田シバト氏が私を描いてくれるなんて……生きててよかった」と感慨にふけるのだけど,二人とも上半身起きてくしゃみ(笑) 果夏は慌てて自分の部屋に帰るのですけど,柴田が一緒に住もうと言い出し,そのあと果夏は柴田の所へ引っ越して来るのです.

 そして同棲生活が始まったある夏の日,ツバメが食器屋に巣を作りました.だけど,最後に生まれたヒナはエサをもらえなくて,白いぽんぽんのような頭のまま.そして上のきょうだいに押しのけられ,一番みそっかすのヒナは巣から落ちてしまうのです.柴田は果夏を肩車してみそっかすをまた巣に入れるのだけど,翌日みそっかすの「ぽん太郎」は死体で落とされていたのです.巣から落ちた段階で,すでにあちこち骨折していて,身体が弱っていたのでしょう.


 果夏は泣いて泣いて,そして柴田は「ぽん太郎」の墓を作ってあげたのです.果夏はもしかしてあの子は「ぽん太郎」の生まれ変わり?と思ったりしたのですが,きっと気のせいだと現実に戻るのでした.

 実家に帰ると,母親と再婚した父親が歓迎してくれました.果夏の父親は生後すぐに亡くなって,母子家庭でずっと過ごして来たのです.新しい父親は非常に明るい性格の人で,父親を知らない果夏は,これが現実の中年男性なの,とカルチャーショックを受け,どうもそれが上京へと向かわせた原因らしいのです.果夏の精神年齢が幼くて,大人になれない自分を悔しがっている,そのことがあとで判明します.

 果夏が野原を散歩していると,なぜかまた「ぽんたろう」が出て来ます.柴田だったら「人のご縁ってのは フシギなものだねぇ……」「すごいな」「真似できないな」「俺 自信ないや」と言うのだろうな,と果夏は考え込んでしまいます.

 家に帰ると,父親が完全無農薬で作っている野菜で作った料理が待ち受けていました.しかも,父親は「おうッ イエス!!」「まいう〜〜(はぁと)」などと,ノリの良い人.ところが,果夏はビールも飲めなく,料理も食べられなく,吐き気が襲う.つまり……つわりが始まっていたのです.ところが,妊娠を報告するために持ってきたはずの「母子健康手帳」がカバンにない!

 すると,柴田から携帯に電話.財布を忘れてるとか,何で長野の実家なのかと言ってくるけど,果夏は柴田との別れを告げるのです.柴田の負担になりたくないのだと…….そこへまた,ぽんたろうが現われます.ぽんたろうは泣き出して,そして抱き寄せるととてもやわらかいのです.そして,果夏のお腹に赤ん坊がいることを告知します.まさに神さまですね.果夏は「柴田の負担になりたくなくて」一人で赤ん坊を産むために実家へ帰ってきたのでした.

 すると,怒りに狂った柴田が何と,果夏の実家に「母子健康手帳」を持参してやって来るではないか! しかも,道案内をしてくれたのが,やっぱり「ぽんたろう」だと言う.丁寧に葬式をしてくれたツバメのヒナが二人を導いてくれたのでしょうか.


 柴田はまだ売れてなくて,貧乏で自分勝手で,まんがのことしか知らない.自分が子供みたいな柴田が人の親なんて考えられなくて怖い.だけど,果夏とのことは真面目に考えるから,逃げないで一生頑張る,と柴田はプロポーズするのでした.

 実家へ行くと近所の人たちが知らせたらしく,「祝 結婚 初孫」の祝宴が始まっていました.父親は柴田にどんどん飲ませて,正式に息子として迎えたのです.果夏も父親に,今度はおじいちゃんとして宜しく,と初めてまともにあいさつができたのでした.

 そして年月がたち,都合よくも(笑)柴田は売れっ子に.編集者やアシスタントが出入りする中,果夏は赤ん坊の のびる を抱いて,ツバメがまた金物屋に巣を作ったのを見せるのでした.

 最後の 「我が家の食卓」 は「クッキーボックス」2008年秋号に掲載された短篇です.


 早い話が,主婦になっても 「修羅場食」のうどんは必需品,ということです.しかも彼女は 「ゆず唐がらしで真っ赤にした,小えび天ぷらうどん」 でないと気が済まない! さらにお銚子が入るという.酒が入ると,長谷川潤の部屋に転がり込むという生活は独身時代と変わってないようです(笑)

 つるつるのうろんを鼻から出した,鼻くそのついたうろんを……は,あのねのね です.(^^;)

きょうのおまけ 実は「ぶち切れた」鈴木康博さんのファンなんです.(*^^*)
オフコース - A面メドレー Part1 (1970-1979)


オフコース - A面メドレー Part2 (1979-1982)


 そして,最後はぶち切れてしまった,オフコース「Yes−No」


 実は私が通っていた小学校は,このオフコースの「秋の気配」に歌われていた「丘公園」が通学路で,気象台と外人墓地を横に見て通ってました.

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谷川史子 「雪の女王」 (集英社「Cookie」 09年3月号掲載)


 昼間は暴れ回ったので(笑),重たい YouTube の動画が結構,下の方に流れていったものと思われます.と,いうことで,久しぶりに「おんなのこ」モード(笑) Cookie 3月号に掲載された,谷川史子さんの 「雪の女王」 40ページを紹介します.と言っても,このマンガ,黄色い藁半紙に青インクで刷られていたので,目の悪い私には読みにくかったです(泣)

 登場人物は主人公の 千英 と,お隣の幼馴染の 篤志 の高2のカップル.生まれた時からずっと一緒で,幼い頃には「けっこんのやくそく」もした間柄である.

 ある日,大雪が降った日 (長崎は大村出身の谷川さんには雪景色はよっぽど珍しいらしくて,よくマンガのネタになっている) ,例によって短いスカートの千英は母親に毛糸のパンツをスパッツの上に穿いていけと怒られている.家を出ると,そこには毎日のように篤志が待っていて,いきなり千英は雪玉を篤志にぶつける.そして,いきなりの突風でスカートがめくれ,篤志は「ガキはおまえか 毛糸パンツ」と仕返しをするのである.

 そして,千英は幼稚園の時に交わした婚約をずっと心に抱いていて,篤志が大好きなのである.だけど,篤志はどうも兄妹のようなものと勘違いしているらしい.ちょうど一年前の大雪の時,スキー場のバイト先で篤志は 女子大生を彼女にしてしまった! しかも,千英の気持ちも知らないで,千英にそれを打ち明けてしまうのである.てっきり相思相愛と思っていた千英の気持ちはがらがらと崩れていって,それから1年が過ぎようとしている.


 千英の心の中には,氷のかけらが刺さったまま.結局,千英は親友の きょん に心の中を打ち明けることに…….当然,きょんは


と,千英の優柔不断な態度に怒るのです.そりゃ,当たり前だわな (篤志に処女を奪われてないだけましか……).でも,女子大生の女王さまはやっぱり年上の女性.自分の都合で篤志を振り回しています.千英は「篤志がすごいいい奴なのを わかんない人なんかいないよ……」と励ますのですけど,篤志は「千英に告白された」とは思わず,勘違いして千英をまるで男友だちのように無理矢理,映画へ引っ張っていくのです.千英は映画に行くなんて言ってないし,女王さまの代わりに映画につきあえだなんて失礼だと怒るのだけど,ぐっと我慢してしまうのです.

 帰りに寄ったファミレスでも,千英が指差すメニューを聴かされるたび,篤志はそれうまいって女王さまが言ってたと言いだし,千英の篤志に対する愛情は急激に冷えてしまったのです.そして,ファミレスを出た後で篤志が千英に巻いてくれたマフラーも,実は女王さまからもらったものだったと聴かされ,さらに千英と婚約してたなんて個人的なことも女王さまに言ってしまったと告げられ,千英は篤志のデリカシーのなさにかんかんに怒るのです.「おさななじみだと思って なめんじゃない……」と.

 学校で出会っても,千英は篤志から逃げるありさま.「大好きな人が自分のそばで見知らぬ誰かに音を立てて恋をしてゆく」「恋心は私の中にだけ降りつもって それは きっと この雪みたいに降りつもって」……と考えるうち,千英は発熱して玄関で倒れてしまったのでした.「おとなになったら けっこんしよう そしたらずーっといっしょにあそべるよ」という,昔のゆびきりげんまんを夢に見ながら…….

 千英が気付くと,ベッドの横に篤志が座っていました.千英は「うらぎりもの…… ケッコンしようって言ったくせに」と言って泣き出すのです.千英が熱にうなされてパニックになったのに篤志もびっくりして,千英を落ち着かせようと…….


 結局,篤志は千英のひたいにキスして,千英は篤志の両方のほっぺたを思いっきりつねるのでした.そして,千英は「じゃまたね また明日!」と苦笑いをするのでした.千英の初恋はこうして終わりを告げたのです.篤志は永遠に大切な人,だけど千英に彼をつなぎ止めることはできなかったのです.親友のきょんのアドバイスを千英は実行できず,淡い恋心と胸に刺さった氷のかけらは千英を痛めつけたのでした.

 ……個人的にはこのあと,篤志が女子大生に見事に振られて,千英の元へ戻ってくるってな淡い期待を持っているんですけどねぇ.(^^;)陸奥A子の読み過ぎか

雪の女王って言ったらやっぱりこれでしょ!

谷山浩子の幻想図書館・雪の女王/カイの迷宮(誰かが笑っている)


谷山浩子の幻想図書館・雪の女王/カイの迷宮



さらにおまけ 吉田拓郎「今日までそして明日から」

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太刀掛秀子 (メーテルリンク原作) 『青い鳥』 (集英社) 【再々々掲載】


 ついでに,「りぼん」乙女ちっく三人娘の一人の,太刀掛秀子の作品の再掲載です.と言っても,少女マンガではありません.メーテルリンク原作の『青い鳥』(集英社ファンタジーメルヘン,1983,絶版なので古本屋さんで探して下さい)です.

 太刀掛『青い鳥』の特徴は,原作 ("L'oiseau bleu") に忠実だと言うことです.この辺は,他の児童向け絵本とは一線を画しています.小学校低学年では息切れする可能性があります.なお,原作の翻訳は 岩波少年文庫版の 末松氷海子 訳 (2004年新版,ISBN 4-00-114120-5,714円) をお勧めします.現在 7-11 には在庫がない場合は,岩波書店 Webページ にて直販を利用されると良いかも知れません.また,新潮文庫から 堀口大学 訳 でも出ていますけど,こちらは昔の訳なので少々堅く意訳が多いので,私は個人的には直訳の多い前者を好みます.


 モーリス・メーテルリンク Maurice Maeterlinck は1862年8月29日にベルギーのガン つまりフラマン語地域に生まれ,そのまま地元のサント・バルブ高等中学校からガン大学法学部へ進学し,弁護士になります.都市名「ガン」はフランス語だと Gand /ga:/,英語やフラマン語だと Ghent /hent/,オランダ語やドイツ語だと Gent /gent/ になります.少々面倒な話なのですけど,ベルギーはオランダ語≒フラマン語地域と,フランス語地域とに分かれているのです.詳しくは 「ベルギーの地図と言語」 を参照 (講談社「オランダ語辞典」1994,ISBN 4-06-154801-8 も参照のこと).しかし,メーテルリンクは弁護士の仕事はメシのためと割り切り,文学と養蜂にのめり込み,多くの文学作品を生み出したことで,1911年にノーベル文学賞を受賞し,フランスのニースの自宅で1949年5月6日に亡くなりました.


 子供向けの絵本だと,恐らく結末が太刀掛『青い鳥』とはかなり違うと思います.太刀掛『青い鳥』では,青い鳥を持ち帰ったチルチルとミチルが実は今までの冒険が夢だったことに気づきます.ところが,飼っていた青っぽい鳥がきれいな青い鳥に変わっていたのです.チルチルとミチルの隣の家には心を病んだ女の子が住んでいて,チルチルはその女の子に青い鳥をあげたのでした.すると,隣の女の子は元気になって(「光」になって),チルチルにお礼を言いに来たのです.ところが,皆んなに幸せをもたらしたはずの青い鳥は隣の女の子の手から飛んで行ってしまったのでした.

 さて,本当の「青い鳥」は,いったいどこにいるのでしょうか

ちなみに,続編として『チルチルの婚約』(les fiancailles) という本があって,新たな旅で7人の娘の中から選んだ婚約者が,「光」に似た隣の家の娘の成長した姿だったということになっています.

おひるのふりかけ 当然,ザ・タイガース「青い鳥」です(笑)

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太刀掛秀子 『花ぶらんこゆれて……』 (りぼんマスコットコミックス・集英社文庫) [再編集]・再掲載


 これもリクエストが多いので,『花ぶらんこゆれて……』の再掲載です.これは「りぼん」乙女ちっく三人娘の一人の,太刀掛秀子の作品で,「りぼん」78年6月号から80年2月号まで約2年間もの間連載された,大長編ロマンです.コミックスでは以下のように4巻まで出版されました.

     

     


 この作品は後にB6版の集英社ガールズ・コミック(SGC)として2巻にまとめられ,90年に出版されました.まだ古本屋さんを漁れば出てきますので,老眼の方にはこれをお薦めします(笑)

 

                           (裏表紙)
 

                           (裏表紙)

 そして現在では集英社文庫として,2巻にまとめられたものが出ています.老眼にはちょっときつい……(泣) なお,新米獣医を描いた『ポポ先生がんばる!』はついに絶版となりました.

    



 ちょうど広島女学院大・文学部を卒業したばかりの太刀掛がプロのマンガ家になってすぐの作品で,実家の納屋を改造して仕事場にし,実家のある広市内の測量事務所でコピー機を借り,そのまま呉線の電車で広島の町に出て,広電またはバスに乗り換えて現在の広島西飛行場へネーム(原稿にする前の下書き)を朝一番の飛行機へ託し,その夕方には東京の集英社の担当者と電話で打ち合わせ,という生活が始まった……のだそうです.陸奥A子もそうですが,地方に在住したマンガ家というのは,ネームや原稿の送受信でかなり苦労するとか.月刊誌でなくて週刊誌だったら,きっと生活が崩壊していたでしょうね.


 『花ぶらんこゆれて……』の内容へ移ると,最初は二人の若い商社経営者の対立にさかのぼります.フランスJ社 (ジェイと書いてあるけど,フランス語では「ジィ」) の新製品の買い付けに失敗した若い 安積(あさか) 氏は,妻の家を含む全財産を失い,妻と乳飲み子を抱えて失踪します.競争に勝ったのは同様に家業を継いだばかりの 篠原 茂 の株式会社・篠原商事でした.篠原はフランスから連れて帰った妻 ソニア のためにと,売りに出ていた安積の妻の西洋館を買い求めましたが,若いソニアは言葉が通じない日本での生活に疲れ,まだ乳飲み子だったこの物語の主人公の るり を残して,フランスへと帰ってしまったのでした.

 るりはブロンドの髪に青いひとみ.太刀掛秀子は文庫版の「作者あとがき」の中で「この子は金髪で青い目だ,と決めたら遺伝の法則などは頭から無視して」と書いてあるけど,集団遺伝学の知見からすれば,これは早とちりです.篠原氏が若くして継いだ商社でフランスとの貿易をしていたのならば,篠原氏の母親または叔母または祖母あたりにフランス人がいてもおかしくはありません.メンデル主義だと眼の色の遺伝はよく分からないということになります.なぜなら,褐色の眼の対立遺伝子は青色の眼の対立遺伝子に対して優性であるという事実をそのままあてはめれば,世の中にはいずれ青色の眼の人間がいなくなってしまうからです.ところが,メンデルが行った実験はエンドウという植物で,しかも自家受精を用いました.人間で言うと実の兄妹の近親相姦ということになります.つまり,メンデル主義で考えると,褐色の眼の篠原茂と青色の眼のソニアとの間には褐色の眼の子供しか生まれないという固定観念が植え付けられることになりますけど,人間のように複雑な遺伝子が絡み合った動物の場合はそんなに単純なことにはなりません.

 つまり,どうして青い眼の遺伝子が消失しないのか,それは青い眼を祖先に持つ人間集団は異型接合体が青い眼の遺伝子を隠し持っているために,青い眼の対立遺伝子が出てくる実際の頻度は50%のままだということなのです.これを集団遺伝学では 遺伝平衡 (genetic equilibrium) に対立遺伝子がある,と言ってます.だとすれば,篠原家がフランスとの貿易業を家業としているのならば,どこかで青い眼の遺伝子が入っていて,たまたま再び白人で青い眼のブロンドの娘と交尾すれば,最大4分の1の確率で白人型の子供ができると言えます.同じことは『ミルキーウェイ』(集英社文庫)にも言えるんですけどね.(^^;)

     



 生物学の難しい話はおいといて,マンガのストーリーに戻りましょう.るりが3つになった頃,茂の伯母から再婚話が出て来ます.るりより2つ年上の 真幸 (まさき) を連れた 杪 (こずえ) を後妻にという話です.庭で遊んでいたるりは,年上の男の子が庭に入って来て,花ぶらんこの遊び方を教えてもらいます.この男の子が,あとでるりの心の支えになる 安積惣一郎 だと知るのは,後のことになります.

 杪が真幸を伴って後妻に来た半年後,るりの幼稚園入園と真幸の小学校入学と同時に,杪の妊娠が分かります.家族は生まれてくる赤ん坊に期待を込めるのですけど,るりは反対に幼稚園で自分の姿の異様さに驚きます.茂はるりに,るりが素直な良い子で明るくて優しければ,周りはきっとるりのことを好きになってくれると諭します.その通り,るりは差別に負けず,ゆがんだ性格にならずに育っていきます.ところが,杪が茂の部屋でソニアの写真を見つけた時,杪 自身が るり へ ソニア の面影を浮かべて,嫉妬の念に押しつぶされて行きます.

 秋になって生まれた は,やはり黒い髪に黒い眼.るりはさらに異邦人になった孤独を感じて行きます.小学校に入っても続く人種差別にるりは負けそうになりますが,兄の真幸が守ることで,何とか心の平安を保っていきます.そうしたある日,庭の花ぶらんこで遊んでいた唯が苦しみ出し,てっきりるりが唯を落としたものと誤解した杪は半狂乱に…….唯が生まれつきの心臓病だと分かったのは,その後のことでした.るりが庭で泣いていると,喪服を着た惣一郎が花ぶらんこに乗っていて,彼の母親が死んだことを告げます.「花ぶらんこを揺らすと,散った花びらの分だけ,心が軽くなるよ」というメッセージを残して,惣一郎はるりに別れを告げます.

 このあとの篠原家は病気の唯を中心に回って行きます.唯の病室に泊まりがけの杪に,るりは杪の荷物を届けたりして,杪はるりに辛く当たったことを反省するのですが,なかなか素直になれません.目の前の唯のことだけで頭がいっぱいだったからです.るりが4年,真幸が6年の時,ようやく唯が退院して帰宅します.翌年,真幸が中学に入り,5年になったるりは,小学校に入学した唯を連れて登校して行きます.

 唯の心臓発作はしばらく落ち着き,唯は無事3年生に進級し,るりは中1・真幸は中3になります.真幸もるりも大柄なため,非常に目立つ兄妹として中学でからかわれます.真幸には 相沢冴子 というGFがいたからです.ところが,ある雨の日,唯が公園で倒れているのをるりが発見します.唯は友達と合わせただけなのに,どうして自分だけ走れないのか,という不条理に泣き出します.結局,唯は入院し,小3を2回することになってしまいます.

 杪の性格はさらにゆがんでしまい,しばしばるりに当たり散らすように…….真幸はGFの冴子と一緒に,(広島の)S学園 (実際の修道高校は確か男子校のはず.広島大附属福山高校なら共学ですけど) を受験して寮生活をしたいと言い出します.杪のヒステリーから,真幸は逃げ出したかったというのが実際の本音.真幸は家を出て行き,中2になったるりは勉強にも手がつかず,成績が急落.幼稚園からの親友の 杏 (きょう) は「兄貴がいないと何もできないのか,きみは!!」と雷を落とします.その晩,唯が退院して帰って来ます.ところが,留年した唯は毎日早退・ずる休みを続けます.そんな唯をるりは無理矢理に学校へ引っ張って行き,皆んなと一緒でないのはるりも同じで,周りに負けてはいけない,と諭すのです.

 夏休みになって真幸が高校から帰って来て,偶然売りつけられた同人誌に惣一郎の書いた「花ぶらんこの魔法」という詩が載っているのを,るりは発見します.その優しさに心を打たれたるりは成績も元に戻り,杏と一緒に県立広津高校へ入学します (広高校に津をつけただけやん).高3になった真幸は,愛情が実は妹のるりに注がれていることを見抜かれ,冴子に振られ,受験勉強へ突入して行きます.


 K大学 (H大学,つまり広大のことだな.もっとも,電車で2時間という設定ですから,篠原家や篠原商事は福山にある可能性も) に合格した真幸は下宿生活を希望し,実家に帰ろうとはしません.唯は本当なら制服を着て中学に上がっているはずなのに,未だ小6の教科書を枕元に置いて熱を出し休みがちの自分に再びいじけてしまいます.そんな時,杪が玄関へ貼り出した家庭教師募集の広告に,K大工学部1年の 安積惣一郎 が「あづみ」と名乗ってやって来ます.茂は「安積」という苗字を見て,安積の妻の葬式の時,安積が茂に切りつけた事件を思い出しますが,まさか安積の息子だとは思いもせず,唯の家庭教師として雇うことにします (宿題に追われる工学部の学生にそんなヒマがあるのだろうか……).

 唯は週に2回の惣一郎の家庭教師を楽しみにし,惣一郎を恋するようになります.幼い唯の心を傷つけてはならないと,るりは次第に惣一郎が来る日には部活に精を出すことにします.しかし,惣一郎が唯の入院した病院へ行くと,惣一郎がるりと話すのに嫉妬を覚え,唯は非常に悲しむのです.仲の良かった入院仲間の少年にも先立たれ,唯は自分の運命を子供ながらに悟るようになって行きます.

 そうしたある日,真幸は日曜にるりを着飾らせ,花ぶらんこで遊ばせます.写真部の惣一郎へ隠し撮りをさせるためでした.真幸は惣一郎ならるりを幸せにしてやるだろうと単純に考えていたのです.ところが大学祭でるりと花ぶらんこの写真がパネルになって展示されているのを見てるりはショックを受け,さらに外出許可をもらって大学祭を見に来た唯もこの写真を見てしまったのです.この事件の時,惣一郎と安積氏が駐車場で密談をしていたのを真幸が目撃し,真幸は惣一郎の周辺を調査し始めます.そうして分かったことが,最初に書いた篠原茂と安積氏との因縁であり,惣一郎がわざと苗字の読み方を変えた意味を悟ったのです.

 その精神的ショックから唯の病状はさらに悪化し,医者からも見放され,唯は帰宅します.そして姉妹が共に暮らすうちに,杪がるりに対して非常に辛く当たっていることに唯は気づき,杪へ当たるように…….そんな冬の雪の積もったある日,唯とるりは庭の花ぶらんこへ散歩に出ます. 唯は最後の力を振り絞るように,惣一郎をるりに返すと言い,花ぶらんこに乗ってこぎだします.ところが,その運動が唯の心臓発作を引き起こし,さらに唯と一緒に倒れてきた花ぶらんこのついた太い枝がるりの後頭部を直撃します.病院へ向かう車の中で,唯は「ありがとう」の言葉を残し,惣一郎の腕の中で冷たくなって行きました.

 頭を打って入院したるりは次第に日常生活に支障が出だし,唯の葬儀の後,いきなり失明してしまいます.るりは脳内出血を起こして血の塊が視神経を圧迫していたのです.脳外科手術をしても,るりの失明は治りません.これは精神的な理由ではないかとの医師の診断に,杪は今までるりに辛く当たってきた自分を責めます. るりが退院した日,それまで唯が使っていた一階の部屋を,杪はるりに提供することにしました.親子関係がようやく修復されたのです.

 反対に,惣一郎は今まで唯やるりの心をもて遊んでいた自分を責め,フランスへ留学することに決めました (工学部の2年のくせに,そんなヒマがあるのか?).惣一郎は空港からるりへ手紙を出すのですが,時すでに遅し,るりは失明していて,その手紙を真幸が見てしまうのでした.惣一郎は単純に自分が生まれた家で過ごしたかっただけだったのです.そんな中,真幸はついに,るりへの愛を打ち明けてしまうのでした.当然,杪は兄妹で結婚なんてとんでもないと怒り狂います.


 フランス留学が終わりに近づいた頃,惣一郎の前に リュティシア・クレモン という唯と同い年の女の子が現れます.彼女があまりにもるりとそっくりなので,惣一郎は驚きを隠せません.結局,彼女に気に入られた惣一郎は,リューの祖父の経営するホテルで夏休みを過ごすことにしました.ところが,惣一郎の心にはるりの面影しかないことに気づいたリューは初恋が砕け散ったことでふてくされてしまうのでした.夏休みも含めて結局半年もフランスへ居た惣一郎は帰国の準備をします.そこへやって来たリューが,以前るりを隠し撮りした写真を見つけて,祖父にこれが惣一郎の好きな女性だと教えに行きます.ところが,るりの写真は,リューの母親であるソニアと瓜二つ,しかも写真の裏には "Shinohara" との文字……,つまり,るりとリューは姉妹だということが分かったのです.

 るりは運命を素直に受け入れ,盲学校へ通い始めます.帰国した惣一郎は横断歩道でるりを見かけますが,彼女が惣一郎に気づかないことにショックを受けます.たまたま点字を打つための点筆(針)を落としたため,惣一郎は唖者としてるりに近づき,手のひらの会話で点筆を返します.

 ところが真幸は早まって,るりを海に連れ出し,駆け落ちしようとしてしまいます.杪は精神のバランスを完全に狂わせてしまいました.そしてある日,茂はるりにソニアとの出会いとその後,杪と出会って幸せだったという本音を告げるのですが,それを盗み聞きしてた杪はガスに火がついてないことに気づかず,ガス爆発で西洋館は炎に包まれてしまいます.偶然,二階に上がっていた (この理由が未だに不明……) るりは,炎の中で半狂乱となります.そこへ都合の良いことに真幸と惣一郎が車で駆けつけ,二人はるりの救出へ向かったのでした.

 ガスの近くにいて大やけどをした杪は意識不明,茂も大やけどを負います.ところが,火事のショックで,るりは目が見えるようになったのです.それも,目の前にいたのは,自らもやけどを負って,るりの布団の上で寝ていた惣一郎だった! 何というご都合主義マンガでしょう(笑)

 その時,惣一郎が案内した,フランスのクレモン氏がリューを伴って病院へ見舞いに来ます.茂は過去の非礼を詫びますが,反対にクレモン氏はるりを育ててくれたことに礼を言うのでした.リューの元気さに,るりはリューと同い年だった唯のことを思い出してしまいます.やけどが軽く済み,目も見えるようになったるりはクレモン氏が滞在するホテルへ一緒に泊まることになり,リューはるりと一緒に寝ようと思って,惣一郎に簡単な日本語を教えてもらいます.リューはフランス語で惣一郎をるりにあげると寝言を言いながら寝るのですけど,るりには分からずじまい.

 クレモン氏とリューが去った後,追いかけるように真幸も家業の商社を継ぐため,フランスへと旅立ちます.そして,たまたま燃え残った唯の遺品の編み物が,杪からるりに手渡されます.最後に,惣一郎が捨てられていた花ぶらんこの花の枝や根を栽培してできた花たばを,るりに手渡してハッピーエンドとなります.花たばから振り落ちる花びらに囲まれて,るりはようやく訪れた幸せを満喫するのでした.

お昼のおまけ 内田裕也「コミック雑誌なんかいらない」 懐メロばっかり(笑)

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柊あおい 『この街で君に』 (マーガレット・コミックス)[再編集]・再掲載


 体調が優れないので,また2年半前の少女マンガを引っ張り出してきました.

 また 柊あおい か……なんて思われないで下さい.この『この街で君に』というマンガは2部構成で同じストーリーになってるんですけど;前半の『この街で君に』が男性から見た視線,後半の『この街であなたに』が女性から見た視線になっているという,面白いマンガです.しかもこれは半分実話らしくて,実際に柊あおいの知り合いに独身の郵便局員がいて,まったく女性に出逢うチャンスがないまま中年になってしまった……という.

2002年8月に出たマンガなので,気に入ったらブックオフなんかで探されて下さい.<新しいから

 まず前半の『この街で君に』から,話を始めましょう.このマンガは「ザ・マーガレット」2000年12月号に掲載されました.郵便局の配達係の 宮本広彬 は 26歳.5月の蒸し暑くなってきた日も,彼は真面目に郵便物を配り続けます.当然,女性との出逢いなんかない.たまたま年末にバイトで入って来た高校生の女の子に告白されても,話題がまったく合わなくて,結局ミツグ君で終わってしまうのでした.

 ある日,瀬川家に配達へ行くと,どう見ても中学生か高校生にしか見えない,機嫌悪そうな女の子が出てきます.書留なので印鑑お願いしますと宮本が言っても,ぶすーっ.さらに宮本が「明日は学校行けるといいね」と言うと,女の子はいきなりドアを閉めました.宮本は最近の中高生は怖い……と思いながら,次の配達へ向かうのでした.

 配達が終わって家に帰ると,姉が甥っ子2人を連れて帰って来てました.旦那が出張なのでしばらく実家にいるとのこと.話題はやっぱり,宮本に彼女ができないこと.高校生のミツグ君になってしまった話を蒸し返され,気分転換に甥っ子たちと遊ぶしかないのでした.

 次の日,配達が終わった後,同じ独身男3人で飲もうという話になります.いつもの飲み屋で飲んでいると,スーツ姿の女の子がカウンターで一人で飲んでいるのを宮本は見掛けました.あれじゃ絡んでくれと言ってるようなものだと思ってたら,酔っぱらいが早速女の子の肩に手をかけ,宮本は彼女に「中山さん,久しぶりだなぁ」と声をかけ,女の子も「木村くん,せっかくだから そちらに行くわ」と返して,芝居は成立.彼女は宮本に「あたしひとりで飲んでたかったの」と言い,お銚子3本を持って勘定を済ませるのです.

 ところが飲み慣れない日本酒を飲んだせいで,彼女はふらふら.局員の他の二人もチャンスだと応援するので,宮本は女の子を送って帰ることにしたのです.ところが,彼女は「さっきの郵便屋さん」と,しっかり宮本の顔を覚えていたのです.何の事か分からない宮本の前で,彼女は髪留めを取り,ストレートヘアに.それでようやく瀬川家のあの不機嫌な女の子だと,鈍感な宮本も気が付いたのです.宮本は中山美穂が好き,瀬川絢花 は木村拓哉が好き,だからそういう仮名を使ってしまったのでした.

 ところが,てっきり中高生と勘違いしてた宮本があんな所で酒飲むなと注意し始めたら,「22よ あたし これでも 高校生だと 思ったんでしょ どーせ!」と怒りだし,先日の「明日は学校行けるといいね」という宮本の台詞を蒸し返すのでした.そうしてケンカするうち,瀬川はいきなり気分が悪くなり,宮本におぶってもらうのですけど,彼の頭の上にゲロを吐いてしまうのでした.それも何回も…….宮本は彼女を公園で降ろして,頭を洗うはめに.仕方なくタクシーで送ることになったのでした.宮本は自己嫌悪に陥って「助けなきゃよかった」「追いかけなきゃよかった」「意を決して行動すりゃこれだ」「出会った時から恨まれてるし!」と思うのです.

 翌日の朝は公園で頭を洗ったせいで鼻かぜをひいて最悪の気分.飲み友達にはあの娘はどうなった,と言われるけど,「あの娘の話はしないでくれっ」.当分,瀬川家に書留の類がないことを宮本は祈って,いつものように配達に出掛けるのでした.ところが,夜になって勤務が終わると,何とあの女の子,瀬川がスーツ姿で郵便局の裏口で待っていたのです.仕方がないので宮本は彼女を喫茶店に誘うのでした.

 瀬川は宮本に何回も謝罪します.しかし宮本は「しょーがないじゃん? 過ぎちゃった事なんだし」と許してしまいます.でも,ホンネはもう彼女には関わりたくなかったから…….宮本のあっけらかんとした態度に,「お詫びに出来る事 言って下さい」とまで言い,瀬川は身の上話をし始めます.就職試験に落ち続けて,この春に大学を出たんだけど,結局どこも採用してくれなくて,ヤケ酒を飲んでた……,その真摯な態度に宮本は深く同情してしまうのでした.改めてよく見るとかわいい子だし,「がんばって 早く就職出来るといいね」と声をかけ,当然お茶代も宮本が持つのでした.

 家に帰って新聞を読んでいると,目の前に父親の仏壇が.それを見ていると,彼女が「お詫びに出来る事 言って下さい」と言ったことに気が付き,「つきあってくれ」って言えば良かったんだと馬鹿げたことを言い出します.二人ともスキだらけの,鈍感の塊だったんですね.

 後日,瀬川が宮本を道端で捕まえます.季節はもう初夏.瀬川は未だに就職面接に落ち続けています.希望者が多いところばかりを狙っているために落ち続けているということを,彼女はまったく自覚していなかったのです.宮本は「オレが担当だったら すぐ採っちゃうよ 君みたいな子」となぐさめるのですけど,もうちょっと気の利いたことが言えないのかと悩むのでした.

 その後,偶然「胡桃原生活社」というタウン誌の編集部へ宮本が配達記録郵便を持って行った時,社長兼編集長が雑用係が一人辞めて困ってるという愚痴を言い始めます.これはチャンスだと宮本は思い,瀬川の宣伝をしまくるのです.ところが,社長から名刺を奪い取ったものの,オクテの宮本はまだ,瀬川の名前を知らなかったのでした(笑) 慌てて瀬川家へバイクを飛ばすと,何とお父さんが出てきました.しかも娘は二人! 偶然とは恐ろしいもので,お父さんが「郵政省も受けたんですか絢花は」と誤解してる時に,運良く絢花が帰ってきたのです.

 タウン誌の雑用係の話を出すと,もう絢花は大喜び.すぐに履歴書持って行きます,「吉は急げ」です (善は急げ……だから面接で落ちるんだと宮本の脳裡に……) と叫んで,もらった名刺の「胡桃原生活社」へ電話するのでした.

 翌日の午前中「胡桃原生活社」へ郵便を届けに行くと,宮本はここは昼からでないと人がいないんだということを思い出します.午後に配達に来ようとすると,社長が現れました.今から面接をするとのこと.社長は「あの娘は妹? それとも親戚? ああ じゃあ 彼女か」と言い出すのですけど,宮本は乗せられて「……だったら いいんですけどね」と言ってしまうのでした.これで彼女も笑顔になれると思うと,押すなら今しかない!などと考えてしまうのでした.

 絢花が就職して2日目,宮本が「結局 ここまでの人間っていうか」と落ち込んでいると,また絢花が郵便局の前で待っていました.彼女は文具店へ買物に出た帰りだったのです.採用してもらえましたという報告に来たのに,宮本はすでに昼間配達に来た時,編集部に絢花がいたことを知っていたのでした.そして絢花は「最初のお給料もらえたら 郵便屋さんに何かプレゼントしますね!」と言うのです.宮本は焦らずに,こうして彼女を見守って行こう,少しずつ近付いて行こう,今度会ったらとりあえず映画にでも誘ってみようかと思うのでした.




 それでは後半の『この街であなたに』の番です.このマンガは「ザ・マーガレット」2001年5月号に掲載されました.マスコミの華やかさを他所に,どん底の不景気が続いていた時代です.

 大学時代につきあっていた絢花の彼氏は「就職なんて決まらなくたって問題ないよ」「落ち着く頃にはきっとさ 永久就職ってのも考えられるんじゃない?」なんて調子の良いことを言って,勝手に東京で就職して行きました.ところが5月,東京の大学から (恐らく栃木に) 帰って来たのに,永久就職どころか連絡のひとつもない! 絢花はしょっちゅう高校生に間違えられる自分に嫌気がさしていたのです.

 そうして落ち込んでいたある日,郵便配達の宮本が書留を持って現れました.宮本はひたすら「営業スマイル」.郵政公社になる前で,「民営化」のため局員がみな愛想良く接するように研修を受けていた時期でもあります.絢花は「あー この人も試験受かって こういう仕事してんのね」「ニコニコ笑えていいわね」と最悪の顔をして印鑑を差し出すのでした.

 ところが高校生と間違えた宮本は「明日は学校行けるといいね」(笑) 無理もない.絢花はすっぴんにボサボサのストレートヘア,トレーナーにギャザースカートという格好で,しかも背格好が小さいもんだから,確かに病気の高校生と間違えられても仕方ないなと納得するのでした.しかし,両親も姉も働いているのに,どうして自分だけ職に就けないのかと悩む絢花なのでした.

 ある日の面接ではレンタル屋を受けたのですけど,一次面接の段階ではねられてしまいます.東京へ行った彼氏からもらったイヤリングをして,少しでも心をなぐさめる絢花なのでした.傷心の絢花は電車 (恐らく東北新幹線) に乗って東京の彼のマンションへ行きます.かつて彼と朝まで過ごした,押しかけ女房してた思い出のマンション.ところが夕方,そこへ居合わせたのは,スーパーの食材を持ち,合鍵を持った新しい恋人だったのです.

 絢花は駅のゴミ箱にイヤリングを捨て,自暴自棄になります.「あたしなんか誰からも必要とされてないんだ」……時間はもう8時半になろうとしてました (恐らく,東北新幹線で故郷の街へ帰ってきたのでしょう).居酒屋に入った絢花は焼き鳥をつまみに日本酒を飲み始めます.醜態見られて困る人もいないしぃー,と完全に出来上がり (空腹で日本酒を飲むと必ず悪酔いします.もともと和食というのは日本酒のつまみとして発達したものだしーぃ).そこへ酔っぱらいがナンパしに来ましたが,助けに来たのが「忘れもしない郵便屋」(笑) 今日は他人の事まで考えてる余裕ない,一人で飲み屋入ってからまれてナンパされて,ただミジメなだけ…….飲み過ぎた絢花はふらふらし始めました.そこへ宮本が現れ,例の如く高校生と間違えるのですけど,絢花にしてみれば「こんな時間に居酒屋で酒飲んでりゃ 相応の年齢だって気付くわよ バカ!!」(笑)

 宮本は弥生町まで送ってくよと言って,絢花を背中におぶさるのですけど,彼女のゲロをもろに食らってしまうのでした(笑) 宮本は「しゃべるな!」と一喝,公園で絢花を下ろし,頭を洗いに行くのでした.絢花は「助けてくれた恩人なのに!!」「その上送ってまでくれてるのに!!!」「消えてなくなりたいー!!!」と落ち込むのでした.

 嫌な話はさらに続きます.翌日,二日酔いで寝ていると,携帯電話に東京の彼氏から連絡.絢花は「新しい彼女作るなら 古い関係はきれいに片づけてからの方が気持ちいいと思うけどなあ」とイヤミを言って,電話をぶっちぎるのです.絢花の乱れ方を心配した母親は仕事を休んで,失恋でもした?と聞くのです.でも,そんな事より,どこにも就職できないということは,社会から必要とされてない事だと,絢花はいじけるのです.

 そこで初めて,絢花は昨晩の醜態を思い出したのでした.夕方,郵便局へ行き,宮本が出てくるのをひたすら待ち続けます.ところが喫茶店で謝り続ける絢花に,宮本は簡単に許してしまうのです.絢花は「優しいんだな,この人は」「もっともっと ものすごく怒ってると思ったのに」「何言われたって しかたない事しちゃったのに」と自己嫌悪に陥りまくるのです.でも,宮本の本心を絢花は知りません.ヤケ酒の原因も宮本に話している就職試験に落ち続けてることだけでなく,昨日の失恋もあったという事はさすがに絢花も口に出せません.宮本は「そうやって化粧して それなりのかっこうしてれば 年相応だよ」と気遣ってくれます.

 絢花が宮本にできるお詫びは,やはり宮本の励ましに応えることだけ.でも,故郷の街でも就職試験に落ち続ける絢花は落ち込みモード.そんな絢花を道端で出会った宮本は励ますのですけど,絢花は逆に「励ますのうまいなあ」といじけてしまうのでした.

 そして履歴書をポストに入れて来た絢花が見たのは,玄関でお父さんと話している宮本の姿でした.この時まで,お互いに名前を知らなかったというので,お互いに笑ってしまうのでした.宮本は「胡桃原生活社」のタウン誌の雑用係の就職話を持って来たのです.さすがに競争相手なしというと,絢花は喜んでしまいます.それもそのはず,故郷の街のタウン誌ですから,社員は社長兼編集長と記者兼カメラマンの二人だけなんです.

 でも,宮本からもらった名刺へ電話をかけようとしても,今までの嫌な思い出が頭をよぎり,絢花は「そんなに上手く 行くはずないじゃない」「あれだけ受けて全滅だったのに すんなり通るハズなんかない」と思ってしまうのでした.そんな時に母親が励ましてくれた言葉「絢花だけを必要としている所だって絶対あるわ 巡り逢えてないだけ」が浮かんで来て,絢花は頑張ろうと…….

 翌日,スーツに身を固めた絢花は「胡桃原生活社」の事務所を訪ね,「郵便局の宮本さんの紹介で履歴書持って参りました 瀬川絢花と申します」と切り出したのです.岸本社長は「ウチは見ての通り ふたりしかいない頼りない所だけど それでもいいの?」と言います.今まで大企業ばかりにしか目を向けてこなかった絢花はここで眼が開けました.大卒だからって大きいの小さいの言ってる方がおかしいんだ,ということに初めて絢花は気付いたのです.

 一通り履歴書に眼を通した社長は,早速帳簿づけの仕事を頼みます.今まで実務経験のない絢花にとっては実技試験か,と驚いてしまいますが,絢花は正直に「分かりません」と答えます.社長はていねいに仕事の要領を教えます.学校出たばかりだから分かるわけないよね,と人格者の良い人に巡り会えたのです.でも,たまっていた帳簿づけはとても終わりそうもありません.記者がメシどうしますと言い出して,8時になったし初日だから今日は帰って良いよと絢花に社長が告げます.絢花は「それって採用していただけるって事でしょうか?」と半信半疑.社長は「だって君 もう働いてるじゃない」と,あっけらかんと告げます.絢花には故郷の街が一番似合っていたことが漸く分かったのでした.

 絢花はその晩,気付かない内に就職してた,一人前の社会人 (本当は「会社人」と言うべきでしょうけど) になれたんだという幸せで胸がいっぱいでした.郵便屋さんがいなかったら,失恋で打ちのめされたままだった,どうやってお礼したら良いんだろうと思いながら眠りにつくのでした.

 翌日11時の定刻に出勤した絢花は社長から弁当の買い出しを頼まれます.いつもこれでは身体に悪いからお弁当を作って来ようと思うのでした.そして,郵便局のバイクの音を聞く度,宮本ではないかと振り向いてしまう絢花なのです.あれだけ世話になっていたのに,名前しか知らない,電話番号も住所も知らない,勤務時間はバラバラ,だけどとても良い人.

 夕方,社長から文房具屋で備品を買ってきてくれと頼まれます.社長は「今は女の子でもいろんな子がいるからねえ」「君みたいに素直でまっすぐな子は ほんとありがたいよ」と絢花をほめますけど,絢花は「あたしそんないい子じゃありません!!」と言って真っ赤になります.丁度そこへ記者が帰ってきて,まさか編集長セクハラ?と冗談を吹っ掛けます.こういう雰囲気がタウン誌の内容にも反映されるのでしょうね.

 そして6時半,文房具屋で備品を買い込んだ絢花は郵便局の裏手で宮本を待ちます.未だに「郵便屋さん」としか呼び掛けられない絢花だけど,宮本はしっかり「胡桃原生活社」で絢花が働いていたことを知っていたのです.絢花は「採用してもらえました」が言いたかったのに,先回りされていて驚きました.絢花はプレゼントは何がいいかなと思いつつ,新しい恋が芽生えてきたことを自覚するのでした.将来,宮本と結ばれても,主婦としてタウン誌の内容を盛り立てていくことは間違いありません.

このマンガが描かれた頃は(今ほどでもないけど)どん底の不景気で,小泉氏がプーチン大統領との会談を潰したおかげでロシアからの原油が入らなくなり,ますます不安定な中東原油に頼らざるを得なくなった時期でした.そして昨年は恐怖の「2006年組」.大学1年生と大学4年生の学力が思いっきり落っこちた年です.マスコミは景気が持ち直したと言うけど,それはあくまで関東地方と東海地方だけの話.他の地方は完全に取り残されてしまっています.昨年の大学4年生は就職が楽勝だったと喜んでいるようですけど,実態は違います.研修期間内に「役立たず」のレッテルが貼られた若者は確実にクビを切られ (労働基準法の範囲内),大量の大卒失業者が出るものと私は予測しています.さて,郵便局も「民営化」された今,預金の引き出しにも融通が利かなくなった状況で,このようなラブロマンスが生まれる環境はできるのでしょうか?

今日のおまけ 吉田拓郎の名曲!The Mops の「たどりついたらいつも雨ふり」

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柊あおい 『耳をすませば』 その2 (フェアベル版,集英社文庫など) [再編集]・再掲載


 それでは柊あおいさんの『耳をすませば』の続きです.上に掲げた絵は『耳をすませば --幸せな時間--』の文庫版のポストカードです.

 秋の日,雫は早速,感動した音や光や思いを言葉にして,消えないように書き残そうと,創作活動に熱中し始めます.まだ当時は縦書きの原稿用紙が主流だったので,ノートに書く内容も縦書き…….

ちなみに原稿用紙というのは,もともと活字工員のために作られたものです.活版印刷では原則的に等幅フォントですので,字数を数えたり誤植がないかを確かめるのに便利だったためです.詳しくはもう絶版ですけど,長谷川鑛平『本と校正』(1965, 中公新書) を図書館で探してお読み下さい.



「それは秋の風が街のほこりを空へと舞いあげる気持ちのいい午後……」 で始まる雫の童話.もちろん,地球屋で買った磁石や世界地図や古いランプに猫のバロンを連れて…….中間試験が近いというのに,授業中も雫はノートにひたすら創作をし続けます.「これはなくてはならない大事なもの 行方の知れない彼女を映す心の鏡」とバロンが言い,こうして少女と猫男爵の旅がはじまったのです. 物語のヒントは,先日もう一人の雫がバロンを連れて出て行った,あの夢でした.

 創作を始めたは良いものの,雫はストーリーにつまづいて,図書室で本を調べまくります.だけど,結局頼る所は放課後の地球屋.祖父がいると思ったら,店番をしてたのは何と聖司でした.聖司も実は早く仕上げたい絵があって,掃除をさぼって帰ってきたのでした.当然,雫は「見たいっ 見せておねがいっ」と頼み込みます.ホレた女の頼み事に負けたと,聖司は屋根裏部屋へと案内します.そこには長い髪に青い瞳の女性の周りを金魚が泳いでいる絵が…….誰かに似てるな……モデルがいるのかなと尋ねてみても,聖司は「ちょっと知ってる人」とごまかします.雫も実は創作に詰まってしまって,地球屋に来てみたと告白します.この絵で感動した,という言葉も一緒に…….雫の物語が完成したら,さし絵を描いてくれと頼むと,聖司は二つ返事で了解しました.二人の心はもうここまで近くなっていたのです.

 帰り道,雫の頭の中には新しい物語がどんどん浮かんで行きます.それらを公園のベンチで書き留めていると,木のかげに航司と姉の汐が…….そして二人のキスシーンを雫はしっかりと見てしまったのでした.雫は初めてのキスシーンにどきどき.そして,聖司の絵が姉の汐に似ていることに気が付いてしまったのです.雫は家に帰っても,心臓がどきどき,頭の中がぐちゃぐちゃになっています.そのまま寝入ってしまった雫の夢の中でも,聖司が出てきて,草原の中で聖司がキスを迫ってくる……(笑) 翌日はもろに遅刻.頭の中は聖司とのキスのことで耳まで真っ赤になったのです.まさに雫の初恋の始まりだったのですね.雫は廊下で聖司と出会っても職員室へ飛び込むほどで,不自然なほどに「恋愛至上主義少女マンガ」へと話がねじまげられてしまったのです.

 雫は夕子に一部始終を相談します.夕子は聖司がいい人だと分かったのなら,それは彼の良さが見えなかっただけだと諭します.夕子も杉村が好きだと告白することにしたんだと言い出します.ふられてもいい,当たってくだけろで自分に正直になろうと…….でも,聖司は姉の汐が好きなのかも知れない……と,前日の絵のことを気にしてばかりいるのでした.帰り道に聖司に出会っても,雫は真っ赤になって聖司の顔がまともに見られなくて逃げてしまうのです.

 雫は徹夜で考え事をしていました.今までの自分の行動を思い起して,自己嫌悪に陥っていたのです.居眠りから覚めると,4時半.ところが,何と窓の下には聖司がいるではありませんか! 雫は驚いて外へ出てみると,聖司が「見せたいものがある」と言って,自転車の荷台に乗れと言います.運命を感じた雫は地球屋の近くまで聖司の自転車に乗って丘を登っていきます.そこには高台と公園が…….雫は真っ赤になりながら,あの絵のモデルは誰?と尋ねると,あれはおまえだと聖司が答えます (要するに聖司は雫に女らしく髪を伸ばせと言いたいんだろうな).その瞬間,朝日がさんさん,おはようさんと昇って来るのでした.聖司はこの朝日を雫に見せたかったと言うと,雫は思いがあふれて止まらなくなりました.聖司は男らしく「君が好きだ」と告白します.そして,朝焼けの中で,お互いに図書館の本でお互いの名前を知ったことを告白したのです.誤解が解けて,二人は見事にカップルになれたのです.

 家に送ってもらうと,姉の汐に寝坊助が……と不思議がられるのですけど,雫も「おねーちゃん この間天沢さんとデートしてたでしょ ふふふ」と攻撃を交わすのでした(笑) そして,雫のノートには聖司が活躍することに…….

 後日,地球屋の祖父の知り合いが飛行船に乗せてくれるという話が入り,航司と汐,聖司と雫の兄弟カップルはルナとムーンの二匹の黒猫を連れて,野原に集合するのでした.雫の机には「耳をすませば」と題名がつけられた文集が綴じられ,なぜかそこには猫の男爵が笑って座っているのでした.

……と言うわけで,最後は無理矢理,恋愛物語にねじ曲げられたあげく,わずか4回で連載中止へと追い込まれてしまった少女マンガです.まさかこれが映画化されて大ヒットするなんて,当時の私も考えてはいませんでした.詳しくは文庫版に後日談が書いてあるのですけど,このマンガを発掘したのが例の「宮崎駿」.ぜひアニメ化したいとの話に,当時育児休暇中の柊あおいはサイン用色紙を持って,赤ん坊連れでスタジオジブリへ(笑)

 映画版は私は見ていないのですけど,最後に聖司が医者ではなくヴァイオリン職人になると言ってイタリアへ修業に出ると言い,雫と婚約して別れる……そんなラストシーンだったと微かに記憶しています.



 それでは,映画の大ヒットのおかげで,6年後に描かれた続編の『耳をすませば --幸せな時間--』を取り上げることにしましょう.

 下に掲げた表紙は続編の『耳をすませば --幸せな時間--』のフェアベル版での表紙です.


 雫と聖司が恋人になって2年が過ぎました.時は中3の夏休み,梅雨の明けきらない日々,雫は相も変わらず創作ノートに小説を書き続けていました.結局,保健室仲間の女友だちたちにつきあう形で,彼女らの冷房の効いたマンションで受験勉強をするはめに.相も変わらずショートカットで色気のない雫は「一番オクテだとおもっていたのにカレシ付きで」とからかわれます.そして,受験勉強のために雫は「本断ち」を宣言するのですが……,それはあっさりと破られてしまったのでした.しかも,雫は聖司がどこの高校を受けるのか興味がないということを知って,女友だちたちは驚きます.医者を継ぐとか言ってたけど,そんなことは雫が決めることじゃないし……と雫はクールに答えると,さらに驚きの輪.親友の原田夕子は「そんなこと言ってると 天沢君 どっか 遠ーーい所に行っちゃうぞーーっ」と脅します.

 勉強会の帰り道,強い風が吹くと,鳥の羽根が一緒に落ちてきました.きれいな羽根だったので,雫はそれを拾って本に挟みました.当然,行き先は県立図書館.昔の貸し出しカードはすでに消え,無機質なバーコードカードでの貸し出し.ところが,後ろにいたのは司書の父親の靖也(笑) 「お前本断ちするって言わなかったか」 雫が幾ら言い訳しても,靖也は諦めて去っていくのであった.

 拾った鳥の羽根は黒から青,青から白へのグラデーション.雫はとりあえず,この羽根を創作ノートのしおりにすることに決めました.そして,借りてきた『猫の図書館』という本に耽溺し始めたのですが…….

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 図書館の帰りに「地球屋」へ寄ってみると,店番の聖司の母方の祖父も聖司もいません.そして,なぜか「猫の男爵」(バロン)もいない.いつも聖司がアトリエにしている屋根裏部屋で音がしたので上がってみると,そこにはきれいな鳥の羽根が飾られたキャンパスが.さっき拾った羽根と同じ色の羽根.ホンモノかしら…….

 と考えていると,後ろから祖父が登場.この羽根の経緯を話し始めました.この羽根はゴイサギという鳥のもので,この鳥はこの前の満月の夜,翼を買ってくれと言い出したとのこと.ゴイサギの職業は「死を運ぶ」ことだったのです.彼はその役割にほとほと疲れ果て,自由が欲しいと言い出したのです.そして,翼をキャンパスに貼り付けて,満月の光に3回ほど当てると不思議な力が翼に宿り,それを背中につけると誰でも自由に飛べるというのです.

 ところが,これがゴイサギの悪知恵だとは誰も考えていなかったのです.不思議な力が宿ったゴイサギの羽根はとりついた動物をゴイサギへと変化させ,一生「死を運ぶ」事を強制させてしまうのでした…….

 秋になって新学期,寝ぼけてた雫は聖司が登校していないことに気付きます.地球屋は扉が閉ざされ,かと言って実家の「天沢医院」へ寄る勇気もなく.ところが,地球屋の窓から中を見ると,バロンが再びいないことに気付きます.すると,黒猫のルナが「彼なら猫の図書館にいるよ!」「猫の図書館はなんでもわかる不思議な図書館」と教えてくれます.

 雫はヘンだなと思いながら帰宅すると,創作ノートにはさんだゴイサギの羽根が光って,不思議な力が宿っていることに気が付きました.雫はあわてて家を飛び出し,近くの東武電車の「向い原」駅へ行きます.すると,電車の中にはルナが待っていました.ルナは先頭の車両に向かって,思いっきり走り始めました.雫もルナを追いかけると,どういう訳か,電車の先頭が「猫の図書館」の入口になっていたのです.

 猫の図書館の館長 ムタ は雫を人間と見ると追い返そうとしますが,ジッキンゲン男爵 の知り合いだと言うと図書館へ入れてくれました.しかし,猫の図書館は「幸せな時間」で満たされていて,何冊本を読んでも時間がちっとも進まないのです.やがてバロンが出て来て,雫が持っている時計が「幸せな時間」から外れて人間の時間で動き出したことを悟らせました.「幸せな時間」は一種の覚醒剤だったのです.

 ゴイサギの羽根の秘密を知ったバロンは雫と一緒に,あわてて「猫の図書館」から逃げ出します.すると,そこは2年前に聖司が雫に告白をしてくれた公園だったのでした.しかも,雫が家出をして一ヶ月がたっており,丁度その日は3回目の満月の日だったのです.バロンと雫は慌てて地球屋へ急ぎました.ところが,好奇心旺盛な聖司はゴイサギの羽根に誘われ,すでに鳥の姿へと変貌し,祖父が泣いていたのでした.雫が聖司の名前を呼んだ時にはゴイサギは空へと舞い上がっていました…….

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 と,いう所で雫は本当に目が覚めました.目の前には聖司がいて,冷房の効いた読書室で居眠りしていた雫を起こしてくれたのです.

 雫が「もし聖司がどこか遠くに行くって言っても たとえそうなったとしても……」「聖司と私が同じ想いなら……きっと 道はどこかでつながっていると思ってる」と告白すると;聖司は焦って「なんだよ突然.だいたいそんなこと言われたら「どこにも行かないで」とか言わないか?」(笑)

 こうして二人は「幸せな世界」をすて,次の世界へ…….二人の成長を思わせるラブストーリーでおしまい♪

それではおまけ 山平和彦の「放送禁止歌」です.この歌がどうして「放送禁止になった」のか,理解不可能なのですが…….

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柊あおい 『耳をすませば』 その1 (フェアベル版,集英社文庫など) [再編集]・再掲載


 どういう訳か,柊あおいさんの「古典」が毎日,結構読まれているので,手抜きついでに再掲載します.(゚_。)☆\ばき!(--;)近いうちに『星の瞳のシルエット』も書くけどね
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 今日(97年8月)は柊あおいさんの『耳をすませば』がフェアベルB6版で出たので,記念に買ってきました(自爆).しかし,残念ながら,当時私は仕事が忙しすぎたせいで,未だにスタジオジブリの制作したアニメ版を見たことが一度もありません.そういう訳で,アニメ版を一切見ていない (どちらにしても視覚障害者なので見られませんが……),ピュアにマンガだけしか知らない読者の見方としてこの記事をごらんになられて下さい.ちなみに,文庫版は以下の画像です.(ちなみにフェアベル版は評判が良くて,一年後に再販されました)




 まず,『耳をすませば』の原作から紹介していきましょう.この原作はもともと前作の 『星の瞳のシルエット』 で恋愛ものの少女マンガを描くのに疲れた作者が,自分の心に正直な児童文学のさし絵のような作品を描こうと思って,編集者に頼み込んで「りぼん」89年8月号から連載をスタートさせたものです.しかし……,当時恋愛至上主義だった編集部ではアニメっぽく変えた絵柄もストーリーも受け入れられず,読者からのメールも激減,結局途中で中学生の恋愛物語に収束させて11月号つまりたった4回で連載を打ち切られてしまったのです.

 この『耳をすませば』を初めとする連作の中で重要な役割を演じる,人形の黒猫の 男爵(バロン) も,実は前年の作者の誕生日に現在の旦那(何と高校時代から十年も交際してた!)から作者へ贈られたプレゼントでした.骨董屋の前で欲しい欲しいと思いながら数週間,買おうと思ったら店頭から消えていて,意気消沈していた彼女のもとに男爵はプロポーズの言葉と共にやって来た(らしい).

 作者は『耳をすませば』の連載中止直後,彼と結婚し,次回作の 『銀色のハーモニー』 へ取り掛かることになります.この連載の間,生後半年の乳飲み子を抱えた作者のもとにジブリからアニメ化の話が入り,柊あおいは一気にメジャーへと変貌してしまうことに…….(ちなみに,来月『銀色のハーモニー』がフェアベルから出ます.音大付属高に進学した彼氏がウィーンへ留学するのをじっと待つと約束するというエンディングですが(笑))

 結局,その後アニメの後日談ということで 『バロン 猫の男爵』(徳間書店)(アニメ『猫の恩返し』の原作) や,完全にアニメと切り離されたストーリーの 『ユメノ街 猫の男爵』(集英社マーガレットコミックス) を次々と描いていくことになります.後者の『ユメノ街 猫の男爵』は完全な少女マンガですので,アニメを先に見た人は読まれない方がイメージを崩されなくて済むんじゃないかな(笑)

 また,徳間書店からはアニメをまとめた以下の本が出てますので,小さい子供の読み聞かせなどにはこちらをどうぞ.『耳をすませば』『猫の恩返し』


 余計な話が続いてしまったので,フェアベル版『耳をすませば』の内容紹介に入りましょう.





 主人公の 月島 雫 は中学1年生の女の子.父親の 靖也 が県立図書館の司書をしていることもあって,小学校の時から活字の虫である.夏休みも県立図書館で本を借りては空想の世界に浸っているのでした.私も実は同じ穴のムジナで,小学校の図書室の本(但しノンフィクションばかり)を読み漁り,ついには区立図書館を制覇,昆虫図鑑を丸暗記して昆虫博士のじいさんたちと学名論争をするなんて悪ガキでした.おかげで第一志望の私立中には落ちたけど(笑) 雫が文学系で私が理数系という違いはあったけど(あと夏休みの宿題を貯めるのが雫で7月の半ばに済ませてしまうのが私),早くから本の虫だったので,このマンガはすっと心に入り込むことができた数少ない作品です.私が雫の読んでたような児童文学を読み出したのは恐らく大学に入ってからか幼稚園の時だったと思います.

それもそのはず,柊あおいの短大の卒論テーマ自体が「児童文学」だったのです(笑) 卒論のテーマに詰まった水沢めぐみが,柊あおいの卒論をぱくって書いたという伝説も…….

 雫が県立図書館で借りてきた3冊の本を全部読み終わった時,貸し出しカードを見てみると,自分の名前の前に「天沢聖司」が必ずあることに気付きました.雫はこの「天沢聖司」と同じ心を共有していると思い込んでしまい,その名前に恋してしまうのでした.

 翌朝,夏休みの中学へ私服で登校し,雫は保健室の 高坂 先生を呼び出します.雫たち1年の仲間たちは保健室で弁当を食べるのがくせになっていたのです.高坂はしぶしぶ,雫につきあって,図書室の本あさりへ向かいます.県立図書館にもなかった,マイク・K・ニコルス著『フェアリー・テール』.何と,前に読んでいたのはたった一人で,「天沢聖司」と一字違いの「天沢航司」.高坂はこいつは入れ違いで卒業した高1で「ひとことで言えば変人ってとこかね」と評します(笑) そこへ雫の親友で弁当仲間の 原田夕子 が飛び込んできて,雫に相談があると持ち掛けます.5組の教室で夕子が言い出した話とは,野球部の3年の 山崎 からラブレターをもらったという相談でした.夕子は長い髪を三つ編みにして,まるで「赤毛のアン」のような女の子.でも,本当は幼馴染の野球部の 杉村 がずっと好きだったので,どうやって断ったらよいのか分からない,先輩後輩同士でまずくならないだろうかというのが本音だったのです.

 しかし,そこへ本人の杉村が窓から乱入してきて,夕子は顔を真っ赤にして教室から出て行ってしまい,雫は杉村にスポーツバッグを渡すと,夕子を追いかけて行ったのでした.ところが雫も突然のできごとでさっきの『フェアリー・テール』を教室に忘れてきたのです.すると,5組の教室で,格好いい男の子が『フェアリー・テール』を読んでいたのでした.実はこの男の子が「天沢聖司」だったのだけど,口が悪くて 「それにしても今どき妖精でもねェよな」 という言葉を残して去っていったのです.帰り道では雫はずっと 「ヤなヤツ」「ヤなヤツ」 と思いながら歩いていくのでした.

 家に帰った雫は,姉の の部屋へ行きます.汐は杉村からの暑中見舞いを「ボーイフレンドからの」と言ってからかうのですけど,雫は単に小学校からの腐れ縁くらいにしか杉村を見てなかったのです.反対に,汐はきれいな入道雲の写真の暑中見舞いに見とれていたのでした.何を隠そう,差出人は「天沢航司」で汐のクラスメイトだったのです.汐は航司に好意を持っていて,すごくいい人とほめまくります.雫は「写真好きで妖精の本読む変人のいい人?」とますます「天沢航司」という人物を不思議に思い始めるのでした.

 「天沢航司」と「天沢聖司」の二人の名前を頭の中で繰り返しながら,次の日,雫は再び県立図書館へ向かいます.脚立の上では図書館司書の,父親の靖也が本の整理をしていました.彼は弁当を忘れてきてしまったのです.雫も本を返しに来たついでだったのですけど,靖也には宿題を早く済ませろと説教されてしまいます.そして,雫は最近自分が県立図書館で借りた本を全部机の上に置くと,図書カードを調べ始めました.すると,何ということでしょう.雫の名前の上には必ず「天沢聖司」の名前があったのです.「天沢聖司」とはどんな人なんだろう,会ってみたいと雫はあこがれを募らせるのでした.

 本を借りた雫はまた3扉の古いロングシート郊外電車 (東武電車) に乗って家へ帰ろうとします.すると,一匹の黒猫が雫の座席に隠れていたではありませんか.黒猫は雫の隣に立ち上がり,外の風景を見始めます.そして「風街」という駅に着くと,一目散に降りていきました.雫はわくわくしながら,風街駅で途中下車します.黒猫はまるで雫をついて来らせるかのように,雫の前を走っていきました.そこにあったのは 「屋球地」 という右から読ませる看板のアンティーク・ショップでした.(文庫版で知ったのですけど,アニメ版では「地球屋」と左読みになってたようです)

 まるで惹かれるように店の中へ入ると,そこには 猫の男爵 が.雫はどきどきしながら,猫の男爵に見入ってしまうのです.柊あおいもきっと,未来の旦那さんからプレゼントされたバロンの人形を机の上に置いて描いたのでしょうね.雫が猫の男爵に見入っていると,店の主人の老人が声をかけて来ました.とりあえず安いものを買って逃げようと思い,雫は丸いふちの度なしメガネを購入しました.老人に心の中を見られたような恥ずかしい気持ちで,雫は店から飛び出しました.そして,買ったばかりの度なしメガネをかけてみると,別世界に来たような,気持ちが空気にとけるような気持ちが雫の心を覆いました.

 すると,下駄ばきの高校生が雫を追いかけて来ました.何と彼はさっきの黒猫を頭に乗せて走って来たのです.雫は慌てていて,おつりも受け取らずに逃げていたのでした.しかも,彼は猫の男爵の写真で作られたポストカードをおみやげに雫へ渡したのです.これは実は半分実話らしくて,たまたま柊あおいが飼ってたアライグマを夕方散歩に連れ出していると,帰りがけのサラリーマン風の男性がいきなりネコを6匹飼ってるとか言い出して,ポストカードを渡したそうな…….本当にいるんだ,こんな変人……と思ったらしい(笑)

# ここまでが第1話,「りぼん」89年8月号掲載分です.

 猫の男爵のポストカードに見入っていた雫はカバンを落としてしまいました.すると,高校生は『パペット館のジム』『ウサギ号の秘密』という童話の題名を見て,なつかしいなあ,と口走ってしまうのでした.すると,上空に富士写真フィルムの宣伝用の飛行船が…….もしかして……と思った雫は「天沢航司」と口走ってしまいます.航司はどうして自分の名前を……と驚くのですけど,学校の図書室で『フェアリーテール』を借りた時のいきさつを話すと納得してくれました.だけど,雫はもう一人の「天沢聖司」は?という質問を口に出せないまま,黒猫の ルナ と航司と別れるのでした.知ってしまったら 夢からさめてしまう 大切な夢……雫は「天沢聖司」へのあこがれと現実との間にとまどってしまうのでした.夏休み中,その後2度「地球屋」へ行ったものの,天沢航司にも猫のルナにも会えずじまい.会えたのは猫の男爵だけで,会うたびに不思議な気持ちになるのでした.

 二学期になって,ある土曜の掃除時間,雫は夕子に山崎からのラブレターの返事をどうした,と聞きます.夕子はやはり杉村が好きなので,断ることにしたいと言います.ゴミ捨てに焼却場へ行くと,「あのヤなヤツ」と廊下でご対面.彼は雫を無視して,そのまま3組の教室へ入りました.掃除が終わったあと,夕子は雫にもっと相談がしたかったのに,雫は「天沢聖司」より早く『バビロンの館』を借りるんだ,と言って駅へと一目散.雫を待ち受けていた杉村はあっさり無視され,代わりに夕子が杉村と話すことに…….

 天沢航司は太陽が照っているのに,大きいコウモリ傘を持って,駅前で本を読みふけっていました.そこへ雫の姉の汐が…….二人は高校が違ったものの,つきあいだしていたのです.汐は傘なんか持って,だから変人だと言われるのよと言いますが,航司は平気.実は飛行船が飛んでないから雷雨になると彼は感づいていたのです.喫茶店でも航司は暑いのにわざとホットを飲んでいます.そして,祖父の経営する「地球屋」に面白い女の子が来たという話をしだしたとたん,その現物が目の前を走り去って行ったのです(笑) 汐はあれは妹の雫だと言うしかありませんでした.(^^;)

 県立図書館で雫は早速,新刊コーナーで『バビロンの館』を探し始めます.すると,真っ白な図書カードの『バビロンの館』が.ほぼ同時に入館して来た天沢聖司は『バビロンの館』がないのを確認すると,『魔法の森』を代わりに拾います.一般読書室で例の度なしメガネをかけた雫は『バビロンの館』に読みふけります.すると,向い側の席に天沢聖司が『魔法の森』を持って着席します.あとは小声で口ゲンカ.「ふーん ヨーセーは悪くても 魔法使いはいいってわけね」「だからいやなんだよな 魔法はもっと科学的なものだよ ヨーセーとはちがいます」…….外では雫の父親の靖也が,娘のどなり声を聞いたような気がする……と(笑)

 帰りは案の定,大雨.天沢航司の予想は見事に当たって,汐は驚いてしまうのです.天沢聖司は折り畳み傘を持って来ていて,雫を傘に入れようとしません.結局,雫は謝って,傘に入れてもらうことにしました.杉宮駅まで送ってもらったあと,聖司はもう一つ行く所があると言って駅で別れます.雫は送ってくれてありがとうと素直に言うのだけど,口の悪い聖司は「あのバアさんメガネやめた方がいいぞ」と憎まれ口を叩きます.帰りの電車の中「天沢聖司」はやはり航司の弟で同じ中学で県立図書館通いで童話好きだから同一人物かも……と,雫はもの思いにふけるのでした.

 翌日の日曜日,夕子は泣きはらした顔で雫に会います.杉村が山崎のラブレターの返事を頼まれてきたとか…….彼女は大雨の中,ずぶ濡れになって家に帰り……,杉村は夕子の気持ちを知らないものだから,余計に精神的に落ち込んでしまったのですね.初恋とは悲しかりかな.雫は地球屋へ行って気分転換しようと,線路沿いを歩いていると,ラジコン飛行機を見つけました.すると,踏み切りのところに黒猫がいます.黒猫を追っていくと,そこにはラジコン飛行機を持った「天沢聖司」がいたのです.しかも,この猫の名前は ムーン

# ここまでが第2話,「りぼん」89年9月号掲載分です.この辺から編集の手が加えられて,童話物語から恋愛物語へと不自然に変えられてしまうのだな(笑)

 背景には「天沢医院」という病院が,そして兄の天沢航司がメス猫のルナを肩に乗せてやって来ます.弟の天沢聖司のそばにはオス猫のムーンが.これで雫の「天沢聖司」への憧れは音を立てて崩れ去ってしまったのでした(笑) そう,天沢航司も天沢聖司も天沢医院の跡継ぎ息子で,「ヤなヤツ」の天沢聖司が夢一杯のラジコン飛行機を飛ばしてた=「あなたの名前を知ってショックだった」ことで,雫はふらふらと家路を急いだのでした.

 次の月曜,保健室でお弁当を食べようとすると,3組の聖司が雫の5組の教室の入口にやって来ました.もうクラスは大騒ぎ.「わーい 月島に がいたぞーっ」 雫は聖司を屋上へ引っ張って行きます.昨日の日曜の様子が変だったからそれが心配だったのだと言う聖司に,実は彼はやさしかったんだと雫は見直してしまったのです.実は二人とも,お互いの兄と姉とが恋人になってることも知らず,お互いに名前やら色々知っているのが不思議だったのだな.保健室でも雫に男ができたと噂され,参ってしまうのです.

 放課後の秋の空,帰り道,野球部の杉村に雫は呼び止められます.小さい神社で土曜日の夕子とのことを告白すると,雫は「夕子はねっ あんたのことが好きなのよっ」と怒ります.しかし,杉村は思いきって雫に告白するのです.「おれ おまえのことが好きなんだ」と.3人はとんでもない三角関係へと突入してしまったのです.だけど,雫は杉村が幼馴染の「友達」以上にはなれないと言って,杉村と別れます.本当に恋愛感情ににぶかったのは雫だったんだと気付いたときにはもう遅かったのでした.

 その夜,雫は夢を見ました.地球屋へ寄ってみると,航司が出迎えてくれるのですけど,肝心の猫の男爵がいません.航司と一緒にいた聖司は「あの猫なら今 出てった女の子が連れてったぜ」と言います.すると! 何と自分自身がバロンを連れて歩き去って行くではありませんか…….

 次の火曜の朝,偶然,雫は夕子と杉村に出会います.そして一緒に「おはよう」と言うことで,夕子が杉村に謝ろうとするのを,雫は後押しします.杉村もまた夕子に好かれていることに気付かないふりをして,3人の人間関係が変わってしまった,ひとつの時代が過ぎてしまったような変な気持ちになったのでした.

 放課後,地球屋へ雫が走っていくと,主人の老人が店の玄関でひなたぼっこをしていました.雫は朝に見た夢が現実ではないかと思って,猫の男爵があるかどうかを確かめに来たのです.この猫の男爵は実は売り物ではないと,老人が言いました.戦前,老人は貿易会社に勤めていて,日本とヨーロッパを行き来していて,偶然ドイツの喫茶店でこの猫の男爵を見つけて譲ってもらったのです.ところがこの猫の男爵と対になる恋人の猫が製作中だったので,それをあとで送ってもらうように頼み込んだら,戦争が激しくなって祖父の貿易会社もドイツの喫茶店もすでに潰れていたのでした.

 でも,老人は届くはずの恋人が来ることを信じて,猫の男爵を売らないと決心したという話なのです.しかも,人形師が製作ミスをしたため,猫の後頭部を太陽に向けると,ドイツ語で das Engels-zimmer (だす・えんげるす・つぃまー)「天使の部屋」と言う,猫の目が光り輝く現象が起こったのです.雫にはこれが「まぶしい音 忘れかけてた音が聞こえてくる」と感じられました.感動した雫は涙でいっぱいでした.

 ふと店内を見回してみると,ライオンに羽が生えた不思議な絵が飾ってありました.この絵は私の孫が描いたんだ,童話や夢物語が好きで,いい絵を描くんだとほめちぎったのです.これでようやく雫は天沢聖司がこの老人の孫であることに気付いたのでした.地球屋を出るとちょうど雫の前には聖司がいました.聖司は「おまえのこと知らなけりゃ このまますれちがうだけだな」と言い,雫も「図書館で何度すれちがったかな」と言い返し,「きれいな絵描くんだね」と言うと,聖司は照れてしまいました.

 中学に上がるときに,聖司は医者の父親にいつまでも童話とかを読んでるんじゃないと言われた,と雫に白状しました.兄の航司は真っ向から対立してるけど,自分はそこまでできなくてこそこそ祖父の店で夢を描いてると…….兄弟揃って医者を継いで欲しいのは分かるのだけど…….でも,雫は航司と聖司をほめます.「自分を表現する方法も力もある」「反対されても負けることなく誰にも言わずに夢をあたためてる」と.言われてる本人の聖司は真っ赤になるのだけど,反対に雫は聖司の口の悪さは実は照れ隠しに過ぎないんだということに気付いたのでした.

 雫は本を読んで感じるときに「音がする」という表現をします.それが地球屋で猫の男爵や聖司の絵を見て少し分かった気がする……だけど最近その音が聞こえてこない,本を読んでも物足りないと言います.すると,聖司は「じゃあ自分で書いてみれば?」とアドバイスしてみます.聖司も自分で絵を描くことで物足りなさを埋めていたのです.二人は親友になれた握手をして「ありがとう」と言うのでした.

# ここまでが第3話,「りぼん」89年10月号掲載分です.

今朝のおまけ 懐かしのグループ・サウンズ (和製英語) の特集です(笑)

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なんでまた,九州朝日放送「アサデス!」 ?


 昨日の午前十時ごろ,なぜか知らないけど,昨年12月13日に書いたこの記事が,爆発的に読まれていた.アクセス元を辿ってみると,ezweb 経由からのものが全んどで,一体何を考えているのやら,と思ってしまった.

 逆解析すると,全んどがパブリックドメインからのアクセスでした(笑) 公務員はちゃんと仕事をしましょう.良かったら,判明分の IP アドレスも公開する用意がありますんで(笑) つまり,何をされても絶対に「炎上」はしません.ネットゴキの皆さん,覚悟の上,アクセスされて下さいね(爆)

 と,いう訳で,読者のリクエストにより(笑),再掲載します.ビデオもついてるよ〜ん(笑)




 極端なローカルねたなのですが,KBC 九州朝日放送 では午前中に「アサデス!」という情報番組を流している.出てくるメンバーは,かつて若者向け深夜番組の「ドォーモ」で活躍していた面々(笑) 要するに「主婦向けの情報番組」である.大阪の朝日放送系列の放送局で,主に九州・山口で流れている.

 このあとには詐欺まがいの通販番組(スポンサーはほとんどがアパやレダなどの,自民党や暴力団の下部組織で,暴利を貪っている.スーパーに置いてあるデタラメの「純水」販売機と同じ類のものだ)を流している局も多い (赤字体質のローカル局の哀しい所である).ユニクロが典型例で,他に企業がなく,国と県の役所しかなく法人税がべらぼうに安い山口市や鳥取市や甲府市などに「本社」を置いて,ぼろ儲けしている訳だ.電話一本・机一つ・派遣社員一人でも「本社」にできる,現在の登記法をうまく利用している.

 んで,「アサデス!」の特徴は情報番組の最たるもの,何でもかんでもランキングにある.例えば「おせち料理」だと,博多のデパートを荒らし回って,どれが一番売れ筋かなんて情報をベスト10で流していたりする.今年は不況のはずなのに,1万円未満〜6万,中には7万なんて高級品が売切れてたりするという話だ.7-11 の「おせち」が 16700円とかいう話は,なるほど貧乏人をあてこんだものかと納得してしまったりする. あたしはクリスチャンだから,正月は半額のそばと菓子パンとウィンナで生き残る予定だけど(自爆)

 ……もしかして,皆さん,「来年はおせちが食べられないかも知れない」,なんて悪い冗談を考えてはいないでしょうね? (^^;)

 円が88円まで落ちたということは,万円札が紙切れになる=輸出企業の信用力がなくなるって意味なんだけど,分かってる人っているかなぁ〜.逆に言うと,日清製粉だとか,イオンのオージービーフのバイヤーなんかが輸入品を安く買いたたけるという意味でもあるんだけど.これでますます農業が成り立たなくなるのが哀しい.本来は失業対策に,派遣社員を農業大学校へ送り込み,年寄りが耕作できなくなった土地を農協が買い上げて,若い農家を大量に作るべき=雇用の創出が必要ではないかと考えているのだが.中央官庁のアホ官僚にはこういう発想が出てこないらしい.いっそのこと,中国のように,法学部・経済学部など文系学部から(国家)公務員試験の受験資格を剥奪してはどうだろうか.つまり,一度,農学部などの理系学部を出てこないと,国家官僚になれないようにしてやるのだ.どうせ東大でも文系は1学年3000人のうちの数百名に過ぎない少数派だ.文化大革命でエクセルのマクロ (VBA) の仕組みも分からないような文系を下放しても構わないのではないだろうか(笑) 逆に言うと,文系の大学や学部が多すぎる.少子化にあったスリムな大学定員を文科省は強制するべきではないだろうか.つまり,理科系以外の学部は今の不況の日本には必要ない! 文系学部は国立大で充分に足りている.神戸大や一橋大や横浜国大の経営学部も経済学部と統合する必要があり,今年度赤字決算の私大の文系大学は潰すべきである.賢明な経営者の方々は分かっておられると思うが,日本の不況の原因はお馬鹿な文系管理職にある! 派遣労働者を切るくらいなら,ボーナスさえもらっている要らない文系管理職のクビを全員切ることだ! 派遣組合の皆さん,もしこの記事を読まれていたら,一緒にクーデターを起こしませんか? 派遣会社などは実力で潰してしまうのです!

P.S. どこかの会社の「エクセル1級」なんてのは,実務にはまったく役立たないので,受けない方が賢明です(笑) お金の無駄.
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Julie〜〜!(*^^*)

 トイレに起きたので,陸奥A子さんの好きなジュリー特集(笑) それではおやすみなさい.

沢田研二「TOKIO」



沢田研二「勝手にしやがれ」



沢田研二「時の過ぎゆくままに」



沢田研二「カサブランカ・ダンディ」



沢田研二ヒット曲集



沢田研二「危険なふたり」 (これが「ジュリー」?という位の中年太り(5年前))



 これじゃ,自動車事故を起こすはず.糖尿病にもなってるんじゃないかしらん.もう還暦だしねぇ.
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