麻生太郎首相は9日の衆院予算委員会で、5日の同委で「郵政民営化に賛成じゃなかった」と発言したことへの釈明に追われた。政府・与党を揺さぶる絶好の材料とみて追及を続ける野党に対し、与党は沈静化に躍起となっているが、連日の迷走ぶりには、首相を突き放す冷ややかな空気も漂っている。【田中成之、野口武則】
首相は9日、「05年に議論をし尽くした結果に従って推進する。私は国営に戻すなんて一回も言ってない」と答弁し、今は民営化を否定していない点を強調した。
しかし5日の発言の焦点は、民営化には反対だった点を明かしたことと、日本郵政グループの4分社化体制の見直しに言及した点の二つ。9日は民主党の筒井信隆氏がこの2点を徹底的に突いた。
民営化に反対していた時期について首相は、5日の段階では05年の関連法の閣議決定や衆院の郵政解散時としていたが、9日になって「03年の総務相就任時」と修正。「(その後の在任中の)2年かけて勉強し、最終的に賛成した」と説明した。また、4分社化に関しては「我々が(05年の衆院選で)問うたのは民営化で、4分社化か3分社化かなんて問うてない」と述べ、経営形態の見直しは否定しなかった。
筒井氏は「4分社化が小泉民営化の心臓部分だ。それがたいした問題でないなら、なんで除名や離党や自殺が出たのか。首相は『反対だった』とあっけらかんと言うが、公認されて大臣の地位を守り当選した。信念に殉じる姿勢が全くない」と痛烈に批判した。
一方、河村建夫官房長官は9日の記者会見で「(5日の答弁は)オーバーで説明不足、舌足らずの点があった。最初から今日のように言ってくれれば良かった」とフォローした。ただ、自民党幹部は「いくら(支持率回復に)動いても、首相の一言で左右されてしまう。やりようがなく、むなしい」と突き放し、9日の予算委で質問に立った自民党の佐田玄一郎氏は「右顧左眄(うこさべん)せず、まず景気、雇用にまい進してもらいたい」とクギを刺した。
毎日新聞 2009年2月10日 東京朝刊