近年ウェブサイトの大幅な強化を図ってきた株式会社ユニクロ。ブログパーツ「UNIQLOCK」の配布や、約700名の社員を登場させた「UNIQLO JUMP」など、斬新なアイデアと手法で大きな反響を集め、ウェブ戦略を成功に導いてきた。同社マーケティング部グローバル新メディアチーム兼マーケティングリサーチチームの勝部健太郎リーダーに、同社ウェブ戦略の舞台裏と成功の秘訣などを聞いた。
株式会社ユニクロ・マーケティング部グローバル新メディアチーム 勝部健太郎氏
―ユニクロのウェブ戦略とその意図について
昨今、ユニクロは世界各地へ進出していますが、世界で一番にならなければ、日本でもトップに立てないと考えています。ウェブサイトに関しても世界中から見ることができるもので、どこの国から見てもユニクロのブランドイメージやクオリティを担保する必要があります。そうした視点から、言葉が違っても通じるようにとのコンセプトで生み出されたのが、時計、音楽・ダンスで構成されたブログパーツ「UNIQLOCK(ユニクロック)」です。
言葉の壁を超えて世界で大きな反響を集める「UNIQLOCK」 (左)5秒ごとにダンスなどを披露(右)時計表示画面 (http://www.uniqlock.jp)
ブログパーツという形をとったのは、自社サイトの中だけで多くの方々とコミュニケーションを図るには限界があり、外部に情報発信メディアを持ちたいと考えていたためです。展開に当たっては、広告よりもコンテンツとしての視点を大事にし、多くの人が見たくなるようなものにするべく工夫をしました。UNIQLOCKは現在、世界210カ国3万2000カ所のブログに貼り付けられ、間もなく1億ページビューに迫る勢いです。
一方、自社スタッフ700名が写真や動画などで商品コーディネート情報を発信する「UNIQLO JUMP」は、社員自体をメディア化するという試み。「人」というメディアを通じ、採用活動につなげることを目的にしました。学生さんが志望理由に「UNIQLO JUMPを見て」と書かれることも多く、人が活き活きと働いている姿を肌で感じてもらえているのは嬉しい限りです。
ユニクロ社員自体をメディア化する試み「UNIQLO JUMP」は採用活動の活性化につながっている (http://www.uniqlo.com/jump/)
―ユニクロの事例を踏まえ、企業でウェブに関わる人へのアドバイスを
その企業ならではのアイデンティティーを抽出し、伝達すること。自分たちの会社のコアを発見し、独自の切り口で伝えることです。
そして、ウェブに最もフィットした表現方法で発信すること。「UNIQLOCK」のようにテレビでは絶対に不可能な表現も可能なのです。
またPRの視点も大事です。ニュースリリースを発信するだけでなく、いつ、誰に、どのように伝えるのかストーリーを設計することですね。
思い切ったことをやるには、チームとしてのプロフェッショナル感を社内で周知徹底することが重要。社内外で通用する権威も欲しいところ。承認を取るプロセスを簡素化したり、予算や人を確保することも考える必要があります。
ウェブは継続的なメディアであり、「当たる企画」を見つけたら映画のようにシリーズ化し、ヒットにつなげるのがポイントです。また、一度公開しても進化を続ける永遠のβ版として連続的思考を持ち、トライ&エラーを繰り返すことは大切です。
―ウェブ戦略の今後の展望を
Facebookなど海外CGMを使ってPRしていくことや、ブログパーツ以外にも参加していただけるようにメディアを拡張していきたいと考えています。日本発で世界を変えていくという気概で取り組んでいきます。
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本紙:井上佳国、西村健太郎、写真:岡部ユミ子
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