| 越後の国は大河ドラマ人気にわいている。上杉家ゆかりの上越市に入ると、派手な宣伝の旗がいやでも目に付く 駅前や商店街に林立する旗は、好機到来と意気込む軍勢のようでもあるし、東京発のドラマに押っ取り刀で集まった群れのようにも映る。さまざまな土産品に、「愛」の文字が躍る 「一寸先は光」というせりふが、ドラマ「利家とまつ」にあった。脚本家の竹山洋さんが、腐心した1つ、と話してくれた。佐々成政が親友の利家との合戦を決断する場面である。成政を憎い敵役に仕立てると、富山の人たちが承知しない。一寸先は闇ではなく光、という美しいせりふを編み出して、悲劇の武将を誕生させた 大河特需も、賞味期限はせいぜい1年。一寸先には光もあれば闇もある。お国自慢になるが、金沢の前田家墓所と高岡の利長墓所の国史跡指定は光の1つ。大河ドラマが引き金になって地元で歴史に対する関心と愛着が高まり、実りを生んだ 越後の人は先刻承知だろうが、土産物の「愛」の字は郷土に対する愛である。旗になびく観光客の財布に寄せる愛は、あくまで、おまけである。
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