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主張母体救命も重視した体制に

公明新聞:2009年2月13日

安心確立へ周産期センターを再編

周産期医療

 安心して子どもを産み、育てられる体制の確立が急がれている。わが国の新生児や妊産婦の死亡率は国際的にも非常に低い水準に達しているが、出生体重2500グラム未満の低出生体重児をはじめとするハイリスク新生児は、この10年間で約1・5倍に増加。一方、産科医や分娩施設などは減少傾向にあり、新生児集中治療室(NICU)は慢性的に不足状態が続いている。

 そんな中、東京都で昨年(2008年)10月、脳出血を起こした妊婦が八つの病院に受け入れを拒否され死亡した問題は、医療体制が手厚いはずの大都市でも「安心の出産」が確保できない深刻な実態を浮き彫りにしたといえよう。

 この問題を踏まえ、厚生労働省の「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」が3日、周産期母子医療センターの再編やNICUの増床などを提言する報告書をまとめた。

 わが国の周産期医療は、妊娠後期から新生児早期までの周産期に、母体、胎児、新生児を総合的に管理し母子の健康を守る医療として整備されてきたが、妊婦の、産科以外の急性疾患に対する救急体制が十分に整っていないことが、今回の問題で明らかになった。

 中でも、リスクの高い妊娠に24時間365日体制で対応する総合周産期母子医療センター、比較的高度な医療を担う地域周産期母子医療センターについては、昨年、受け入れを拒否した都内8病院のうち、6病院が周産期センターだったことから、その役割、連携のあり方が大きく問われているところだ。

 報告書では、周産期センターの新しい指定基準として、(1)妊婦の救急を含むあらゆる母子の疾患に対応する「母体・胎児・新生児型」(2)リスクの高い胎児・新生児に対応する「胎児・新生児型」(3)妊婦の救急とやや低リスクの胎児・新生児に対応する「母体型」――の3分類を例示する。母体救命を含め、提供可能な診療を明確にした分類といえる。今後詳細を詰め、症状に応じた搬送先の選定がより速く、容易となる再編が行われることを期待したい。

NICUの増床急務

 早産児や低出生体重児などの集中治療を行うNICUについて、必要病床数を最大1.5倍に増やすとした提案も重要な指摘だ。昨年の東京のケースでは、受け入れ拒否の8病院のうち3病院が「NICUの満杯」を理由に挙げ、1病院は「NICUを設置していない」として断っている。厚労省が昨年末に行った全国調査でも、母体の受け入れができなかったケースがあった総合周産期センターのうち9割以上が、「NICUの満杯」を理由に挙げる。増床は急務といえよう。

 もちろん、こうした体制・施設の整備を図るには、医師、看護師などの増員や、財政的支援が欠かせない。安心の周産期医療の実現へ、産科医など医療スタッフの待遇改善、女性医が働き続けられる環境づくりにも全力で取り組む必要がある。

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