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社説2 小沢・クリントン会談の意味(2/13)

 16日に来日するクリントン米国務長官が民主党の小沢一郎代表との会談を打診したのは、ふたつの不安からだろう。麻生政権への不安、それに代わる可能性のある小沢政権への不安である。小沢氏が会談を断れば、後者はさらに強まる。

 世論調査が示す内閣支持率が一様に10%台に落ち込んだ麻生政権の先行きがどうなるか。国際社会が楽観しないのは当然だろう。特に郵政民営化をめぐる麻生太郎首相の発言の揺れは、日本政府の決定の重さを疑わせ、麻生政権の対外的信頼も傷つける結果にもなりかねない。

 米国の大統領や国務長官はかつてのソ連や中国を訪ねた時、反体制派知識人としばしば会談した。オバマ政権が日米関係を重視するのなら、クリントン長官来日の際に、秋までに必ずある衆院選挙後に政権につく可能性がある小沢氏との会談を求めるのは政治的には自然である。

 外交的には異例だが、東京でも前例がある。

 1993年7月、東京サミットのために来日したクリントン大統領(当時)は大使公邸のレセプションに山花貞夫社会党委員長、羽田孜新生党党首、細川護熙日本新党代表らを招いて懇談した。衆院選挙を控えた時期だった。選挙の結果、非自民連立による細川政権が成立し、山花、羽田両氏らは入閣した。

 小沢・クリントン会談は、93年の故事を連想させる。小沢氏は、2007年8月、報道陣に公開のままでシーファー駐日米大使(当時)と会談し、外交上異例の扱いに米側は戸惑った。それにもかかわらず、クリントン長官が小沢氏との会談を求めたのは、小沢氏の外交政策をただしたい気持ちがあるのだろう。

 国会でインド洋での給油活動、駐留米軍経費の日本側経費負担に反対し、普天間基地の沖縄県外移設、日米地位協定の改定を求める小沢民主党の政策がそのままであれば、オバマ政権との間に摩擦を生じる。昨年12月に来日した米民主党関係者からも既に懸念が伝えられている。

 小沢氏はクリントン長官との会談を受けるのか。仮に受ける場合にシーファー大使との会談と同様に報道陣に公開の形をとるのか。それだけでも小沢外交を占う結果になる。

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