ねたみや他人の不幸を喜ぶ感情をつかさどる脳の部位を、放射線医学総合研究所などの研究チームが明らかにした。ねたみを感じる部位の活動が高い人ほど、「他人の不幸は蜜(みつ)の味」と感じやすいことも実験で確認できた。13日付の米科学誌サイエンスに発表した。
ねたみなどの複雑な感情をつかさどる脳の仕組みは、ほとんど分かっていなかった。放医研の高橋英彦・主任研究員(精神医学)らは、被験者が主人公となり、自分より成績や所有物が優れた人が登場するシナリオを用意。大学生19人に読んでもらい、ねたみの強さを自己評価してもらうと同時に機能的MRI(磁気共鳴画像化装置)で脳の活動部位を調べた。
その結果、ねたみを感じる際には、肉体的な痛みを感じる前頭葉の「前部帯状回」の活動が活発になった。また、自分より優れた人が不幸に見舞われるシナリオでは、報酬を得たときに心地よいと感じる「線条体」という部位が活性化した。前部帯状回の反応が強い人ほど、線条体の反応が強かった。
高橋さんは「体の痛みを感じる前部帯状回が心の痛みであるねたみにも関係していることは興味深い。ねたみのような感情を客観的に評価できれば、カウンセリングなどに役立つのではないか」と話している。【西川拓】
毎日新聞 2009年2月13日 10時38分(最終更新 2月13日 12時04分)