首都直下地震が発生した場合、東京23区とその近隣にある計52カ所の「災害拠点病院」のうち10病院で、運ばれる重症患者数が病床数の5割以上に達することが、東京大の大原美保准教授(防災計画)らの推計で分かった。病院の空き病床は通常、病床数の1割程度といい、大量の患者を収容できない恐れがある。
災害拠点病院は阪神大震災を教訓に整備が進められ、大規模災害時に自治体の医療救護所で対応できない重症患者を受け入れる。
大原准教授らは、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震を想定し、23区で約2万2000人と予想される重症患者(交通被害を除く)の搬送先を推計した。
患者を被災場所から最も近い病院へ搬送した場合、52の災害拠点病院(23区内48病院と23区外周から5キロ以内の4病院)のうち、搬送患者数が病床数の5割以上の病院が10カ所あった。このうち6カ所は、多数の重症患者発生が想定されるものの、大規模な病院が少ない都東部の足立、葛飾、江戸川、墨田、江東の5区(11災害拠点病院)に集中していた。墨田、江東区の2病院では、搬送者数が病床数を上回る。
一方、入院が必要な患者に対応する「2次救急病院」で同様の推計をしたところ、161病院中86病院で、運ばれる重症患者数が病床の5割を上回った。
大原准教授は「実際には死亡者や軽症者も搬送され、病院がさらに混乱することが予想される。大規模病院が多い文京・新宿両区への患者移送を促進する計画や病院間の連携体制整備が急務」と指摘している。【樋岡徹也】
毎日新聞 2009年2月13日 11時47分