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【社説】

人工衛星衝突 宇宙を廃棄場にするな

2009年2月13日

 ロシアのシベリア上空で起きた米ロの人工衛星の衝突は、これまでほとんど無視されてきた宇宙ごみ(スペースデブリ)の怖さを見せつけた。各国とも宇宙ごみ対策に真剣に取り組む必要がある。

 事故は、日本時間の十一日未明に起きた。米国が一九九七年に打ち上げて運用中の通信衛星と、ロシアが九三年に打ち上げて既に機能停止したとみられる通信衛星が衝突し、数百個の破片が宇宙空間に散らばった。

 五七年に旧ソ連が人工衛星スプートニクを打ち上げて以来、半世紀以上に及ぶ宇宙開発史上、初めての事態だが、起こるべくして起きたといってもいい。

 これまでに米ロをはじめとして世界で四千回を超す衛星などの打ち上げが行われ、多数の宇宙ごみが生じた。宇宙ごみは多様で、今回のように寿命が尽きた衛星のほか、打ち上げに使ったロケット本体や、その部品、これらの衝突で生じた微細ごみ、宇宙飛行士の落とした工具、手袋まである。

 多くは大気圏に突入後、燃え尽きるが、現在もなお数千トンが地球を回っているとみられる。一ミリ以下の微細な破片まで含めるとその数は数千万個ともいわれるが、米国の宇宙監視システムがレーダーで追跡・監視しているのは十センチ角以上の一万三千個にすぎない。

 広い宇宙空間ゆえに衝突する確率が低いとはいえ、九六年にフランスの衛星が破片と衝突したのをはじめ、米国のスペースシャトルの窓ガラスにも破片が衝突したことが分かっている。数ミリの破片でも弾丸の十倍以上の猛スピードで飛んでいるため、当たれば大砲並みの破壊力となる。宇宙開発はロマンを秘めている一方、危険と隣り合わせでもあるのだ。

 人類の宇宙活動が今後、盛んになる以上、宇宙ごみを新たな環境問題ととらえなければならない。

 各国とも寿命が尽きた衛星を速やかに大気圏に突入させたり、運用中の他の衛星のじゃまにならないように低高度に移動させることを徹底すべきだ。大気圏突入後、完全に燃え尽きる材料の開発にも力を入れるべきである。

 中国が二〇〇七年一月に行った弾道ミサイルによる人工衛星の破壊実験では、大量の破片が宇宙空間にまき散らされた。最大の宇宙ごみの投棄である、このような暴挙を二度と許してはならない。

 宇宙空間は人類共通のフロンティアである。宇宙ごみのために宇宙活動が制約されるような事態は避けなければならない。

 

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