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【主張】イスラエル総選挙 和平の灯消さない努力を
中東和平の行方に重大な影響を与えるイスラエル総選挙は、国際社会が対応に苦慮する結果となった。中道右派の与党カディマのリブニ党首と、最大野党の右派リクードのネタニヤフ党首の双方が「勝利」を宣言する異例の展開である。
カディマは辛うじて第一党の地位を守ったが、与党陣営は過半数を割り込み、中東和平に消極(否定)的な右派ブロックが半数を超えた。今後の連立交渉は混迷が予想される。
しかし、パレスチナ自治区ガザをめぐる衝突がようやくおさまった今、どのような連立政権が登場するにせよ、国際社会がイスラエルに向けて発信するメッセージははっきりしている。「中東和平」への希望の灯を消してはならないということである。
「パレスチナ独立」を軸としたブッシュ前米大統領の和平案は、国境の線引きやヨルダン川西岸のユダヤ人入植地の撤退範囲など実現への具体策ではさまざまな問題点を抱えている。だが、独立を認める原則はすでに国際社会が受容する共通認識となっている。
しかし、今回の選挙結果では、米国主導の和平プロセスに応じる姿勢を示してきたリブニ氏がカディマ主導の組閣に成功しても、その連立基盤はもろく、和平への急展開は望めない。一方、パレスチナ独立に反対してきた強硬派のネタニヤフ氏が右派糾合政権を作れば、和平プロセスの前進はほとんど期待できなくなる。
両者の大連立ならば、内政面で一定の安定をもたらすだろうが、やはり和平への動きにはブレーキがかかる。それでも米国のオバマ政権は遅かれ早かれ、ブッシュ前政権の枠組みを踏襲しつつ、和平仲介に乗り出さざるを得なくなるだろう。
重要なのは、今後予想されるイスラエルの強硬路線を少しでも緩和させる手だてだ。その意味で、ガザを実効支配するハマスやレバノンのヒズボラなどイスラム原理主義組織と、その後ろ盾とされるイランなどイスラエルにとっての脅威を減じる働きかけが求められる。オバマ政権がイランとの直接対話をさぐる姿勢を見せているのは注目すべきだ。
日本はパレスチナ安定化を目指す経済支援を地道に続ける必要がある。同時にイランに米国との対話を促すことはできないか。日本の役割への期待は小さくない。