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【主張】金賢姫面会 拉致を日韓連携の弾みに
大韓航空機爆破事件(1987年11月)の実行犯、金賢姫(キムヒョンヒ)元死刑囚と、拉致被害者で金元死刑囚に日本語を教えていた田口八重子さんの家族との面会が実現する見通しとなった。
田口さんのケースは、北朝鮮工作員だった金元死刑囚の「李恩恵という日本人女性から教育を受けた」との供述をきっかけに明らかになった。その後の警察当局の調べで、「李恩恵」は拉致された田口さんと判明し、日本政府が拉致問題に本腰を入れて取り組む契機にもなった。
金元死刑囚と田口さんの家族の面会が実現すれば、北朝鮮による拉致が国際テロを実行する工作員を養成するための国家犯罪だという事実を改めて世界に発信することになる。拉致問題解決と被害者救出に向けた国際世論の盛り上がりが期待される。
面会は、北に融和的だった盧武鉉(ノムヒョン)政権に代わって過去の政権とは一線を画す李明博(イミョンバク)政権が韓国で誕生したからこそ、実現の運びになったともいえる。これを機に、新しい形の日韓の協力関係が一層強化されることを望みたい。
北朝鮮は「李恩恵なる日本人女性はいない」と言いつつ、田口さんについて、「84年10月に原敕晁(ただあき)さん(拉致被害者)と結婚し、原さん病死後の86年7月に田口さんも交通事故で死亡した」と説明している。
しかし、田口さんの兄で拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さんは最近、「韓国人男性と結婚した」との情報を聞いた。帰国した拉致被害者の地村富貴恵さんも、北が死亡したとする時期の3カ月後に田口さんを平壌で見かけたという話を聞いている。北の説明のウソは明白である。
16日、ヒラリー・クリントン米国務長官が来日する。クリントン氏は先の中曽根弘文外相との電話会談で、拉致問題を重視する姿勢を示した。拉致問題へのオバマ新政権の理解をさらに深めるため、クリントン氏と被害者家族との面会が実現できるよう、日米両国政府に調整を求めたい。
北朝鮮が拉致被害者の再調査を約束した昨年8月の日朝協議から半年が経過した。北は約束を果たすどころか、弾道ミサイル発射の脅威をちらつかせている。クリントン氏の来日とその後の金元死刑囚と田口さんの家族との面会は、不誠実な北を動かす突破口となり得る大きなチャンスである。