ワシントンの友人が日本の政局について聞いてきた。珍しい。ここ1、2年日本の政治は話題にもならなかったからだ。
どうやらオバマ米大統領が最優先課題に掲げた経済再生と新政権の対日政策の始動が不即不離の関係にあるらしい。今回の経済再生策の特色は、景気対策に約8千億ドルをつぎ込む規模の大きさと、即効薬的にその75%、約6千億ドルを今後1年半で執行するというスピードにある。こうした未曽有の財政出動はまさに巨額の国債発行を伴うので、米国はこれまで以上に海外の国債の買い手を必要とする。
世界中が恐慌寸前という現状で、米国債を即座に買ってくれそうな国は日本しか見当たらない。世界一のドル保有国、中国は昨秋から米国債の買い控えが目立ち、ガイトナー財務長官は指名承認公聴会で、中国は外為相場を操作している、と“失言”するなど中国の心証を害している。EUはドイツの景気刺激策が手ぬるいと、もめており、英、仏などは対米投資の余地も少ない。
これに比べ、日本では政府、財界とも「日本経済の傷は浅い」とか「バブル崩壊を経験済みの日本のチャンス」などと公言しているので、ワシントンにとっても米国債引受先として“頼もしい”国と映っているのは間違いない。ヒラリー・クリントン米国務長官が初の外遊先としてこの16日に訪日する動機も分かる。
だが、事は日本の政局次第。オバマ再生政策のスピードに日本の政治がついて来られるかも確かめる必要がある。麻生首相は世界の政財界首脳が集まったダボス会議で日米協力を宣言したが、同会議では「米国債は大丈夫か?」と「一蓮托生(いちれんたくしょう)」の覚悟が“裏”の議題だったと聞く。(昴)