【シリーズ現場】17人で学ぶ ■25 スキー遠足 『上手に滑れたよ』2009年2月12日
習熟度別にグループ分け苦手な子 先生と特訓眼下には、白い雪を一面にまとった散居村。頭上には、久しぶりに青一色の空が広がった。元気を取り戻した太陽が雪原をまぶしく照らした。 金沢市朝日小学校の十七人は一月下旬、金沢市との境に近い富山県南砺市のスキー場「イオックス・アローザ」に来ていた。年に一度のスキー遠足。富山、石川両県の別の小学校からも多くの児童が訪れ、平日のゲレンデをにぎわせていた。 「早く滑りたいな」。朝日小の児童たちは日を浴びて輝くゲレンデを前に、胸を躍らせていた。経験でA、B、Cのグループに。児童たちは先生たちに引き連れられ、ゲレンデに散っていった。 上級生を中心に、十人ほどの集団になったCグループはゴンドラリフトに乗り込んだ。標高約七百七十メートルの降車地点には、十分ほどでたどり着いた。
スキー板をしっかり「ハの字」にし、スピードを加減しながら斜度二〇度近くになるコースも滑りきった。「じゃあ今度は、れん君のスピードで」。引率する新谷貴晴先生が名前を挙げた児童が順に先頭を務め、右に左に蛇行して滑走する列をつくった。 Bグループは三年生のゆうた、四年生のあゆみ、六年生のみおたち。雪上に置いたお手玉をスキーで滑りながら拾ったり、突き立てた二本のストックに渡したひもを滑ってくぐったり。体の使い方を身に付けようと、練習を試みていた。 スキー遠足は初めての一年生が多いAグループは、緩い斜面で練習を繰り返した。午後になると、スピード感にも慣れ、歓声を上げ始めた。 それをはた目に一人、一年生のゆうやはスキー板を外し、歩いてコースを下りていた。「だって、滑れんもん」。いら立ちが募ってきたゆうやの頭上から、リフトに乗った福島基先生の声がかかった。「今、救助に行くから。待っとれ」 スキー板を履き直したゆうやに、マンツーマンの特訓が始まった。「ほれ、立って。板をハの字にして行ってみい」。よたよたと姿勢を保ちながら、ゆうやは滑走を始めた。斜面を六十〜七十メートル直滑降。背中で着雪し、雪しぶきを上げて止まった。それを七回ほど繰り返し初心者コースを下り切った。 「リフトに乗って三回目で、たいしたもんや。もう一回行くか」。先生の誘いに、「もう、たくさんです」。アメ玉をなめながら、ゆうやは答えた。それでも、滑り終えた充実感から「上手にできましたよー」。目に入った別の先生に、大声でアピールすることは忘れていなかった。 (報道・本安幸則)
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