ここから本文エリア 建国記念の日 賛・否それぞれの思い2009年02月12日
建国記念の日の11日、県内各地で集会や式典が開かれた。「初代天皇」とされる神武天皇の即位神話をもとに定められた戦前の「紀元節」を起源とする祝日のこの日、祝賀派、反対派がそれぞれの立場で是非論を繰り広げた。(石田貴子) ▼「軍隊、殺人教える場」 この日を「信教の自由を守る日」と位置づける県内のキリスト教3団体は、広島市中区大手町5丁目の日本基督教団広島教会で「2・11『建国記念の日』を問う広島集会」を開いた。元広島キリスト教社会館館長で、戦時中に特殊潜航艇「蛟竜(こう・りゅう)」の乗組員だった宗像基さん(84)が、約80人に自らの戦争体験を話した。 宗像さんは台湾生まれ。「クリスチャンは非国民ではない」と示すため41年に海軍兵学校に入学、士官として巡洋艦などに乗り組んだ後、5人乗りの特殊潜航艇「蛟竜」の乗組員となった。 あと2日で沖縄に派遣されるというところで命令が変更され、後輩の指導官として日本に残ることになった。代わりに出撃した人々の消息は今もわからないという。 宗像さんは「どんな格好良いことを言っても軍隊は人殺しを教える場所。上官の命令は天皇の命令で、天皇のためにということで正当化された」と強調した。 広島市西区民文化センターでは県内の教職員らでつくる市民団体が「2・11教育労働者団結集会」を開いた。昨年度末に君が代斉唱時に起立せず、非常勤職員としての再雇用を取り消された東京都の元小学校教諭、米山良江さん(61)が約100人を前に講演し、「日の丸・君が代の強制によって戦争は繰り返される。声を上げよう」と呼びかけた。 ▼「歴史・伝統 後世に正しく」 有識者や地元企業役員らでつくる「建国記念の日奉祝委員会」が、広島市中区中島町の広島国際会議場で開いた「建国を祝う集い」には、約1500人が参加した。冒頭、天皇皇后両陛下が硫黄島やサイパン島などを訪問する姿を紹介した映画「平成のご巡幸〜鎮魂と平和への祈り〜」を上映。同委員会会長の松浦雄一郎・広大名誉教授が「先人の尊い努力と献身により築かれた我が国の歴史・文化・伝統を後世に正しく伝えることが私たちの使命」と式辞を述べ、県内選出の自民党国会議員らも「活力ある平和な国であるため、来し方を振り返ってこれからをみていく必要がある」などとあいさつ。最後に全員で「天皇陛下万歳」を三唱した。 県出身の戦没者をまつる広島市中区の広島護国神社では「紀元祭」と「建国記念の日奉祝式典」が開かれ、遺族ら約200人が参列した。藤本武則宮司が祝詞を奏上した後、境内で君が代を斉唱。神武天皇が即位したとされる奈良県の橿原神宮と東京の皇居に向かって「遥拝(よう・はい)」し、戦前から歌われた「紀元節の歌」を歌った。
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