◎前田家墓所一括指定 「歴史都市」でも手を携えたい
「加賀藩主前田家墓所」の国史跡一括指定を機に、金沢、高岡市で加賀藩の歴史を軸に
した連携機運が高まってきたのは望ましいことである。金沢市が第一号認定を受けた歴史まちづくり法に基づく「歴史都市」について、高岡市も認定を目指す準備を始めたことは両市のきずなをさらに強める好機といえる。前田家の財産を核にした都市づくりという共通目標のもとで、都市間交流がより深い段階へと発展することを期待したい。
野田山前田家墓所(金沢市)と前田利長墓所(高岡市)の一括指定に際しては、利長墓
所の造営時の墓域が特定されるなど大きな成果があった。両市に残る絵図などを突き合わせて判明したもので、加賀藩関連史料を行政の壁を超えて活用すれば、まだまだ新たな発見が得られる期待感を抱かせる。
「歴史都市」制度について、国は金沢など五都市に続き、第二、第三弾の認定を予定し
ている。石川、富山県内を見渡せば、高岡市は金沢市に続く最有力候補と言ってよいだろう。歴史まちづくり法の基本概念である「歴史的風致」は建造物や町並みだけでなく、伝統的な祭事の存在も重視される。国重要有形無形民俗文化財の御車山(みくるまやま)祭は高岡市にとって大きなアピールポイントになるはずだ。
加賀藩の財産を前面に出した「歴史都市」が県境を越えて並び立てば、広大な加賀藩文
化圏の輪郭も一層鮮明になる。金沢市が助言、協力できる余地は大いにあろう。
高岡市は高岡城の国史跡も視野に入れ始めた。金沢が城跡の国史跡指定で城下町づくり
に一段と弾みがついたように、高岡市も高岡城の文化財としての価値向上が魅力ある都市づくりのかぎを握る。こうしてみていけば、高岡市は金沢市と同じような道を歩み始めているようにも思える。両市は連携するほど特徴が際立つ関係と言えるだろう。
今年は利長が高岡を開町して四百年の大きな節目である。大正期の利長三百回忌には金
沢から高岡まで臨時列車が運行されたという話もある。金沢市も節目の成功へ向け積極的に協力し、一体感を強める年にしたい。
◎万引犯に賠償請求 ルール浸透なら抑止力に
石川県や富山県など九府県でチェーン展開する大型ディスカウントストアが万引犯に対
し、賠償請求を始めた。万引犯の発見から警察署への引き渡し、被害届の提出、実況見分の立ち会いなど、従業員が万引被害の対応に費やした時間を時給換算し、実行犯に請求している。再犯がゼロとなり、万引被害が減る効果が出ているという。
窃盗は刑法犯全体の八割近くを占めるが、小額商品の万引などは店側が警察に通報しな
いケースが多い。調書作成などに時間をとられるのを嫌うためだが、人件費相当分を請求できれば、被害届を出しやすくなる。万引をすると必ず警察に通報され、経費を実費請求されるというルールが浸透すれば、相当な抑止力になるはずだ。
万引犯に対し、人件費相当の損害賠償を請求する動きは、書店を中心に全国的に広がり
始めている。換金目的のための万引が増え、検挙者の低年齢化、さらに高年齢化も目立っているためである。
賠償請求を始めたディスカウントストア「プラント3」の石川県内の二店は、半年間で
万引犯五十人に賠償請求し、回収率は84%、平均の請求額は五千円だった。請求に応じない万引犯には督促状を送付し、二度の督促にも応じない場合は内容証明書付き郵便を発送した上で提訴する方針という。
富山県警と富山県万引防止対策協議会が一昨年実施したアンケート調査では、万引を「
絶対にやってはいけない」という意識を持っている比率が小学生で97%、中学生で92%、高校生では89%と、徐々に下がっている。成長するにつれて、「万引が見つかっても、たいしたことにはならない」というあしき知恵を身につけてしまうからだろう。
以前は窃盗罪に罰金刑がなく、懲役刑しかなかったため、万引犯は捕まっても不起訴や
起訴猶予になるケースが多かったが、一昨年五月の改正刑法施行後は百円相当の商品の万引で罰金二十万円の略式命令が出たケースもある。万引に対して毅然と対処することによって、「謝れば済む」という誤った風潮を一掃したい。