北九州市で2007年12月、横断歩道上で女性が首を絞められている最中にタンクローリーにひかれて死亡した事件があり、殺人罪に問われた同市小倉北区真鶴、元会社員末(すえ)雅晶被告(28)の初公判が12日、福岡地裁小倉支部(重富朗裁判長)で行われた。
末被告は「殺意はなかった。首を絞めたことも覚えていない」と殺意を否定し、起訴事実を否認した。
起訴状によると、末被告は07年12月2日早朝、小倉南区下曽根の横断歩道上で、あおむけになった同区の飲食店従業員渡辺佳代さん(当時35歳)に馬乗りになって首を絞めた。その後、〈1〉頸(けい)部圧迫による心停止〈2〉頸部骨折で身動きできなくなった後、通りかかったタンクローリーに頭部をひかれて脳挫滅−−のいずれかで渡辺さんを殺害した、としている。
◆検察側「冷たくされ殺意生じた」◆
冒頭陳述で、検察側は動機について「渡辺さんの店に客として通い、強い好意を抱いていた末被告は、渡辺さんに冷たくされたことに怒りと憎しみを覚え、殺意が生じた」と主張。事件直前に飲酒したことによる犯行当時の酩酊(めいてい)状態も否定し、完全責任能力があるとした。
◆被告は「殺意なく複雑酩酊で心神耗弱」◆
これに対し弁護側は、末被告が飲酒によって粗暴になったり興奮したりする「複雑酩酊」に陥り、犯行当時は心神耗弱状態だったとして、「責任能力は限定的。殺意はなく傷害致死罪の範囲にとどまる」と主張。「仮に殺意が認められた場合でも、女性の死はタンクローリーにひかれたことが原因で、殺人未遂罪と過失致死罪にあたる」とした。
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