熊本県合志市の国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」の園内(約62万平方メートル)にあるスーパー「ニコニコドー恵楓園店」が、3月末で閉店する。平均年齢が約78歳と高齢化が著しい園では、園外に買い物に行くことが難しい入所者が多く、「日用品の購入が不便になる」と、不安が広がっている。
同店を経営するゆめマート(熊本市)などによると、恵楓園店は自治会が運営していた購買部を引き継ぐ形で1995年7月に開業。当初、園には約830人の入所者がおり、年間の売り上げは2億円以上あった。
しかし、高齢化に伴う入所者減で売り上げも半減し、2007年からは赤字経営が続く。現在、入所者は約410人。ゆめマートは「黒字化は難しい」として閉店の方針を固め、1月上旬、自治会側に伝えた。同社管理部の緒方龍彦部長は「営業努力でやってきたが、これ以上は無理。苦渋の決断」と打ち明ける。
園内には、ほかに個人経営の食料品店や衣料品店などが6、7店あるが、営業時間は恵楓園店が最も長く午前9時‐午後6時。日用品をはじめ、園芸用の肥料やペットフード、風邪薬などもそろえており、入所者の日常生活を支えてきた。
園外の最も近いスーパーまで車で約5分。しかし、入所者の大半は車を持たず、寝たきりの人も多い。寝たきりの入所者はこれまで園の職員に買い物を頼むこともあったが、「園の外まで行ってとは言えない」という。
同店で毎日買い物をしている自治会の工藤昌敏会長(78)は「体が不自由な入所者は、これから先、どうすればいいのか」とため息をつく。今後、自治会と恵楓園は新たな商店を探す方針。自治会の志村康副会長(76)は「入所者が減り続けるのは避けられない。地域開放を模索する恵楓園の将来構想と合わせて委託先を考えたい」としている。
=2009/02/03付 西日本新聞夕刊=