どこまで下がり続けるのか。共同通信社の全国電話世論調査で、麻生政権の内閣支持率は一月の前回調査から1・1ポイント減の18・1%にまで落ち込んだ。次期衆院選をにらんで反転攻勢を狙う麻生太郎首相や与党には一段と厳しい状況になった。
調査は七、八の両日実施された。不支持率は0・7ポイント増えて70・9%に上る。支持しない理由では「経済政策に期待が持てない」(28・3%)をはじめ、「首相に指導力がない」(25・8%)、「首相が信頼できない」(16・5%)などの順となっている。
不支持の理由のトップに景気回復に向けた経済政策が挙げられたことは、景気対策で劣勢を挽回(ばんかい)したい麻生政権には大きな思惑外れといえよう。景気対策には77・0%が「期待しない」と答え、自民党支持層、公明党支持層でさえ約半数が冷ややかに受け止めている。
「百年に一度の経済危機」として景気対策を最優先課題にしながら、真剣度がうかがえないことへの国民の不安やいらだちが伝わってくる。対策を盛り込んだ二〇〇八年度第二次補正予算案を昨年の臨時国会に提出せず、先送りしたことなど迅速性を欠いた姿勢への批判である。
支持率が下げ止まらない根底にあるのは、麻生首相の発言のぶれや政権運営の迷走ぶりに見られる資質への疑問といえよう。総額二兆円に上る定額給付金をめぐっては、高額所得者は辞退すべきとの主張から全員受給へと変わった。小泉純一郎首相の下で行われた郵政民営化についても、決定時の閣僚だったにもかかわらず、「当時は賛成ではなかった」と表明した。その後、与野党から批判を受けるや「最終的には賛成と思った」と修正する始末だ。
首相発言のぶれは政治信念や政策の方向性のあいまいさを物語る。首相は支持率を重く受け止め、誤りがあれば正して日本の将来像を明確に描き、国民の願いに迅速に応えていくことが求められる。今のままでは国民の不安や不信は募り、「麻生離れ」ばかりか政治に対する不信感を一層強めてしまう。
民主党も麻生政権の「自爆」を待っていてはならない。小沢一郎代表は麻生首相に党首力で逆転し大差をつけているが、これも敵失によるものだ。積極的に実現性のある政策を打ち出し、避けてきた党首討論などで説明を尽くすことが必要だ。
どの政党が政権を担うに足りるか、厳しい目線でしっかり見極めていきたい。
公益事業では認められない多額の利益を得ていたことが明らかとなった財団法人「日本漢字能力検定協会」に、監督官庁である文部科学省が立ち入り検査を行った。
文科省などによると、協会は二〇〇六―〇八年度に、大久保昇理事長や親族が役員を務める企業四社に広報や採点処理などの業務委託名目で約六十六億円を支出していた。また、京都市内の土地建物を約六億七千万円で購入していた。文科省は一連の取引や不動産取得を不適切とみている。徹底した全容解明を急がねばなるまい。
一九七五年に任意団体として発足した協会が実施した漢検の当初の受検者は約七百人。九二年に文部省の“お墨付き”を得て財団法人化したのを機に受検者が増え、漢字ブーム、検定ブームに乗り、二〇〇七年度には二百七十万人を超えるまでになった。入試の合否判定に利用する大学、高校も多いという。
公益法人は税制上の優遇措置を受ける代わりに、必要以上の利益を得ることは認められていない。しかし、文科省によると、〇四年度末で約五十億円だった協会の資産総額は、〇七年度末には約七十三億五千万円にまで膨らんでいた。
文科省は協会の過大な利益計上に対して、検定料の引き下げや財務状況の透明化などを指導してきたが、内部告発を受けて今回調査するまで、業務委託の中身はほとんど把握していなかった。監督体制の不備を問われても仕方あるまい。
協会の理事や評議員には著名な文化人や学者が名を連ねているが、実務は理事長と息子の副理事長が握っていたという。文科省は、巨額利益と不透明な“ファミリー経営”の実態にメスを入れ、抜本的な改善を指導する必要がある。
(2009年2月11日掲載)