今週の「これってどうなの?」は静岡空港建設地の西側に残る木の高さが、航空法に抵触している問題です。県が先月、この木の存在を認めたことにより、事態は空港の開港時期にまで影響を与える問題に発展しつつあります。
立ち木に案内してくれたのは大井寿生さん49歳。この土地の地権者です。
静岡空港の滑走路西側およそ1.4キロの私有地にある40数本の木。これが、航空法の定める高さ制限を超えて存在していることが明らかになりました。
8月に工事を終えたばかりの真新しい滑走路の上にいます。ここから見ると、立ち木はそれほど高いようには見えません。しかし、これでも航空法の定める制限表面を超えているといいます。
制限表面とは、航空機が安全に離着陸できるよう、空港周辺の建造物や植物に対して設けられている高さ制限のラインのことで、特に滑走路の両端ではその角度が厳しくなっています。今回問題となった立ち木はその制限表面を数メートル上回っています。
静岡空港の西側部分をめぐっては、土地を取得したい県とそれを阻止しようとする地権者などの団体が計画段階から衝突し、昨年、最終的に県が必要部分を強制収用する形で一つの区切りを迎えました。
大井さんたち地権者は国と県を相手取った訴訟などで、この立ち木の存在を1年以上にわたって指摘し続けてきました。しかし、県がこの問題を認めたのはつい最近、先月に入ってからでした。
先月11日、空港の事業認定について争った訴訟。この場で行政が初めて立ち木の存在を公の場で認めました。
石川知事は「たしかに出ている。木が成長した。伸びたということ。」と話します。
この問題はまもなく県議会でも取り上げられました。
民主党 大石議員は「木が成長したというのは理解しかねる」と話しました。
県空港部 岩崎部長は「測量後に木が成長したことも一つの要因として考えられるがそれ以外の要因については訴訟係争中のためコメント控える。」としました。
傍聴していた大井さんは、「そもそも木が伸びたというのは苦し紛れの言い訳に過ぎない。訴訟と開港、あるいは責任逃れと開港とどちらが大事なのか県はわかっていない。」と話します。
県は本来、10月と11月に国の完成検査を受け、来年3月の開港に向け、準備を進める予定でした。しかし、実際はいまだに完成検査の申請さえもできていない状況です。予定通りの開港は可能なのでしょうか?
近畿大学法科大学院 藤田教授に伺ったところ、「国は木が伐採されて、安全面が確定しなければ、完成検査は通さないだろう。(3月開港は)現状でもぎりぎりなはず。少しでも手続きが遅れたら開港時期はずれ込む可能性が高いでしょう。」と話します。
この状況をどう解決するのか、県はこう主張しています。
「引き続き所有者に除去をお願いしていく。開港に支障がないようにしたい。」
石川知事はこのように述べ、話し合いでの解決が最優先との姿勢を示しましたが、強制収用やそのほかの手段での解決にも含みを持たせました。
では、ほかの解決策とは何があるのでしょうか?
①滑走路を縮小する
一つは、木が制限表面にかからないよう、滑走路を短くする方法です。滑走路の端から伸びる制限表面を、滑走路を短くすることで場所を移し、木を避けることができます。しかし、その場合、使用できる航空機にも制限が加わり、航空会社にとっては対応が難しくなります。
②木を伐採する
もっとも早いのは木を切るという手段です。しかし、大井さんたち地権者はこれまでに土地の収用をめぐって県と争ってきた経緯があり、簡単ではありません。
大井さんは「県の出方によっては話し合いに応じるが、まずはしかるべき態度をとってほしい。」と主張します。
県の対応次第では、わずか数十本の木が空港の開港に大きく立ちはだかる事態となります。開港は来年3月です。無事、静岡空港は“離陸”できるのでしょうか?
航空会社をはじめ、多くの関係企業や団体に影響を与える問題なので、早く解決策を講じてほしいところです。