おばさんが音楽担当ディレクターになったワケ

もう30年も前のこと、私はフォーク歌手だったことがある。しかし、プロとしての根性も忍耐も才能もなかったために、2年余りで止めてしまった。結婚して自分が意外にも主婦向きの人間?であることがわかった。以来、カラオケに行くことも、鼻歌さえも口ずさむこともなく、せっせと主婦業に専念していた。
 ある日、WHSのメンバーである夫に誘われて、彼らの練習を見に行った。あまり気が進まなかったが演奏を聞いているうちに、心から彼らが羨ましく思えてきた。それは彼らが好きな歌を、好きな場所で、好きな仲間と歌っているという単純な事実に心動いたからだった。私が歌わないおばさんになってしまったのは、そんな当たり前の願いが叶わなかったせいかも知れない。


 

数曲歌い終わると、彼らは私に感想を求めてきた。聞かれれば、何ヶ所か気付いた点があったので、遠慮がちに意見を言ってみた。すると、彼らは嬉しそうに 『ありがとう』 と言って、素直に受け入れてくれた。
彼らの練習に付き合っていきたい気持ちになった。そして、いつの間にか彼らの前に立ち、あれこれ指示する私になっていた。これが自分でなくても、冷静に演奏を聞いてくれる誰かが一人いれば良い。でも、今となっては私の方がもう止められなくなっている。だって、WHSが大好きで、可愛いから・・。(と言うと失礼かな?)


芸術でもスポーツでも何であれ、好きな事で上達したいと思うのは人間の本能のひとつだと思う。少しづつレベルアップしていくその時の達成感はこの上ない喜びだ。それがグループであれば喜びを分かち合えてさらに楽しい。
 WHSは単なる高校時代の同級生の集まりだ。ステージでパフォームするなんて考えてもいなかった人がほとんどである。でも頑張っている。練習の度に確実に上達している。飲み会の時以外はすこぶる真面目でひたむきな人達なのだ。人間は向上心を忘れてはダメ。平凡な生活にどっぷりとひたり、愛犬クッキーと家族を愛すことだけが天職と信じていた私は、今もうひとつの幸せを発見してしまった。 -アッペ-




好きな事: ガーデニング、ストレッチ、WHSいじめ
嫌いな事: 不真面目に生きること
特技:   カンフーで夫をやっつけること