格差歴然 新聞52社「ボーナス一覧」
「日経」が「朝日」を抜き日本一に。「毎日」「産経」「時事」は凍え死に。ブロック紙と地方紙も勝ち負けがくっきり。
2008年1月号 [「マスコミ志願者」必読]
その一方で、全国紙と互角に戦う体力があるブロック紙は、経営が安定している。
北海道新聞は39歳モデルで139万5千円。中日新聞は新聞労連非加盟のため不明だが、子会社の東京新聞の水準から察するに、かなりの高レベルであることは間違いない。九州一円をカバーする西日本新聞は35歳モデルで103万3千円とやや見劣りするが、東京、名古屋に続く人口増加都市・福岡市を押さえ、経営体力は十分だ。準ブロック紙である中國新聞も35歳モデルで112万4千円と、広島の会社としては飛び抜けて高い。
忘れてはならないのは、県紙の知られざる大健闘ぶり。最も高いのは徳島新聞。35歳モデルで132万2千円というのは、日経、読売と勝負できる高水準だ。答えは簡単。本誌7月号でお伝えしたように、徳島新聞は県内シェアの8割を押さえるガリバーゆえだ。徳島新聞の労組は通常「全徳島」と呼ばれるが、新聞労連内では、“全”にチョンチョンと2本ヒゲを生やして「“金”徳島」と、待遇の良さを冷やかす呼び名もあるほどだ。
新潟日報(35歳、133万6千円)、宮崎日日新聞(同、124万7千円)などもブロック紙を上回る。島根の県紙である山陰中央新報も、35歳で113万円と気を吐いている。東北、中国、四国、九州などの地方紙でも、100万円の大台乗せが少なくない。
こうして見ると、人口が少ない地方の県紙であっても、高いシェアを持つ社は経営が安定しており、ボーナスをはずむ余裕があることが分かる。その一方で東京・大阪隣接型の県紙の経営はしんどい。地方紙も二極分化が急速に進んでいる。
そんな中で沖縄タイムス、琉球新報の沖縄2紙はいずれも70万円台と低額だ。「本土」の新聞が半日以上遅れて着くため、圧倒的な2紙寡占市場であるだけに意外だ。本土より物価・賃金水準が安い影響もあろうが、経営者が実質的な無競争状態にあぐらをかいて人件費を押さえ込んでいるのではないか。
「勝ち組」にもリストラの嵐
さて、今後の業界展望は「ますます寒さが募る」というほかない。
第一に、人口減少社会に入り、日本語の新聞を読むマーケット自体が縮み続けている。これまでは日本語という「非関税障壁」が外資の参入を妨げてきたが、今後は世界中で日本人以外にほとんど読者がいないという内弁慶が弱点になる。
第二に、「新聞は読まない、取らない。ニュースはテレビ、インターネットで十分」という若年層の「新聞離れ」が追い打ちをかける。より正確に言えば、雑誌を含めた「紙媒体離れ」はますます加速している。
第三に、紙代やインク代、トラックでの輸送費を直撃している原油高も、新聞社には賃下げ圧力となる。
第四に、消費税率の引き上げが日程に上りつつあることも決定的なマイナス材料だ。「2009年にも現行の5%から8%に上がる」との見方が新聞経営者の共通認識だが、その3%の上げ幅を丸ごと購読料に転嫁できる社はそう多くない。
第五に、高給を支えてきた再販・特殊指定の撤廃も控えている。消費税率のアップは毎日、産経の「リングからの退場」を促し、日経、読売、朝日にも「賃下げ、リストラの嵐」が吹く。地方紙も安泰ではない。
現に朝日の社内では「来春は賃上げよりも雇用維持を」の賃下げ論が浮上している。長らく新聞労使のプライスリーダーとして業界を引っ張ってきた朝日ですら、「賃上げどころではない」との悲観的な空気が社内を覆っている。
待遇面で朝日に追いついたといわれる日経の「春」もいつまで続くか。下期に入って株価下落、景気の先行き不透明感とともに業績が急降下。社内でも来春闘について「賃上げが厳しいならば、手当を要求すべきだ」といった慎重論が出始めている。
日本語の「壁」と再販制度に守られ、「最後の護送船団」と言われる新聞業界だが、一部の浮世離れした高額ボーナスも、この冬が「天井」になるかもしれない。
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