アイヌ民族は先住民族
チベット問題などに絡み、中国の民族問題についていろいろな記事が書かれた。では、日本の民族問題についてはどうなんだろうか?という話題はほとんど見ることはなかった。現在も神話のようなうぬぼれた偽装歴史が幅をきかせているので、他民族を侵略したなどという歴史事実はタブーとして知らない人がほとんどだろう。 河氏のブログ 河信基の深読み のエントリー「アイヌを否定しなから、チベットを非難する偽善」http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/31730036.html に絡めて、以前朝日新聞に載った「アイヌ民族を先住民族と認めよ」というアイヌの主張をコピペした。(無断ですので、後日部分引用になると思います)
私はこの提言に賛成だ。
今年は世界の先住民族にとって歴史的な年だった。
9月13日、国連総会において「先住民族の権利に関する国連宣言」が採択されたのである。これは先住民族を「国際法の主体」として認め、自己決定権や返還・賠償・補償権を規定した人権文書だ。
日本も賛成票を投じた。だが、日本政府は我々アイヌ民族を「先住民族」とは認めていない。先住民族に関する定義はいまだ確立されておらず、アイヌ民族が日本における先住民族か否かを判断できないというのが理由という。
世界の流れは別
しかし、これは世界の趨勢や国内の実態に反している。9月14日付けの朝日新聞「私の視点」欄に、北海道ウタリ協会の加藤忠理事長による「政府は先住民族と認めよ」という主張が掲載された。私も理事長の主張に同感だ。
「先住民族」という概念はきわめて政治的なものである。単に、ある地域に居住していた時期が早いか遅いかという時間的な後先ではない。世界各地の先住民族を取り巻く問題に詳しい上村英明・恵泉女学園大教授(市民外交センター代表)はこう定義する。「近代国家が成立する時点において、合意なしに国家に統合され、現在被支配的立場におかれ、かつ(固有民族としての)人権が十分補償されていない人々」
これを日本にあてはめてみよう。近代国家の成立は明治政府の発足にあたる。アイヌ民族は1871(明治4)年の太政官布告によって一方的に日本に国籍が与えられた。21世紀の今日においても、就職や結婚で差別が存在している。現在アイヌ民族出身の国会議員はいない。為政者側にアイヌ民族の意志が十分に伝わっているとはいえないのが現状だ。すなわち「明治政府はアイヌ民族をその自由な意志によることなく一方的に統合し、現在被支配者的立場におき、なおかつ人権を十分に補償していない。」といえよう。アイヌ民族は日本における先住民族なのである。
判決もある。1997年3月27日、札幌地裁で二風谷ダム訴訟の判決が言い渡され、「アイヌの人々は・・・『先住民族』に該当するというべきである」と明記された。
アイヌの現状について、外国メディアや市民団体から「なぜ日本では先住民族として認められないのか」と問われることも少なくない。
アイヌ民族は3万人とも10万人ともいわれる。誰がアイヌなのか。血なのか文化なのか。「自分はアイヌだ」と自覚し、そのコミュニティーから認められたものがアイヌなのである。民族とはアイデンティティーの問題なのだ。
先住民族に認められる権利には、土地に関するもの、外交を含む自治に関するもの、外交を含む自治に関するもの、地下資源や埋蔵物に関するもの、言語使用に関するものなどがある。私の父・萱野茂は「和人に土地を売った覚えも貸した覚えもない。借りたのであれば借用証をみせろ」とよく言っていた。本稿では土地について論じよう。
世界の先住民族を見ると1990年以降、一部とはいえ返還されているケースがいくつもある。カナダではイヌイットの準州ができたし、オーストラリアではアボリジニーに返還を命じる判決が出た。国際的に見て決して特異なことではないはずだ。
北海道を全部返せなどというつもりはない。すでに何世代にもわたって和人が住んでいる私有地まで戻すべきだというつもりもない。
聖地も国所有?
北海道は約884万ヘクタール。このうち約半分の414万ヘクタールが国有地だ。道有地、市町村所有の公有地も多い。この中の一部でもいい、返還して欲しい。歴史的経緯を考えた場合、特に政府に求めたい。
我々の聖地である山や谷も、いまはその大半が国有地だ。もともとは我々の先祖が住んでいた土地である。アイヌ民族には土地所有の観念がなかった。明治期に、外から来た人々が一方的に法律を制定し「所有」を決めたのである。その結果、神々に祈る行事を行なおうにも、政府の許可を得なければできない、などということまで起きた。
アイヌ民族を「先住民族」と認め、国有地の一部を返還する。国民が理解し、政府が判断すれば可能なはずだ。返還されたあとも、北海道の道民や来道者が自由に通行や利用ができるものとしたい。
私は活動家ではない。「アイヌ語ペンクラブ」の一会員であり、こうして書くことで訴えている。
先住民族を取り巻く問題にどう向き合うかは、法治国家ニッポンの成熟度を測るバロメーターになるに違いない。
朝日新聞 2007.12.29 朝刊 「異見 新言」より全文
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