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イタリア:安楽死の是非巡り二分 栄養補給減らし3日後、植物状態の女性死亡

 【ローマ藤原章生】イタリア最高裁(破棄院)により昨年、人工栄養補給の停止を認められた植物状態の女性(38)が9日、北部の町ウディネの病院で死亡した。栄養補給を減らし始めてから3日後だった。「安楽死は罪」としてベルルスコーニ政権が特別法で阻止を試みる一方、ナポリターノ大統領が「立ち入るべきでない」と反論し、死ぬ権利を巡り国を二分する議論になっていた。

 女性は20歳の時に交通事故で植物状態となったイタリア北部レッコ出身のエルアナ・エングラロさん。「娘を解放してやりたい」と、父親が99年に国を相手取り、栄養補給管を外すことを認めるよう求める訴えを起こした。9年にわたる裁判の末、昨年11月、最高裁で勝訴した。

 だが、サッコーニ保健相が「昏睡(こんすい)状態の患者への栄養補給を止めてはならない」と全国に通達し、長く受け入れる病院がなかった。

 今月初め、ウディネの病院が独自の判断でエルアナさんを迎え、6日から栄養、水補給を段階的に減らしていた。

 この問題を議論していたローマの上院に訃報(ふほう)が届くと、保健相が「彼女は死んだのではない。殺されたのだ」と叫び、野党議員が「政府は人の命を政治の道具にした」と批判し、騒然となった。

 マントバノ内務次官はこれに先立ち「イタリアは1948年以来初の『死刑』を執行することになる」と強い語調で病院や家族を批判していた。

 娘の死について、父親は地元の記者団に「何も言いたくない。今は一人にしてほしい」と話した。

毎日新聞 2009年2月11日 東京朝刊

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