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Commons:2009.2.7 from田中良紹 の「国会探検」

「かんぽの宿」のイヤな感じ

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 日本郵政の「かんぽの宿」一括譲渡問題で、火付け役の鳩山総務大臣と野党が共闘して追及に当たる構図が出て来た。オリックス不動産への一括譲渡は白紙に戻る見通しだと言う。何か不正が暴かれて正義がまかり通るかのように報道されているが、これまでの材料だけで私はこの譲渡が不正なものだと断定する気にならない。にも拘らず野党が追及に力を入れる様子に「またか」とイヤな感じを持っている。
 「またか」と言うのは、同じような話をこれまで何度も見させられてきたからである。例えば何年か前に「年金未納問題」というのがあった。タレントの未納から始まって現職閣僚や国会議員まで未納が次から次へと暴かれた。眉間にしわ寄せキャスターなどは「公人中の公人である国会議員がけしからん」とスタジオ中に顔写真を並べて連日怒っていた。しかし私はこの話が年金改革法案の審議の真っ最中に出て来た事に疑念を抱いていた。

 人間には誰しも不注意がある。悪意で未納をしたとも思えない。それなのに何故こんなに騒ぐのか。メディアは視聴率が取れると踏んで騒いでいるだけだが、情報の出所はどこか。メディアが自力で未納記録を見つけ出せる筈がない。権力からリークされた情報を鵜呑みにしているなら権力の情報操作に加担している事になる。それを正義派面してやられれば、そっちの方がよほど社会悪だ。

 そう思って見ていると、菅民主党代表がこれに飛びついた。小泉内閣の現職閣僚を槍玉に挙げ「未納三兄弟」と呼んで激しく追及した。結果はどうだったか。小泉総理にとって目障りだった福田康夫官房長官が辞表を出し、次に追及していた菅代表自身も辞任せざるを得なくなり、代わって代表になる筈の小沢一郎氏も辞退するはめになり、そのドサクサで窮地に追い込まれた民主党は消費税導入に道筋をつける「三党合意」に取り込まれた。

 そして国民負担が増えて給付が減る年金改革法案はその陰で無事成立し、後になって小泉総理の未納も明らかになったが、あれほど騒いで菅代表に辞任を迫ったメディアは今度は誰も小泉総理の首を取ろうとしなかった。民主党だけがその無能振りを満天下にさらしてバカを見た。

 また何年か前に「偽メール事件」というのがあった。当時の小泉政権にとって最大の問題は「耐震偽装問題」である。角福戦争の昔からゼネコンは旧田中派、建設業界は旧福田派という縄張りが出来ていて、建設業界と旧福田派との結びつきは強かった。ゼネコン汚職が摘発されて旧田中派の利権構造は潰されたが、旧福田派を資金面で支えた建設業界に司直の手は及ばなかった。そこに降って湧いた「耐震偽装問題」は小泉政権を直撃する大事件であった。

 ホテルやマンションの耐震偽装は地震で崩れてしまうまで分からない筈だった。崩れてしまえば地震のせいにされて見逃される可能性もあった。まさに悪質な「完全犯罪」である。しかも日本中に被害が及んでいる可能性もあった。野党はこの一点だけを追及しても十分すぎるのに、当時の民主党は「4点セット」と言って焦点をぼかした。

 行政に隷属する事で世界でも有名な日本の司法は「耐震偽装事件」に目くらましを施した。急遽「ライブドア事件」を摘発し、国民の目をそちらに向けさせた。「耐震偽装」はかつての「ゼネコン汚職」に匹敵するもので、政界捜査が必須の事件であるにも拘らず、政界操作を行なう地検特捜部は「ライブドア事件」の担当となり、政界捜査をした経験のない警視庁が「耐震偽装」を捜査する事になった。この時点で既に事件の幕引きは終了した。小泉総理の所属派閥に捜査の手が及ばない事がはっきりした。さすがは行政に隷属する日本の司法である。

 司法が駄目ならこの悪質犯罪を追及できるのは政治しかない。せめて野党が国会で全力を挙げるかと思った。ところが愚かな民主党は「牛肉偽装」とか「ライブドア」にも追及の矛先を向けた。さらに愚かなのはライブドアと小泉周辺との結びつきを追及する事が最も小泉政権の命取りになるとの妄想を抱いた事だ。権力が目くらましに用意した方に飛びついた。その結果が「偽メール事件」である。またもや当時の代表が辞任せざるを得なくなった。自業自得ではあるが民主党は再び無能振りを満天下にさらした。

 世界は日本の司法を政治権力からも行政からも独立していない下請け機関と見ている。時の権力に都合の悪い者は摘発されるが、時の権力には決して手を出さない。大物政治家逮捕の例を見れば良く分かる。ロッキード事件での田中逮捕も、その後の金丸逮捕も、時の権力にとっては目障りな存在であり、しかも権力の地位を自らが退いた直後に逮捕された。それなのに日本の司法を時の政権から独立しているかのごとく考える野党は権力を知らない素人である。

 「居酒屋タクシー」で官僚に一矢報いた気になっているメディアと野党にも呆れた。あれは霞が関のノンキャリアの勤務実態に緩みがあったという話で、権力とか利権と関係する話ではない。個人タクシーが酒をサービスしたのはお得意さんだったからだろう。役所が残業をさせなければ良かっただけの話である。むしろなぜあの時期にあの情報がリークされたかが問題なのだが、それは誰も追及しない。

 そして「かんぽの宿」に戻るが、騒ぎだしたのは権力の側である。そこには当然権力の意図があるはずだ。鳩山総務大臣の個人の正義感だと思うほどおめでたい人間は政治の世界にはいないだろう。その意図が何かを突き止める事が先決である。総務省と日本郵政の内部にシナリオを書く者がいる。鳩山大臣はそれに振り付けられて躍っているだけだ。これは麻生政権の窮鼠猫をかむ策略かもしれない。とにかく情報は権力の側にあるので情報の出し方、内容は如何様にでも操作できる。それを考えずに飛びつくと痛い目にあう事は間違いない。

 専門家でないので断言は出来ないが、従業員全員の就業を保証した上での一括売却で、言われている金額が不当に安いのかどうか、また個別売却が現実に可能なのかどうかも含めて考えれば、今の段階で私にはそれほど問題があるようには思えない。

 前にも書いたが麻生政権は既に内部に「敵」と「味方」がいる。野党が手を下さなくとも余命数ヶ月である。そういう時に野党が力を入れるべきは、政権追及よりも政権獲得後の次なる手の打ち方である。重要度は第一が来年の参議院選挙対策、参議院で単独過半数を取らなければやりたい政策は実現しない。政策のためには何よりも政局優先である事を肝に銘ずるべきである。第二が霞が関との関係構築、立法の司令塔を政党にするため何が必要かを考えるべきである。さらにアメリカとの関係構築である。世界が構造変化する時期の同盟関係とはいかなるものかを構想すべきである。持っている知恵はそちらに使った方が良い。






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THE JOURNAL

田中良紹(ジャーナリスト)
田中良紹
(ジャーナリスト)

11945年宮城県仙台市生まれ。1969年慶應義塾大学経済学部卒業。同年(株)東京放送(TBS)入社。

ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。

1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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