設備充実、ファン拡大──改装や移転相次ぐ劇場

 
              
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設備充実、ファン拡大──改装や移転相次ぐ劇場

2009/02/10配信

今夏に閉鎖、上本町に移転する新歌舞伎座(大阪・難波)
今夏に閉鎖、上本町に移転する新歌舞伎座(大阪・難波)

フェスティバルホールや新歌舞伎座など、大阪で大劇場の改装や移転が相次いでいる。いずれも、再開発や老朽化した建物の建て替えに伴う計画だ。オリエンタルランドによる新たな大劇場のオープンも予定されており、演劇や舞踊、音楽の舞台が大きく様変わりしようとしている。

 昨年末、50年の歴史にいったん幕を下ろしたフェスティバルホール(大阪市北区、2700席)は2013年春の再オープンを目指し、3月から解体作業に入る。跡地に高さ200メートルの超高層ビルが建てられ、その低層階に新ホールが設けられる。客席数は旧ホールと同じ2700席で、全国最大クラスの規模だ。

 大きく変わるのが、舞台袖などを含むステージの総面積。旧ホールの800平方メートルに比べ、新ホールは1600平方メートルと、このクラスのホールとして十分な広さを確保する。舞台の床から、照明器具などを取り付けるすのこまでの高さも、旧ホールの21メートルから30メートルに高める予定。搬入、搬出の作業効率を格段に改善できるという。

 オペラやバレエは年々、舞台装置が大掛かりになる一方だが、例えば旧ホールでは昨年、米国のアメリカン・バレエ・シアターを招いた際、当初上演を企画していた「白鳥の湖」の舞台美術に対応できず、演目を「海賊」に決めた経緯があった。西部宏志支配人は「新ホールは国内外のどんな演目、演出にも対応できる」と胸を張る。


 フェスティバルホールの近辺では大阪厚生年金会館(大阪市西区、2400席)が来年3月での閉鎖を決めており、当面、両劇場の代替として兵庫県立芸術文化センター(兵庫県西宮市、約2000席)や、びわ湖ホール(大津市、約1800席)の活用が見込まれる。演劇や音楽の催しの際の人の流れが大きく変わることになりそうだが、「フェスティバルホールが再オープンすれば、最新設備と交通の便の良さから、人の流れも戻るはず」と、西部支配人は見る。

 主に歌謡ショーや大衆演劇を上演する難波の新歌舞伎座(大阪市中央区)も開業はフェスティバルホールと同じ1958年。今夏、現在の劇場を閉館し、近鉄グループが大阪・上本町に建設する複合ビルで2010年夏、再オープンする。席数は現在の1638席から少し減って1500席となる。

 大きな変更点が、直径14.5メートルの回り舞台の設置。現在の劇場は舞台の奥行きが十分でないため、客席から見て舞台が平行にスライドする特殊な装置で場面の切り替えに対応しており、演出が制約される場合もある。唐破風の装飾を持つ建物の独特の外観を惜しむ声もあるが、「新劇場で演出もかなり変わってくる。多くのお客さんに満足してもらえると思う」と、大竹進取締役は言う。

 新劇場を開業するのが、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド。12年、JR大阪駅前で1700席規模の劇場の運営を始める。大阪中央郵便局跡地に、日本郵政グループとJR西日本グループが新設する複合施設に入居する。「ディズニー関連の自主企画や、話題のシルク・ドゥ・ソレイユ関連の公演ではなく、貸し館として運営する」(同社)ため、他劇場に与える影響は大きそうだ。

 大阪では昨年、ABCホール(大阪市福島区)やサンケイホールブリーゼ(大阪市北区)がオープンし、活況を呈している。不況の影響から今後、それぞれの劇場の観客動員数の減少が予想されるが、「劇場の相次ぐ改装や新規開業で演劇ファンや音楽ファンの層が底上げされ、業界全体が活性化されれば」と、新歌舞伎座の大竹取締役は期待する。
(大阪・文化担当 田村広済)
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