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30年超え裁く大虐殺 ポト派特別法廷17日開廷

2009年2月10日

    図   ※写真をクリックすると拡大します

     カンボジアのポル・ポト政権(75〜79年)によるカンボジア大虐殺を裁く特別法廷が2月17日に開廷する。犠牲者170万人とも言われる大虐殺から30年余り。真相解明と責任を問う初めての法廷の仕組みと課題をまとめた。

     カンボジアの首都プノンペン中心部から国道4号を西に約35キロ走ると、コンクリート塀で囲まれた広大な敷地がある。その中にポト派特別法廷と事務局棟、被告らの勾留(こうりゅう)施設が立っている。カンボジア国旗と国連旗が掲げられているが、あくまでもカンボジア国内法廷との位置づけだ。

     当事国に代わって国際社会が戦争犯罪を裁く国連旧ユーゴスラビア国際法廷(ICTY、オランダ・ハーグ)やルワンダ国際刑事法廷(ICTR、タンザニア・アルーシャ)などとは異なり、当事国の意向が大きく反映される仕組みになっているのが特別法廷の特徴だ。

     カンボジアと国際社会は捜査判事、検事ともに1人ずつ出し、裁判官も外国人判事よりカンボジア人判事の方が1人多い合議構成とするなど、カンボジア主導の共同運営体制を敷くことでまとまった。

     訴訟手続きもカンボジアの刑事訴訟法に基づく内部規則を制定した。これに基づいて、遺族を含む被害者らが民事当事者として裁判に参加することができるのが過去の国際法廷にはない特徴だ。弁護士がつき、証拠の提出や法廷での尋問、検察、被告人への反論書面の提出などができる権利を有する。

     ただ、国民の大半がポト派による犯罪の被害者とされる同国では、民事当事者の数も膨大だ。特別法廷によると既に3千以上の申請が来ており、逆に迅速な裁判の進行を妨げるとの懸念も出ている。

     特別法廷ではこれまでに5人の元ポト派最高幹部らを拘束、うち1人を起訴した。しかし、実際に国民の虐殺や拷問などを実行した多くの元ポト派兵は訴追対象外だ。一部幹部に対する司法手続きが、同法廷の大きな目的の一つである国民融和につながるのかも注目されている。

     特別法廷について国民向けの公聴会をカンボジア全土で開催しているプノンペンのNGO社会開発センターのイム・ソフィア副所長は「内戦中の犯罪を裁く方法として、当事国主導の特別法廷が担う役割は多い。成功すれば今後の国際法廷のあり方に一石を投じることは間違いない」と期待している。(プノンペン=山本大輔)

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