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【社説】

自公政権 ため息ついてる場合か

2009年2月11日

 麻生内閣の支持率が下げ止まらない。首相が何か語るたび、そしてその発言が修正されるたびに、政権与党からため息が漏れる。これでは危機にさらされる国民が不幸だ。ぶざまな空白を続けるな。

 テレビは恐ろしい。郵政民営化に反対だったのか賛成だったか、麻生太郎首相や周辺の弁明が繰り返される「ブレ発言」騒動の中、これは首相の食言では、と思わせるような映像が再三流された。

 ほんの五カ月前に収録された自民党総裁選の討論会である。候補の一人だった小池百合子氏の「あなたは民営化に反対か」との問いに、麻生氏が答えている。「(自分は)郵政民営化を担当した大臣ですからね、忘れないでください。総務相として担当していましたんで、私が」

 五日の衆院予算委員会で首相はまったく逆の答弁をした。「みんな勘違いしているが(私は)郵政民営化の担当大臣ではなかったんです」「担当大臣は竹中(平蔵)さんだったと、ぜひ記憶して」

 いったいどっちが本当なのか。その時々で自分に都合のいいように語っているのではないか。そんな疑念に河村建夫官房長官は記者会見で「勘違いじゃないでしょうか」。「首相の勘違い」の文言を三度も使って、戸惑いを隠せなかった。担当であったか否かを通り越し、乱れる言葉が首相の資質さえ疑わせている。異常事態だ。

 定額給付金やら高級官僚の渡り問題、郵政民営化見直し…と、首相が口を開くたびに自民、公明の与党から愚痴ともつかぬ嘆き節が出る。右肩下がりの支持率はもはや回復不能にも見えて、首相では総選挙を戦えない、とかの、突き放すようなせりふが、首相に近い人たちからも聞こえてくる。

 政権与党に問う。この状況をどうするのか。負けを恐れて解散・総選挙はまたも先送りか。それとも世間の厳しい批判を覚悟の上で有権者の信任を得ない四人目の自民党総裁・首相をつくるか。ひたすら手をこまぬいて強硬手段で新年度予算の成立へ突っ走るか。

 年度末へ国の経済と雇用情勢は一段と厳しさを増す。予算成立を急ぎ、手当てせねばならないのはそのとおりである。だが、首相の言葉が信じられなくては、野党も協力するのは容易でない。

 どうだろう。政党間交渉のテーブルで取捨選択して合意できた予算項目と関連法案を先行処理し、不合意部分は総選挙で有権者の判断に委ねては。このままでは取り返しのつかない混迷に陥る。

 

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