東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

キヤノン工事 脱税工作の実態解明を

2009年2月11日

 キヤノンの新工場の建設工事に絡んで、コンサルタント会社社長らが脱税容疑で逮捕された。ゼネコン・鹿島から流れた巨額な裏金だ。工事受注に何らかの工作があったのか、徹底解明を求めたい。

 法人税法違反容疑で逮捕されたのは、大分市のコンサルタント会社「大光」社長だ。鹿島から流れた約十億円を隠し、約三億円の税を免れた疑いである。

 二〇〇三年以降に、鹿島は大分市内のキヤノン二工場などの建設工事を受注している。コンサル側がその見返りとして、鹿島に要求して、受領していた裏金とみられている。誰に対し、どんな働き掛けがあったのだろうか。

 複数の下請け会社を経由させたり、架空発注をするなど、手の込んだ“偽装”で裏金をひねり出したとされる。隠した所得の総額は約三十四億円にも上り、悪質な不正蓄財といえよう。

 コンサル社長は、キヤノンの御手洗冨士夫会長と知人関係にある。御手洗氏は記者会見で社長との付き合いについて、「ゴルフや会食をしたことはある」と認めた一方、今回の事件については「徹底的に再調査したが、関与は全くない」と否定した。

 もっとも、業界では、社長はキヤノン関連工事の業者選定に影響力があると取りざたされていた。御手洗氏は経団連会長もつとめる。財界の重鎮であり、公的存在でもある。もっと詳細、具体的に説明を尽くさないと、国民は釈然としないだろう。

 コンサル社長が蓄財の多くをキヤノン株の購入につぎ込んでいる点も注目される。東京地検には大掛かりな脱税のからくりの全容解明に取り組んでほしい。

 大分県での取引にも疑問の声が出ている。県がキヤノンの関連会社の工場用地造成で支出した補助金について、「不適正だ」と住民訴訟が起きた。

 巨額脱税事件の背後には、何が潜んでいるのか。大分県とキヤノンとの関係も焦点になろう。

 建設業界では、かつてゼネコン汚職や福島県知事汚職などで数々の不正が摘発された。公共工事での厳しい監視を恐れて、「民」の工事で、今回のような裏金が横行しているのか。

 西松建設の前社長も、海外でつくった裏金をめぐり、外為法違反で起訴された。最大手の鹿島で起きた不祥事を重く受け止め、業界自体があしき裏金体質から、早く脱却すべきである。

 

この記事を印刷する